第2話 生き抜く術

薄暗い空間に狼が1匹、こちらを睨んでいた。

狼はゆっくりと俺に近づくと、吠えた。

すると狼は鹿に変わった。

その鹿は、ゆっくりと光り輝き出した。

すると、光が俺に伸びてきた。


自分の体を見下ろすと、光に包まれていた。

しばらく鹿が光り続けると、ふと力が抜けたように鹿は倒れ込んだ。

そして、鹿は地面へと吸い込まれていった。








目をゆっくり開けると、白い天井が見えた。

目を周りに配らせると、陽の光が暖かく体を照らしている。

「どこだ…ここは?」

起き上がろうとすると、腹部につんざくような痛みが走る。

「痛ててて!」

腹部には包帯が巻かれており、それを解くと、傷口は縫合されていた。

「この傷は、やはりアレは夢じゃないのか…」

すると、トントンと階段を上る音が聞こえてきた。

音に気付き、ドアに目を向けるとボブカットの若い女性が入ってきた。

女性の耳は長く尖っており、まるでファンタジーのエルフみたいだった。

「起きたのね… 弾は取ってるから安心して…」

少女はそう言うと、バスケットを俺のそばに置いた。


中にはパンと瓶の牛乳が見える。

そして、そのまま女性は何も言わず、部屋から出て行こうとした。

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

そう言うと、女性は俺を睨みながら振り返り、ドアにもたれかかった。

「…何?」

「その…、ありがとう」

もっと言いたい事があるはずだが、この言葉しか出てこなかった。

「ええ、そう。 傷が良くなったら出て行って。…面倒を起こさないでよ」

「あぁ… その、いくつか聞きたい事があるんだけど…」

女性は髪をかきあげながら、ため息をついた。

「一体何を聞きたいわけ?」

「その、ここはどこなんだ?」

「はぁ? あんた頭にも撃たれてるの?」

「い、いや、その… 俺は、気がついたらこの訳の分からない所にいたと言うか…」


そう言うと、女性はドアのそばにある椅子に腰をかけ、腕を組んだ。

「あんたは2日前の夜中にうちの家の前で倒れたじゃない、訳の分からないのはこっちよ」

「何というか… 俺はその日に草原で目を覚ましたというか…部屋に居たのに目を覚ましたら、そこに居たと言うか…」

「あんたの与太話につきあってる暇は無いの、面倒ごとを巻き込む前に出て行ってね。そうじゃ無いと今度こそ撃つから」

女性は俺を睨むと、立ち上がり、部屋を出ようとした。

「ま、待ってくれ… ひとつだけ聞きたい… ここは日本だよな?」

「日本…?違うね、ここはアーリアよ」

「アーリア?一体…」

「自由とチャンスの地って言われてるけど、実際ここはただの無法の地… 私みたいな農民は日々無法者達から怯えながら生きているのよ…」

「無法者… そうだ!あの女の子…」

「女の子?」





俺はここに着いてから、今に至るまでの事を全て話した。そして、自分の事も。


話をするにつれ、俺は異世界に来てしまったんだと実感できた。

女性は、顔を時折歪めながら、俺の話を聴いてくれた。


「なるほどね… 信じられないような話だけど、信じるわ」

「ありがとう…」

「その女の子は私がちゃんと弔っておくわ、あなたはそうね…、話の通りなら行く所がないのよね」

「……」

俺は、この世界の人間でもなければ住むところも無い。

これからどうすればいいのか、全く見当も付かない。元の世界に戻れる方法も分からない…

俯きながらそう考える。


すると彼女が口を開いた。

「あなたを農場で雇うってのはどう? 衣食住は提供するわ」

俺は顔を上げ、彼女の顔を見る。

彼女は微笑みながら俺を見ていた。

