第6話

「ほら、立ちなよ」




 リザが僕に手を差し伸べて来る。




「ほんっと、心配したんだけど」




 僕は、その手を取って起き上がった。




「私だってビックリしたわよ。 おばさん、急に銃を向けてくるんだもの」




 それで、咄嗟に草むらに飛び込んでやり過ごしたらしい。


おばさん、何で急にスイッチが入ったんだろう。


……もしかしたら、僕が手がかりをつかんだことと関係してるのかも。




「で、手がかりは?」




「これ、見て」




 地図アプリの中に、ロズウェルが登録されてることを説明する。




「ここに、おばさんがアンタに渡したい何かがあるって訳ね」




 僕は、コクリ、と頷いた。




「確証はないけど」




 リザは、すぐにそこに向かおう、と言った。




「マジ!? ちょっと急じゃない? 移動手段だって、お金だってないけど」




「そんなの、ソレでどうとでもなるでしょ」




 リザが指さしたのは、僕が手にしているリボルバー。


いやいや、銀行強盗でもする気かよ……


それでも、無理やり手を引かれて、僕らはトレーラーハウスを後にした。
















「ねえ、やっぱ準備不足だって!」




 僕は、ひたすら前進していくリザに、そう呼びかけた。


しかし、つべこべ言わず歩きなさいよ! と一括されて終わる。


絶対、無理だ。


ロズウェルまで歩いて行くなんて……


それに、この森は昔、殺人があった場所で、地元民は絶対一人で出歩かない。




「……まあ、今は二人だけどさ」




 とにかく不気味だ。


森の奥から、殺人鬼が僕らに目を付けてるんじゃないだろうか?


リザもそのことを知ってるハズだし、怖くないのか?




「ねえ、この道、絶対やばいって」




「あんた、ここ通学路でしょ。 まさか、殺人鬼うんぬんにビビってるわけ?」




 図星だ。


でも、そんなわけねーじゃん、と強がって見せる。




「ふ、ふざけんなよ! 誰がそんな……」




 その時、僕らの脇に一台の車が停車した。


パワーウインドが開くと、車内から男が呼びかけて来た。


20代くらいの好青年って感じだ。




「2人とも。 こんな夜中にどこに向かうつもり?」




「あ、私たち、ロズウェルって所まで行きたいんですけど…… 途中まで、乗せてもらえませんか?」




 乗せてもらえたらラッキーだ。


でも、若干うさん臭い気もする。




(まあ、これもあるし、平気か)




 最悪、襲われそうになったら銃がある。




「一日じゃ行けないし、もう辺りも暗い。 お金はあるの? 今日は近くのモーテルにでも泊まった方が良いと思うよ。 そこまでなら送ってもいい」




 この人、悪い人じゃなさそうだ。


連れ去って僕らを殺すのが目的なら、家に来なよ、とか言うに違いない。


それに何より、目の色が青だ。


信頼していいと思う。




「……それなら、あなたの家に泊めてもらえません?」




「えっ」




 僕と運転席の男は、同時にそう言った。


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