第4話 喧嘩
俺達は馬車に乗り、町を目指していた。
途中、ギャングと名乗る男達に邪魔をされたが、全員無事だ。
黄色い大地を馬車で進む。
広い大地の真ん中にポツリと町は佇んでいた。
町へ近づくにつれ、人の数も多くなる。
町並みは如何にもウエスタンってな感じの町並みだった。
俺はソフィアの言う通り、とある店の前に馬車をつけた。
すると中から小太りの男性が出てきた。
「やあ、ソフィア。久しぶりだね、今日は話していた雇っている男も一緒か?」
ソフィアは馬車から降り、馬車の後ろに行く。
「ええそうなの、ウィル、荷物を降ろして」
「そうかい、御機嫌よう、ミスター…」
「パーカーだ。ウィリアム・パーカー、御機嫌よう」
「ああ、これからもご贔屓に、ミスター・パーカー」
俺は馬車を降り、荷台から荷物を降ろす。
エマ達も手伝ってくれた。
全ての箱を店内へ入れると、ソフィアと男性は値段交渉をしていた。
しばらくすると終えたらしく、ソフィアの頬は緩んでいた。
いい取引になったようだ。
俺はソフィアに近づいた。
「ソフィア、これからどうする?もう農場へ戻るのか?」
「いえ、買いたい物があるからちょっと見て行きたいわ。そうだ!ウィル、好きなもの買ってきなよ」
そう言うと、お金を渡してきた。
「いいや、君の農場で世話になってるだけで十分だよ。特に必要なものもないから、これは受け取れない」
「このお金はあなたの仕事に成果でもあるんだから、受け取って!」
すると、俺に抱きついて、ポケットにお金を突っ込もうとしてきた。
「お、おいソフィア!」
制止しようと声を出すが、彼女にはもう何を言っても仕方が無さそうだ。
「わかった、ありがとう貰っておくよ」
俺はソフィアの肩を軽く叩いて、そう言った。
「じゃあ、町中でも見てきたら?」
「いいや、君に同行する。そうじゃないと来た意味も無いだろ」
「そういえばそう言う約束だったわね、じゃあ行きましょう!」
ソフィアは俺の手を引いて、歩き出した。
エマ達は余計な空気を読んで、柱の陰から俺たちを見ている。
彼女は農具を販売している所や、馬屋、武器屋などを回っていた。最中、お昼を過ぎると、食事処を探し、食事を済ませた。
回っている最中、やはりエルフは浮いた存在なのか、色々な奴にジロジロと見られており、時折差別的な言葉が聞こえる。
気がついたら夕暮れ時になっていた。
衣服店に入り、ソフィアは服を見ている。
気に入った服があったらしいが、財布を見て悩んでいた。
そして、何も買わずに、外に出た。
「ソフィア、ちょっと待っててくれ、買いたい物がある」
俺はソフィアにそう言うと、店の中に戻った。
そして、主人の前に行く
「さっきの彼女が見ていた服をくれないか?」
「ちょっと待ちな…、これだな」
それは、薄い水色のシャツだった。
確かにソフィアに似合いそうな一品だ。
先程、ソフィアからもらった金を出し、支払いを済ませた。
服を持って、外へ出た。
ソフィアが柱に寄りかかって待っていた。
「ソフィア、いつも世話になっているから。これを君に」
俺はソフィアに先程買った服を渡した。
「え?私の為にお金を使わなくていいのに!ウィルが好きなように使ってよ!」
「だから、好きなように使ったんだ。君が着ているのを見てみたくてね、俺の為にも受け取ってくれ」
彼女は顔を赤くし、おずおずと受け取った
「ありがとう」
そう言うと、服をギュッと抱きしめた。
「お二人さん、やっぱお似合いだよ」
何処からかエマとシャーリーが現れた。
「言ってろ、お前たちは買い物済ませたのか?」
「あぁ、あたし達はもう済ませたよ。ちょいちょい町に来るからね、そこまで買うもの多くないんだ」
そう言うと、エマはソフィアの手を引いて、どこかに歩いて行った。
俺も仕方なくついて行くと、酒場に着いた。
酒場の中は夕暮れ時とあって、中々人がいた。
中では軽快な音楽が流れ、ざわざわとしていた。
俺達はカウンターに並んだ。
すると、エマはビールを4つ頼み、金をカウンターに出した。
