第3話 精神的な疲れは眠りを促進する
混乱しながらも、いつも4人で泊まっているという宿屋に向かう。
「なんというか、ちょっとボロいな」
レオが不満を漏らすとほかの3人は揃って眉をひそめた。
「ほんとにノアじゃないんだなぁ」
「性格が違いすぎるもんね」
「不思議なこともあるもんだな」
何故か微妙にこの状況を理解している3人にも驚きだ。
「ノアの体してるから、お前に説明するのも変な感じだが、俺たちの部屋は2階の一番奥とその隣の部屋だ」
緑髪の男が説明してくれる。
そう言えば、ゼノとノエルは話の流れで名前がわかったが、この緑髪だけは名前がわかっていない。
「ところで、あんた、なんて名前?」
「ノアの体に入っても、記憶は共有されないのか」
「そうみたいだな。俺は俺の記憶しかもってない」
「なら仕方ないか。俺の名前はガリュだ」
「ガリュね、りょーかい」
赤髪のノエル、青髪のゼノ、緑髪のガリュ、覚えとかないとな。
ほかの3人に続いて階段を上ると、部屋がいくつか見えた。
その一番奥とその手前が自分たちの部屋であることはさっき聞いた。
「ところで、なんで2部屋なんだ?」
ドアの開きっぱなしの部屋を覗いて見たが、どうやら四人部屋らしかった。
「あの2部屋だけ2人部屋とか?」
「いや、そういうわけじゃない」
「レオさんにもわかるでしょ?男と女が同じ部屋に住むなんて、危ないことが起きる気しかしませんからね」
ノエルは顔も可愛いし、気遣う必要もあるわけか。
まぁ、理由は修学旅行の部屋分けが男女別々なのと同じってことか。
「でもな、元々男の俺だから言うけど、男ってそんなことするやつばっかじゃないぜ?」
「まぁ、念の為ってやつですよ」
「ところで……」
「なんですか?レオさん」
「あ、敬語、辞めてもらっていいかな?ノアに対しては敬語使ってなかったんだろ?」
「使ってませんでしたね、幼なじみなので」
「じゃあ、俺に対しても敬語はなしで!その方が話しやすいと思うし」
「ありがとうございます。じゃあ、敬語はなしで」
俺は笑って、小さく頷く。
「あ、言いたかったことはそれじゃなくてさ」
「んー?なに?」
「ノエルは男女別々がいいんだよね?」
「うん、そうだよ?」
「なら……なんで俺、同じ部屋なの?」
部屋割りは男女別々、ゼノとガリュ、ノアとノエルということらしいが。
「それは、ノア……レオが女の子だから……」
「中身は男だぞ?」
「でも体は女でしょ?」
「そ、そうだけど……」
心は男なわけだし、同じ部屋にノエルみたいな美少女がいたら、変な気を起こしたりも……。
「レオが心配してること、私にもよくわかるけど……心配は無用よ?」
「え、なんで?」
「だって、いくら心が男になっても、女の体だもの。襲った所で何にもできないわよ」
「でも、胸とか触られたら?」
「女同士だから大丈夫!」
なんなんだろう、この変な感情は。
確かに、女同士なら問題は無い。それでも、心は男で、襲わないという確証はないわけで、でも体は女だから股間についてたはずのものもないわけで……。
「だ、大丈夫?」
「ちょ、ちょっと混乱が……」
異世界への転移、性別の変化と、信じられないことの連続で頭も疲れているらしい。
「今日はもう休もっか」
「そ、そうするよ……」
俺は倒れ込むようにベッドに寝転ぶ。
大きなため息をしながら目を閉じると、精神的な疲れからか、吸い込まれるように眠りに落ちて行った。
最後にふと脳裏を過ったのが、ここ部屋に、なぜベッドがひとつしか無かったのかという事だった。
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