第2話 嫁はんいたんかい!

さて、天界を追放された三蔵は、パンチパーマの理事長の言い付けで、 西へ向かってひたすら歩いて行きました。

しかし3日程もたつと、すっかりと歩くのが嫌になって来ました。

とある山にさしかかった時、とうとう三蔵は、こうつぶやいたのです。

「ちくしょう、徒歩で天竺なんて無茶苦茶や。まったく徒歩でとほほや」

すると

「なんやそれ」

どこからか声が聞こえます。

「だれや?」

三蔵はあたりを見回しました。

すると、声の主が

「下や、下」

というので、下を見たところなんとそこに一匹の猿がおりました。

不思議なことに、猿は山に挟まれているようです。

「うわっ」

三蔵がびっくりして飛び上がりました。

「なんでこんなとこに猿がはさまってんねん!」

三蔵が叫ぶと

「釈迦に閉じ込められたんや」

と、沈痛に猿が答えました。

「釈迦?うちの理事長やんけ」

三蔵はつぶやきました。

そうです、パンチパーマの理事長の名は釈迦といいました。

「天罰やねん」

猿は、遠い目をして語りはじめました。

それは、今から500年ほど前、猿は理事長と一緒にお茶していたのですが、

その時、理事長が手塚治虫の「ブッダ」を指差して言った

「わしはシッタルダを知っとるだ」

という高度なギャグに対し、猿は速効

「おもんない」

と、言いました。

以来天罰で猿は岩山挟みの刑に処せられたというのです。

「何が天罰やねん?」

三蔵がつぶやいた時、いきなり天から光が注ぎました。

三蔵と猿が空を見上げると、空に巨大なスクリーンがかかり

そこに理事長の姿が映っていました。

理事長は、厳かに言いました。

「孫悟空よ」

「なんやねん」

猿がブスっとして答えました。

どうやら、この猿の名は孫悟空と言うようです。

「お前の罪は許された。そこから出してやろう」

「だから、なんの罪やねん」

三蔵はつぶやきました。

「ほんまか?」

悟空は、信じられないといった声を上げました。

理事長は頷きました。

「本当です。ただしその坊主の弟子になり、天竺まで歩いてくることが条件です」

「するする~!なんでもする~ぅ。だから、早よだしてくれ~」

「それでは、三蔵、そこに貼ってあるお札をはがしてやりなさい」

「お札?」

三蔵が、上を見ると確かに赤いお札が貼ってあって、そこには

『わたしは、ボケでカスでノロマのタコです』

と、書いてありました。

三蔵がそれをペりッとはがすと、山が動いて悟空がぴょ~んと飛び出し、

すぐに回れ右をして、どこかへ走り去ろうとしました。

「これ、どこへ行くのですか、悟空!」

理事長が叫びました。

「嫁はんとこ帰るに決まってるがな」

悟空がブスッとして答えます。

「お前は、私との約束を破る気ですか?」

理事長が言うと、悟空はシリをたたいて言いました。

「最初から約束なんか守る気なかったんじゃ

 ひっかかって、あほが~」

すると、理事長はついに切れて三蔵を指差してこう叫びました。

「悟空!約束を守らないと、こういう頭になってもらいますよ!!」

「!!!!!」

悟空は、へなへなと腰をおろすと言いました。

「俺が悪かった」

「分かってくれましたか?悟空」

「ああ、あんな頭になるくらいやったらオレ水虫の足でもなめるわ」

三蔵は、自分の足を出して言いました。

「ほぉ、なめてもらおうやないけ…」

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