第5話
渡したいもの。
それは、この家の中にあるのだろうか?
僕は最初、武器はないかって聞いた。
それを聞いて、思い出したかのように、おばさんは答えた。
「渡したいものって、武器か?」
この家の中でそれと思しきものは見た記憶がない。
……ということは、ここではないどこかに、それがある可能性がある。
スマホの中に、それの在処を示したヒントがある?
僕は試しに地図アプリを起動して、登録されている地点を拾い出した。
一件だけ、特定の場所が登録されている。
「……ロズウェル?」
ロズウェルは、宇宙人をモチーフにしたカフェなんかがある街だ。
ここからだと結構距離がある。
一度も行ったことないし、おばさんだってこんな所に用があるとは思えない。
その時、外から銃声が響いた。
おばさんがリボルバーの引き金を弾いたんだろう。
もうじき、戻って来る。
僕は、他に手がかりになりそうなものはないかスマホを確認しつつ、窓から外の様子を伺った。
「……え?」
一人?
おばさんの手には、リボルバー。
リザは、どうした?
何か、様子がおかしい……
不穏な空気を感じた僕は、咄嗟にキッチンの方に身を隠した。
おばさんが部屋に入ってくる。
「……ウォーリー、どこに隠れた?」
心臓が高鳴る。
リザはどうしたんだ……
しかも、僕を探している。
「……そこか」
一瞬で居場所がバレると、銃口をこちらに向けて来た。
「おばさんっ!」
操られているのか?
でも、今はそんな悠長に考えてる場合じゃない!
「くっ」
僕は、すぐ近くにあったフライパンを盾にして、身を守った。
銃声。
そして、ガアン、という耳をつんざく音。
弾丸がフライパンに命中し、反動で後方へと飛んでいく。
やばい……
絶対、催眠で操られてる。
僕は、ポケ〇ンGOのアプリを起動した。
「ウォーリー、シネッ!」
撃鉄ハンマーを起こすと、引き金に指をかける。
くそ、アプリが起動するまで間に合わない。
僕は、後転でグルグル回りながら、次の弾丸をかわした。
だが、もう逃げ場はない。
壁際に追いやられた。
「スバシッコイヤツダ」
しゃべり方、完全いっちゃってるでしょ……
だけど、もうアプリは起動した。
僕は、ポケ〇ン図鑑からスリーパーというモンスターを呼び出し、それをおばさんに見せた。
おばさんは、ほぼ全てのポケ〇ンを網羅している。
このモンスターは、バクをモチーフにしたモンスターで、手にタクトを持っている。
「おばさん、よく見るんだ」
画面を相手に向ける。
スリーパーがタクトを振る。
すると、おばさんの首がカクン、と落ちた。
成功だ。
相手が催眠にかかっているのだとしたら、更に催眠を上書きしてしまえばいい。
「ぐう、ぐう……」
「立ちながら眠ってるし……」
おばさんの手からリボルバーをむしり取ると、外へと急いだ。
「はあっ、はあっ……」
冗談じゃないって……
絶対、生きててくれよ。
「リザ!」
僕が叫ぶと、背後から、わっ、という声がした。
「うわあああああああああああっ」
「びっくりした?」
ふ、ふざけんな!
でも、リザが生きてて、僕は安心して腰が抜けた。
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