第7話 森へ狩りに行く
次の日は晴天に恵まれた絶好のお出かけ日和となった。
目が覚めるなりベッドから起き上がって窓を開ける。気持ちのいい日差しが差し込んできて、ぬくもりを浴びる少女の気持ちも弾んでいた。
ミリエルはそのままの軽い弾んだ足取りで部屋を出る。この家は控えめながらも屋敷だ。調度の整った廊下を歩き、食堂へ向かう。
入ると父がテーブルの席について真面目な顔で新聞を読んでいて母が朝食の準備をしていた。ミリエルは明るい気分で朝の挨拶をした。
「おはよう、パパ、ママ」
「おはよう、ミリエル」
「おはよう、天気に恵まれてよかったわね」
「うん」
『俺からもおはようと言っておいた方がいいか?』
「うん、おはよう」
謎の声の人も早起きのようだ。朝からご苦労なことだと思う。
ちょっと眠くてあくびをしてミリエルはテーブルの自分の席についた。
母の用意してくれた朝食をもぐもぐと食べていく。父クレイブもテーブルの向かいの席でもぐもぐと朝食を食べていく。母ソフィーは微笑んで見ていた。
「二人ともあまり無理をしないように帰ってくるのよ」
「はあい」
「分かっているとも」
「あなたが大丈夫でもミリエルが心配だわ」
「大丈夫だって。友達のネネはわたしの運動能力は凄いって褒めてくれたのよ」
母の心配をミリエルは大丈夫だと言って跳ね除けるが、ソフィーはやっぱり心配そうだった。
「それは認めるけど、あなたは父さんに似ておっちょこちょいだからね」
「母さんに似て行動的なんだろう」
『俺もお前は落ち着きが足りないと思うぞ』
「ほっといて!」
みんなに言われて憤慨してしまう。場に暖かさが広がった。
謎の声はいつまでいるつもりなのか。ミリエルは食事の合間にちょっと考える。今となってはいなくなる方が気になるかもしれない。
どうしても気になるようなら学校に行った時に魔法に詳しくて事情を知ってるネネかシズカに相談すればいい。そうと決めて今日は遊ぶことに専念することに決めた。
朝食を終えて、父と一緒に出掛ける準備をする。
狩場である近所の森までは馬に乗って行くので、家で飼っている馬を玄関前まで父と一緒に連れてきた。
『お前の家って馬を飼っているんだな』
「うん、飼っているよ」
馬はミリエルが物心付いた頃にはすでにこの家で飼っていたので、それが特別なことだとは彼女は思わなかった。
少女の通うのは貴族の名門校。学校の生徒達の雑談でも馬に乗った話はたまに出ていたので、多分特別なことでは何も無いと思う。
ともかく出発だ。
荷物を積んでミリエルとクレイブはそれぞれに自分の馬に乗った。ソフィーが見送りに出る。
「晩御飯までには帰ってくるのよ」
「うん」
「分かった」
『一日コースか』
「ミリエル、あなたは馬から落ちないように気を付けて」
「落ちないよ。何年馬に乗ってると思ってるの」
「成果を期待していろよ」
「行ってらっしゃい」
母に見送られて、ミリエルは父と一緒に馬を飛ばした。
風が気持ちいい。絶好の狩り日和だ。気持ちよさを楽しんでいると声が話しかけてきた。
『これから行くのはどんな場所だ?』
「それは行ってのお楽しみよ」
ミリエルの上機嫌な声も風に乗って流されていった。
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