第7話「回転する悪魔」

「横槍、御免──────」




 ピュパン! ヒュパパパパ!


 と、黒い影が躍り出ると、エリナに襲い掛かろうとしていたゴブリン数体を、あっという間に切り伏せる。

 そして信じれれないことに、一刀のもとに真っ二つ……骨すら切断していた。


「──助かったわ、ミュラー」


 失敬、と、その黒い人影はエリナを護る様に立ちふさがると──まったくその場を動かずに、次々に襲い掛かるゴブリンを切る伏せていく……。


「す、すげぇぜ」

 走り去りながら、ほっと胸をなでおろしているビリィ。


 ゴブリンを押し付けた癖にエリナの身を案じていたらしい──。


「どういう知り合いだ?」

 と、ガルムが訝しく思う中、

「話せば短くて──詳しく話せば長くなる」

 肩をすくめるビリィにガルムはそれ以上追求しなかった。


 ゴブリンの集団は隕石孔の縁から出ると、さらに数を増しゾロゾロと現れる。

 いくら騎兵隊が精強でもあの数では──……。


 それに騎兵隊が全滅したら次はガルム達の番だ。

 いっそ共闘した方がいいのでは?


 と、そう提案しようと思っていたが、

「おい、ビリィ──」

めとけ、止めとけ! あれくらいでくたばるタマじゃねぇよ、エリナ姉ちゃんは」



 それだけ言うと、ビリィは散らばった銃に弾を込め始める。

「くわばらくわばら……」


 そして、耳を塞ぐと──、


「覚えときなさいよ!! ビぃぃぃぃぃリィぃぃぃぃぃ!!!」

「ひぃぃぃ!」



 その声を後に、騎兵隊は動き出す。



 決して速度はないとは言え、馬足を緩めることなく馬車をガラガラと走らせつつ、


射撃準備ファッキンファイア!!」

了解ヤー!!」


 バサァと、馬車の後部を覆っていた幌が取り払われると───


装填よしタリホー!」

ちゃっちゃとトゥインキィ撃てぇぇぇぇファイヤァァァ!」


 ギラリと光る銃身の……。


「が、ガトリング砲!?」


 ガルムは確かに見た。

 3台の馬車に積まれている計──3台のそれを──。



 バン……バンッ…バンバン! バンバンバンバンバンバンバンババババババババババババババババッバ!!



 バババババババババババババババババババババババババババババババババババババッバ!!!!!



《ギィィィィッィ》《ギィエエエエエエ》


 クランクを回し射撃する兵の軍服が、射撃の噴き戻しで波打つ様子まで見て取れる。

 ガトリング砲はそれはそれは快調に機嫌よく弾丸を発射すると──、


 ババッバババババババババババババババッバババババババババババババババババババッバババ!!!


 装弾数40発入りの箱弾倉をあっという間に撃ち尽くす。

 しかし、それまだまだ──潤沢潤沢ぅぅぅ!

 

 補助手が射手と連携して、素早く装填。

 射撃再開!


 ババババババババッバ、と───あれ程の数を誇っていたゴブリンが一掃──そう、まさに掃き清められていった。

 

 遠ざかりつつある騎兵隊と距離が開きつつも、この見たこともない世界でいつまでもガトリング砲が咆哮を上げ続けていた──。

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