アラサー美穂(2)
「ぼく篠崎さんと組めてほんとうにラッキーです」
最初はいちいち片桐の言葉の裏を読み、勝手に深読みしたり誤解したりして一喜一憂したが、最近はもうそんなことはしない。
片桐は美穂を仕事仲間として尊敬はしているが女として見ていない。
それがはっきり分かったからだ。
でもそれは逆に美穂の片桐への想いを増々強くさせた。
窓に映る美穂はお洒落とは程遠い眼鏡をかけ、洗いさらしの髪を黒ゴムで一つに束ねただけ。
お洒落は嫌いだった。
男に媚びているようで、女の性を強調するようで嫌だった。
子どもの頃からそうだった。
周りの女の子たちがお洒落に興味を示しだしても、美穂は勉強の方が面白く成績も優秀だった。
社会人となった今は周りからの仕事の評価も高い。
「ねえ、今日これから飲みに行かない?」
駄目もとで聞いてみる。
返事はすでに分かっていた。
「すみません、ぼく今日はちょっと」
今日は、っていつもじゃない。
美穂はその言葉を?み込んだ。
断られると分かっていてもやはり傷ついて、そんな自分が嫌になる。
「片桐くんっていつも家に帰って何してるの?」
片桐に彼女がいないのは半年前にリサーチ済みだった。
実家を出て都内に一人暮らし、仕事が終わると誰の誘いにものらず、毎日きっちり終業時間に退社する。
「資格の勉強をしてるんです」
「資格?なんの?」
「篠崎さんは資格なに持ってます?」
資格はたくさん持っている。
厭味なくらい。
片桐にそれを言うのは憚られた。
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