「あたしの奢りさ、やっぱり、町に来たら酒場なら行かないとね!ウィルとソフィアの祝いさ!」
「だから、ウィルとはまだそんな仲じゃ…」
「まだだって?つーことはいつかはって事だな!」
エマはソフィアにしつこく絡んでいた。
心なしか、ソフィアも嬉しそうだった。
すると、一人一人の前にビールの瓶が置かれた。
俺は乾杯をすると、一気に飲んだ。
久しぶりの酒はやはり格別に美味く感じる
ソフィアとシャーリーはチビチビと飲んでいた。
エマは見た目通りというか、豪快に飲んでいる
俺も負けじと、飲み干した
そして、カウンターに金を出して、ウイスキーを頼んだ。
エマも同じようなタイミングでウイスキーを頼んだ。
ショットグラスになみなみと注がれたウイスキーを一気に飲み干すと、喉奥が焼けるような感覚に襲われた。
その感覚を楽しみながら、横を見ると ソフィアの顔が真っ赤になっていた。
「おい、ソフィア大丈夫か?」
「え?何が〜?」
フラフラと揺れながらソフィアは答えた。
「ソフィアはお酒に弱いので、すぐこうなっちゃうんですよ」
シャーリーはいつのまにか、ウイスキーを頼んでおり、ちょびちょびと飲みながら、そう言った。
ソフィアのビールは半分ほどしか減っていなかった。
まあ、ソフィアも楽しんでそうだ。
俺はさらにウィスキーを頼み、飲み干す。
しばらく、談笑をしながら、飲み交わした。
すると、店の扉が勢いよく開かれ、5人ほどの無法者らしき男達が入ってきた。
そして、テーブル席にいる人間を無理矢理どかせ、そこに座った。
「おい、酒もってこい。あと女もだ!」
偉そうな口調で一人がそう言うと、酒場のマスターは急いで酒を持って行った。
俺はエマに近づき、耳打ちをした。
「あいつらは何だ?」
「この辺りに最近やってきたギャング達さ、ああやって偉そうにしてるけど、集団じゃ無いと何もできないクソどもさ。関わらない方がいい」
俺はウイスキーに口付けながら、ちらりと見た。
酒場のマスターは怯えながらあいつらに酒を持って行き、カウンターに戻ろうとしていた。
「女もだって言ってんだろ!…おい、そこのカウンターの女達、こっちに来いよ」
あいつらはこっちを指差して、手招きをする。
ソフィアはほろ酔い状態でフラフラとしているが、エマとシャーリーは無視を決め込んでいた。
すると、男達のうち3人が、こちらに歩み寄ってきた。
「おい、お前達だって言ってんだろ。お、よく見ると美女揃いじゃねえか」
そう言うと、エマとシャーリーの肩に腕を回し、馴れ馴れしく抱き寄せようとした。
二人は嫌そうな顔をして、離れようとするが、二人の男が後ろから彼女達に抱きついた。
周りの人々は巻き込まれるのを恐れて、見て見ぬ振りをしている。
俺はビールを頼み、飲みながら男達に話しかけた。
「やめとけよ、嫌がっているだろ」
すると、二人に抱きついていない男が、俺に近寄り、俺の顔に顔を近づけて、威圧してきた。
「もういっぺん言ってみろよ」
「やめとけ、と言ったんだ」
俺は男を睨みつけながら、そう言う
すると、男は俺の顔に唾を吐きつけてきた。
「おら、顔からヨダレが垂れてるぜ、拭きなよ」
男はそう言うと、笑う。
エマとシャーリーを見ると、こいつらに逆らうなと言いたそうな顔をしていた。
エマとシャーリーに抱きついている男達もニヤニヤと笑う。
俺は顔を拭くこともなく、そのまま睨みつけた
「面倒は起こしたく無い、頼むから俺たちの事はほっといてくれ」
そう言うと、フラフラとしているソフィアに男は抱きつき、胸を鷲掴みにした。
「女達を一晩借りるぜ、そしたらほっといてやる」
そう言うと、ソフィアの胸を無理矢理揉みしだいた。
ソフィアは顔を歪める。
その瞬間俺はビール瓶を握りしめ、男の顔を殴っていた。
男は顔から血を流し、ガラス片が刺さっている。
ほぼ同じタイミングでエマは自分に抱きついていた、男の腹部を蹴り、顔を掴んで思いっきりカウンターの角に叩きつけた。
