女三人その後(1)


 “土曜のヨガクラスお休みのお知らせ”


 その翌週スポーツクラブのインフォメーションにそれは張り出されていた。


 インストラクターの急な都合で代行の人が見つからなかったのか、ヨガのクラスは暫くなくなるということだった。


 スポーツクラブには他にもスタジオプログラムはある。


 陽子はフラダンス、美穂はキックボクシング、芽以はヒップホップのクラスに励むようになり、恒例の土曜日の集まりはなくなった。





 梅雨が明け夏がやって来た。


 記録的な暑さを更新し続けた夏がやっとその威力を弱め、秋に自分の場所を明け渡そうとし始めた頃、ヨガクラスが再開した。


 陽子、美穂、芽以の三人が顔を合わせたのはあの時以来ぶりだった。


「久しぶりー!」


「元気だった?」


「またみんなで嬉しいね」


 一通りの挨拶を済ませると、女たち三人は会わなかった時間などなかったかのように打ち解ける。



「昨日も遅くまで仕事してたの?顔むくんでるわよ」


 曇った眼鏡をかけて湯船に浸かる美穂に陽子は美顔ローラーを差し出す。


「これ使ってみなさいよ」


「あ、ありがとうございます。そうなんです。最近前より仕事が忙しくなっちゃって。わたしチーフになったんですよ」


 美穂はローラーを受け取る。


「あら、すごいじゃない」


 よく分からないといった顔をする芽以に陽子は「偉くなったってことよ」と説明する。


「やっぱ女は仕事ですよ」


 美穂は美顔ローラーを頬に這わせ、これ効きそう!と感嘆の声をあげる。


「実はわたしも今アフィリエイトで稼いでて、そのお金でおなべバーに通ってるの」


「おなべ?」


 芽以が美穂に「おかまの反対、男を装った女ってことです」と説明する。



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