第2話 the begging of a Walker's life
こじんまりとした町に着いた私は、少女達に少しの銭と食料を与えて解放した。
私は次に、保安官の事務所に向かった。
扉を開け、胸に保安官の星バッヂをつけた男性にナイフとネックレスを見せた。
「あいつらは今頃ゴブリンの胃袋ね。これが証拠品」
男性はナイフとネックレスを見ると、自慢であろう長い口ヒゲを触り、ナイフを手に取った。
「たしかに、この悪趣味なナイフはアイツのだろうな。だが、死体を持ち帰っていない。……あんたの腕は買っているが、パール。分かるな?」
「ええ、報酬の40%で十分よ」
「物分かりが良くて助かるよ」
男は袋を取り出し、机の上に置いた。
中には札が数十枚入っていた。
私はそれを受け取ると、外へ出た。
すると、目の前に黒いカウボーイハットを被った細身の男性が道を塞いだ。
「よう、パール。元気か?」
そう言うと、馴れ馴れしく私の肩に腕を回してきた。
「もうそんなつまらない賞金稼ぎなんかやめて、俺の女になれよ。俺はすぐにデカい男になるぜ、お前もリッチな男が好みだろ?」
「やめて、ショーン。あなたが今後どうなろうと私には関係ない」
私は腕を払いのけて、宿屋に向かって歩き出した。
すると、近くの商店からエマとシャーリーが勢いよく出て来た。
2人は前みたいなガンマンのような服ではなく、シャツと農作業ズボンといった格好をしていた。
「ソフィア…じゃなかった。パール!!」
エマとシャーリーは私に勢いよく抱きついて来た。
「良かった無事で……どこか怪我してない!?」
エマは私の肩を掴むと、身体をジロジロと見た。
「心配しないで、エマ。私は大丈夫」
私はエマの手をゆっくりと掴んで、肩から離した。
「もう、こんな心配を掛けるような仕事は辞めて。
ソフィア、私達と同じ様に農場の手伝いでもしましょう?」
シャーリーは心配そうにそう言うが、私の意思は堅かった。
「私はソフィアじゃないわ、シャーリー。ソフィアは死んだの。今の私は農場主のソフィアじゃない。
賞金稼ぎ、パールよ」
「ソフィア……」
「私の事は心配しないで、シャーリー。エマ。 あなた達こそ無理して私と同じ街で生活しなくていいんだよ?」
私は2人の肩に手を置き、諭す様にそう言った。
するとエマは強い口調で言い返して来た。
「でも、アタシ達はアイツにあなたの事を頼むって託されただろ?あんたが危険な事をしてるってアイツが知ったら喜ぶと思うか? 復讐に近い理由で、ギャングを殺し回っているって。あんたはあの日からアタシ達に何も言わずに、街を出てはギャングの死体を持ち帰ってる、アタシ達はまるでお荷物の様に」
「私の仕事はあなた達に関係ないでしょう!?……それにあの人が居ない世界なんて生きる意味が…」
すると、右頬にピリリとした痛みを感じた。
エマに平手打ちをされたと理解するのに時間はかからなかった。
「あんたは!アイツが最期に言った言葉を聞いてなかったのか!?アタシ達はあんたのことを頼むって言われたんだ!! アンタの事を頼むって!!それにアイツはあんたに幸せになれと言っただろ!そのあんたが命を粗末にしてどうする! アイツは誰の為に死んだのか分かっているのか!」
そう言うとエマは泣き崩れた。
シャーリーは涙目でエマに寄り添った。
私は何も言い返せず、ただ立ち竦んでいた。
私は半年前に最後に見た彼の顔を思い浮かべていた。
彼はあの状況で私に、はにかんだ笑顔を見せた。
遠ざかる中、彼は勇敢にギャング達に立ち向かっていった。
私はただ、彼に手を伸ばす事しかしていなかった。
私はしゃがんでエマを抱きしめた。
「ごめん、エマ。でも、今の私にはこれしか無いの。あの日奪われた農場の仕事はエルフの私にとってかけがえのない仕事だったの。 あなたも知ってるでしょ?エルフは迫害されてて、どこも雇ってくれない。出来る仕事は娼婦か危険な賞金稼ぎ。私は彼に操を立てたの、残された道は賞金稼ぎ。これでも結構満足してる。いつも何も言わずに街から出るのは、あなた達をこれ以上巻き込みたくないから…あなた達も私のせいで、あの街に居られなくなったんだから」
エマに寄り添っていたシャーリーは私の顔をじっと見るとゆっくりと話した。
「私達は姉妹同然の仲だと思ってたの。だからこそちゃんと相談もして欲しかったし、あなた1人を危険な目に合わせるのは嫌なの」
「……ごめんね、シャーリー」
エマはゆっくりと立ち上がるといつもの笑顔に戻っていた。
いや、よく見ると少し引きつっていた。
「まぁ、アンタが無事で良かったよ。今度からはアタシ達も付いて行くからね!アンタが迷惑だろうと!」
「そうだね…。あなた達の本職は元々護衛だからありがたいよ」
「ならパール。1週間ぶりに街に帰って来たんだし、数日くらいゆっくりとしましょう。最近エマと小さな小屋を借りたんだ。宿屋じゃなくてあなたもそこで住めばいいよ」
シャーリーはそう言うと、袋を持ったまま歩き出した。
エマもシャーリーに続いて歩いて行った。
私もとりあえず彼女達に付いて行くことにした。
久しぶりに彼女達とゆっくりと語り合えた。
私はあの日からずっとたまに街に戻ってはすぐに外に出てギャングどもを追跡し、殺していた。
今自分の姿を見返すと彼に貰った服はボロボロで、コートは土埃が沢山付いていた。
久しぶりに彼女達の小屋で風呂に入り、エマの服を借りた。
台所に並ぶ食事はどれも暖かかった。
しばらくすると、私は閉店間際の商店に買い物に行き、何本もの酒と食料を買った。
そして、彼女達と酒を飲みながら、ゆっくりと夜は更けていった。
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