「それは助かる…だけど、本当に良いのか?」

「ええ、一人で農場を経営するのは大変だったから、いつかは雇おうと思ってたのよ」

少女はそう言うと俺に近づき、手を出してきた。

「ソフィア・バージニアよ、よろしくね」

そう言うと、俺も手を出し、彼女の手を握った。

「なら、バージニアさんと呼んだ方がいいかな?」

「ソフィアで良いわよ、肩苦しいのは苦手なの。そうと決まると、あなたの服とか必要よね… 部屋はこの部屋を使ってもらって良いのだけど…」

そう言うとソフィアは部屋の中にあるタンスを開き、シャツとズボンを取り出した。

「着替えはこれを使って。私の父さんの物だけど…」

「そういえば、ソフィアのご両親はどこにいるんだ?」


すると、ソフィアは俯いた。

「私の両親は5年前、ここらのギャング達に殺されたの」

俺は地雷を踏んでしまったと思った。

「すまない、嫌な事を思い出させてしまって…」

「気にしないで、この辺りじゃよくある事よ。両親の事は…ただ、運が悪かったと納得してる」


ソフィアはベッドの横のテーブルに服を置くと、ドアを開け、外に出て行った。

俺はベッドに横になり、目を閉じた。

ソフィアには悪いが、食欲は無さそうだ。


その日は夢を見なかった。





目を開けると、窓から日光が差し込んでいた。

サイドテーブルにいつのまにか置かれていた、懐中時計を見ると、朝の6時を指していた。


腹部をいたわるようにベッドから降り、ソフィアの父のシャツに袖を通し、ズボンを履いた。

元々履いていたジャージは取り敢えず、ベッドの上に畳んでおいた。


そうすると、ドアの外から足音がした。

足音は、階段を下って行っているようだ。

「さて、流石に何か手伝いをしないとな…」

そう言いながらドアを開け、階段を下った。


痛む腹を抑えながらゆっくりと階段を降り、物音のする部屋に歩いて行った。

扉の前に立ち、ゆっくりと扉を開くと、ソフィアがネグリジェ姿で髪を解いていた。

朝日が彼女の明るい赤髪を照らし、椅子に座って髪を解いている姿は女神といっても過言ではないほど美しい風景だった。

俺はその風景に釘付けになるように、見入ってしまった。

「ねえ、あまり見つめないで欲しいんだけど…」

ソフィアのその声に俺はハッとした。

そして、ソフィアのネグリジェ姿に気づくと、そっぽを向いた。

「す、すまない!つい見入ってしまって…」

「ふーん、まぁいいわ。 もう立てるようね、出来そうなら農場の手伝いをして貰おうかしら」

「あぁ…、そのつもりだ」

俺はそっぽを向いたまま、部屋の外へ出る

しばらくすると、ソフィアはシャツにジーンズ、そしてゴツいガンベルトを巻いてまるでカウガールのような格好で出てきた。

「取り敢えず、朝ごはんにしましょ」

そう言いながら廊下を歩きだした。

俺も彼女について行くと、炊事場のような所に着いた。

彼女は置いてあるパンを取り出し、テーブルの上に置いた。

そして、暖炉に火をつけ鍋を温め始めた。

「そこに座ってて」

「手伝うよ」

俺は彼女にそう言うと、食器類を探した。

「じゃあ、そこから食器を出して」

彼女の指差した先の棚を開き、食器を取り出した。


テーブルの上にグラスと、スープ用の器を置き、スプーンも置いた。

すると、ソフィアはグラスに水を注いだ。

しばらくすると、ソフィアは鍋を取り出し、器にスープを注いだ。

美味しそうな匂いが部屋中に広がる。


お互いに対面になり、テーブルに座った。

「食べましょう」

ソフィアは笑顔でそう言った。

「じゃあ、いただきます」

スプーンを取り、スープを口に運ぶ。

なんとも家庭的な味が、胃袋と心を温めた。

「ふふ、こうやって誰かと食事をするのって久しぶり…」

