第6話「ゴブリンvs騎兵隊」


「っっ、賭けだな! その前に撃たれるかもしれんぞッ」

「出たとこ勝負だ!」


 なるほど、


「気が合うな、俺も出たとこ勝負派だ!」


 二人してニヤリと笑い、意思を統一。

 その場だけ、ガルムとビリィは意気投合した。


 ガルムは手綱を握る手に力を籠め、

 ビリィは銃を扱う手を素早くきる。


「フッ──」「へへッ──」



 オラオラ、イケイケぇぇ!!



 バキュン、ドキュン! と、鮮やかな手捌きをみせて、ビリィは2丁拳銃でゴブリンを追い払っていく。


 射撃のあとには点々とゴブリンの死体が残っている。


 いるが……!


 すげぇ数だ!!


 ビリィも必死の応戦。

 銃の種類など選んでいられないのか、馬車の床にぶちまけたそれを次々に交換し、乱射乱射、乱射に次ぐ乱射だ


「うおおおおおお! 追いつかれるぞ! 行け行け行け行けっっ」

「やかましい、舌を噛むぞ」


 悪態をつきつつも、ガルムが馬車を限界まで走らせる。

 駆ける馬の汗が行者のガルムに飛びかかるほど──!


 うおおおおおおおおおッッッ!!!


 ガラガラガラー! 轟音に近い音を立てる馬車は、勢いそのままに坂を駆け上がり──、



 ……隕石孔の縁を飛び出す!



「アーメン!!」

「ジーザス!!」


 フワ~と浮遊感。


 そして……、


 ──ズシぃぃぃン!! と爆発のような轟音とともに着地、衝撃で車体が沈み込み、ギシギシと不気味に軋む。だが、馬車はなんとかもっている!


 そして、何事をなかったように走り出す。


 ……その先は、一気に視界が開けた。


 ガルム達の眼前に広がった景色は西部の荒野ではなく──。


「な、んだこりゃぁぁ……」


 西部以上に荒涼とした大地と、見たこともない不気味な木々が生い茂る森───。

 そして、地図にはない山脈が連続し、そこから流れだす川が沼や濁った湖を作っているという────初めてみる世界の姿だった。




「って、前ぇぇぇええ!」




 その見たこともない世界・・・・・・・・・で、見たくもない連中・・・・・・・・がいる。



 やはりいたッ。

 青い制服に青い制帽……アメリカ陸軍、騎兵隊!?



「いい! オッサン────……突っ切れぇぇええ!!」

「ッッ──ガルムさんと言え!」


 ガラガラガラー! と、車輪が壊れんばかりに馬車は突っ込んでいく。


 意外にも、ビリィ達の馬車の方がまだ早い。


 エリナ率いる騎兵隊の動きはアクビがでそうなくらい遅々としていた。

 ガルム達の出現に最後尾の兵がギョッとした顔を見せ、驚いている。


 あの速度……大砲を牽引けんいんしているのだ、遅くて当然か。


 そして、ガルム達は勢いを殺すことなく、エリナ達騎兵隊の脇を突っ切っていった。



 ──ゴブリンの集団をトレインしつつ、だ。



「ビリィ!?」

 騎兵隊の集団をまとめ上げ、荷車に合わせてゆっくり馬を進めていたエリナ。

 すぐに脇を駆け抜けていくビリィに気付いて、追いすがろうとするが──、


「よ。エリナ姉ちゃん──! あとはヨロシコー」

「ビリィちゃぁぁん!」


 ニヤッと笑って駆け抜けるビリィに、獰猛な笑顔で返すエリナ。

 だけど、エリナはふと後ろを振り返る。


少尉ルテナン! 敵集団っっ! ──多数!」

「ファァァァァァ〇ク!」


 汚い言葉で罵ると、一度物凄い形相でビリィを睨み付ける。……こえぇぇぇ!!


 しかし、切り替えは早い。

 カポポッ──、と馬首を巡らせるとそのまま部隊の指揮に専念するらしい。


 だが、コブリンたちは既に指呼しこの距離。

 さすがに間に合わない!


 やはり一歩遅かったのか、態勢の整わない騎兵隊に──ビリィ達に追いすがっていたゴブリン達が襲い掛かった。


 というより、美人将校であるエリナにだ。

 ものすごい勢いでエリナに殺到するゴブリン達。


《イイオンナァァァァァッァ》

《ギャヒィィィィぃいぃぃ!!》


 滅茶苦茶よだれをたらしながらエリナを押し倒そうと馬上に踊りあがるゴブリン。

 エリナもサーベルを抜いて応戦しようとしていたのだが、……間に合わない──!





「横槍、御免──────」




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