シャーリーも自分に抱きついた男の股間を蹴り上げ、倒れた男の顔を踏みつけた。
「あーあ、ウィリアム。面倒を起こすなじゃ無かったっけ?」
「お前も人のこと言えないだろう。こうなったら仕方がない」
「ウィリアムさんも中々やるんですね」
俺はソフィアを自分の後ろに隠す。
ソフィアは未だに酔っていた。
「な〜にが起こってるの〜?地面が揺れてるよ〜」
そう言いながらフラフラとしてカウンターにもたれかかる
残りの男達が立ち上がり、こちらへ歩み寄ってきた。
「てめーら俺らが誰だか知ってやってんだろうな」
大柄の男がそう言う。
「知ってたら忘れはしないさ、お前みたいなブ男」
そう言うと、男は声をあげながらタックルしてきた。俺はソフィアを右にいるエマ達の方へ押した。
俺は男にタックルをそのまま受け、背中をカウンターに強打した。
背中の痛みとともに、息がつまる。
そして、そのまま何発か顔を殴られた。
俺は隙を突いて、男の顔を掴み、ヘッドバットを食らわせた。
すると、男は後ずさりし、顔を抑えている。
俺はそいつの腰めがけてタックルし、柱に叩きつけた。
そして、鳩尾に蹴りを入れ、顔を掴んで思いっきり殴った。
すると、男が反撃しようと腕を振ったが、頭を下げて避ける。
俺は近くのテーブルにあった瓶を掴み男の頭に叩きつけた。
男は柱にもたれかかったまま、ズルズルと力を無くして行った。
もう一人の男はエマ達がとっくに仕上げた様で、床に転がっていた。
俺はソフィアの肩を持ち、酒場から出た。
あたりは真っ暗になっており、俺達は町の宿屋に一晩泊まる事にした。
ソフィアの肩を持ちながら宿屋の主人に話しかける
「4名泊まりたいんだが…」
「あいにくふた部屋しか空いてないよ、ベッドは一つずつだから、2人で寝てもらうよ」
「あたしはシャーリーと寝るから、あんたはソフィアと同部屋だな」
「おい、勝手に決めるな。…仕方ない、俺は外で寝るさ」
すると、ソフィアは俺の首に腕を回し、前から抱きついてきた。
離そうとするが、思いっきり俺に抱きついてきている。
離そうにも離されない。
「ははは、ソフィアはあんたと寝たいそうだ。オヤジ、鍵をくれ」
そう言うと二人は階段を上がって行った。
そして、エマは階段の途中で止まる。
「ソフィアは初めてだからな!優しくしてあげろよ!」
「もう、エマったら。ごめんなさい、ウィリアムさん」
シャーリーはエマの背中を押して、階段を登っていく。
すると、主人はめんどくさそうな顔をして、言った。
「で?どうします?」
俺は諦めた。
「鍵をくれ…」
「二階の突き当たりの部屋だよ、あの二人の隣ね。…汚さないでくれよ」
「心配しなくていい」
俺はソフィアを抱き上げ、階段を登った。
ソフィアは未だに離れようとはしない。
部屋の前に着き、鍵を開けて中に入る。
「ソフィア、部屋に着いたぞ。いい加減に離れてくれ」
そう言うが、ソフィアは離れようとはしない。
意識しないようにしているが、動くたびに柔らかい感覚が触れているところに走る。
正直、ずっと彼女に触れていたいし、このままキスをしたいが、堪える。
部屋にあるベッドに近づくと、やっと離れてくれた。
俺は彼女を抱き抱え、ベッドに寝かせる。すると、彼女は俺の腕を掴み、思いっきり引いた。
俺は体制を崩して、ベッドに倒れこんだ。
ソフィアを押し倒した様な体勢になった。
ソフィアの顔がすぐ近くにあり、ドキッとしたがそれだけでは飽き足らず、ソフィアは俺に抱きついてきた。
「ソフィア、離してくれ!起きてるのか? くそっ聞こえちゃいないか…」
ソフィアは何を言っても、ムニャムニャとしか言わない。
何を言ってるのか分からないが、離してくれる気は無いそうだ。
俺はソフィアの帽子を脱がせ、自分の帽子と共に帽子をサイドテーブルに置き、抱きついたまま、俺はソフィアの横に寝た。
結局、俺とソフィアはその晩一緒に寝る事になった。
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