女その三人とその男(2)
テンションが明らかに落ちたテーブルに芽以がおずおずと申し出る。
「わたしはちょっといい事ありました」
陽子と美穂の目の奥が光る。
芽以は“あの人”の飲んだコーヒーカップを手に入れたことを喜々とし話し始めた。
が、カップを家に持ち帰り毎日眺めているというあたりになると、二人の目の輝きは失せ、代わりに曇った哀れみの色が浮かんだ。
「芽以ちゃんまさかその紙コップで間接キスとかしなかったでしょうね」
美穂が眉間にシワを寄せる。
「それはないわよね、だってゴミ箱に捨てられたやつでしょ」
と陽子は代弁したつもりなのだろう。
「でも、そうだったらキモイ」
二人は同時に同じ言葉を吐き、顔を見合わせた。
芽以の膝の上に置いた握りこぶしが震える。
キモイキモイキモイキモイキモイ
リア充グループ女子たちは芽以たちのグループをいつもキモがる。
「陽子さんも美穂さんもみんなと同じ」
だから現実は嫌い。
芽以は勢いよく立ち上がった。
反動で椅子が後ろへ倒れる。
「わたしはなんにも悪いことしてないのに、誰にも迷惑かけてないのに、なんでそんなこと言うの?」
狼狽える陽子と美穂に背中を向け芽以は駆け出した。
慌てて二人も芽以を追いかける。
「芽以ちゃん!」
「ごめん待って」
陽子と美穂が交互に声をかけるが芽以はずんずん人ごみをかき分け進んで行く。
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