第3話 SF設定というもの
先日はアニメ『あかねさす少女』の最終回だった。
これをお読み方の中には、OPクレジットに「SF考証 山本弘」とあるのを見て、「山本弘はどんな考証をやったんだろうか」と疑問を抱いた人も多かったと思う。最終回が終わったのでぶちまけてしまおう。
考証らしいことは何もしてません!(笑)
番組スタッフからの相談があったのは、放映開始の一年ぐらい前だったと思う。「アニメ番組のSF考証について相談したいことがある」と言われ出かけていった。もしかして僕の考えたSFでも採用してくれるのかな、と期待して(笑)、「機装妖精チャイカ」(「妖魔夜行 水色の髪のチャイカ」の元ネタ)の原稿も持参したのを覚えている。自慢じゃないが、そういう小説のネタにならなかったアイデアは山ほどあるので。(『詩羽のいる街』で使った「幻界戦鬼B-kids」「衛星高度の魅裕姫」「戦場の魔法少女」「ガールズ・テリトリー」なども、そうした自分でボツにしたネタである)
行ってみるとそんな話ではなく、『あかねさす少女』の原案(当時はタイトルは今と違っていた)を見せられた。すでにストーリーの大筋は決まっていたが、まだヒロインたちの変身や戦闘シーンについての設定を考えていないので、この話に合うような設定を考えて欲しいとのことだった。
僕はびっくりした。ヒロインの変身シーンや戦闘シーンなんて、真っ先に考えるべきことだと思っていたのに、実はまだ考えてなかったとは。
「我々もいろいろ考えたんですよ。たとえば歌に合わせて変身して戦うというのはどうかなと。でも……」
「それ『シンフォギア』ですよね」
「そうなんですよねー!」
なるほど、今や女の子が変身して戦うアニメはいっぱいありすぎて、新機軸を出すのは難しいわけだ。
それでも考えてましたよ。これまでにないオリジナルの設定を。大阪に戻ってから、数日かけて作り上げ、メールで向こうに送った。
オリジナリティだけはすごかった。女の子が変身し、宙を舞い、武器を手にして戦う、『新造人間キャシャーン』と『宇宙鉄人キョーダイン』と『兄弟拳バイクロッサー』と『勇者王ガオガイガー』をごちゃ混ぜにミックスしたようなハチャメチャだけども筋の通った設定を!
設定を送ってから、クレジットの表記をどうするのか訊かれたから、「SF設定とだけ書いていてくれればいいですから」と返事しておいた。
時は流れ、『あかねさす少女』の放映。
僕は毎週見てたけど、ついに僕の考えた設定は微塵も使われることはなかった。
まあしょうがないか。ぶっとびすぎてて、スタッフも使うのにためらいがあったんだろ。
でも僕は時間を無駄にしたとは思わない。
あの日思いついた「『新造人間キャシャーン』と『宇宙鉄人キョーダイン』と『兄弟拳バイクロッサー』と『勇者王ガオガイガー』をごちゃ混ぜにミックスしたような」ハチャメチャな設定は、いずれどこかで使う機会があるだろうから。
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