ソフィアは俺の顔を見ながらそう言った。

そういえば、俺自身。こうやって人と食事をするのは久しぶりな気がする。


食事を済ませると、俺は近くの桶で自分とソフィアが使った食器を洗い、拭いて棚へ戻した。

ソフィアは、すでに外に出ているようだった。


俺も外に出ようと、廊下を歩き、エントランスに着いた。

そこにはブーツが用意されていた。

そのブーツに足を通し、外へ出る。

眩しい朝日に目を細めながら、歩みを進めるとソフィアが馬に乗っているのが見えた。

ソフィアは頭に白いテンガロンハットを被っており、元気いっぱいって感じの雰囲気を出していた。

ソフィアは俺に気づくと、馬に乗ったまま俺に近づいてきた。

「ねえ、あなた馬には乗れるの?」

ソフィアは俺を見下ろしながらそう言う。

「あぁ、小さい頃習ったことがあるから多分な」

俺は小学校の頃、夏休みにアメリカの祖父母の家に行った事がある。祖父母は昔ながらの農場を営んでおり、手伝うついでに馬の乗り方も教えてもらった。

「じゃあ着いてきて」

そう言うと、小屋の方は行った。


小屋の中には3体ほど鞍の付いた馬がいた。

「農場の仕事を教えるから、好きなのに乗って」

俺は、茶色の元気の良さそうな馬にまたがった。

腹部に痛みが走るがそれを我慢しながら、小屋の外に馬を誘導する。

「やっぱり痛そうね…」

ソフィアは痛みに我慢している俺を見ると心配そうに声をかけてきた。

「いや、大丈夫さ…」

正直馬が揺れるたびに、振動で痛みが走ったが、これ以上彼女に迷惑をかけたく無かった。

だから、痛みに耐えながらソフィアに声を掛けた。

「まず何をすればいいんだ?」

「そうね…取り敢えず、場所を教えるわ。ここは馬小屋。…着いてきて」

すこし馬を走らせると、木造の風車の様な建物に着いた。

「ここが鶏舎ね」

そう言うと、また走り出した。

そして、柵の周りを走り、出入り口の様なところの前に止まった。

「ここから牛たちを放牧してる。夕方になったらここを開けて中に入れるのよ」

「あぁ…なんとなくわかった。祖父母の農場の手伝いをしていたから感覚は掴めそうだ。ただ、やり方が昔ながら過ぎて分からないことも多そうだけどな」

「ふふ、昔ながら…ね 私達じゃこれが普通なんだけど?」

「いや、嫌味を言ったわけじゃないんだ…」

「分かってるわよ。それじゃあ家に戻りましょう。渡したいものがあるの」


俺はソフィアに続いて、家に戻る。

家の前に馬を繋ぎ、中へ入る。


ソフィアは入り口から一番近い部屋に入る。

俺もそれに続くと、中には銃がいくつも並んでおり、箱の中には弾薬も入っていた。

ソフィアはその中のライフルと拳銃を取り出すと、俺に渡してきた。

「護身用に渡しておくわ。もう無法者たちに撃たれない様にね」

俺は銃を受け取るのに抵抗があった。

「俺は… 受け取るべきなのか…?」

「この世界では自分の身は自分で守るの。そうじゃない人間は死ぬの。そして、誰も守れない」

俺はあの女の子の事を思い出した。


女の子はあの無法者達に乱暴され、撃ち殺されていた。

……俺も死ぬところだった。

「あぁ、そうだな。銃がないと、自分を守れない…」

そう言うと、彼女からライフルを受け取る。

「これはウェンチェスターライフルってやつよ、このレバーを下に下げれば次弾が装填される… ちゃんと銃の扱い方も教えるわ」

そう言うと、ソフィアは皮のガンベルトを俺に渡してきた。

俺はそのガンベルトを腰につけ、ソフィアから拳銃を受け取った。

ソフィアもガンベルトに拳銃を入れ、もう一丁のライフルを持ちながら部屋から出た。

その時に箱から弾薬の箱もいくつか持っていった。

ソフィアについて行くと、家の裏手でソフィアが止まった。

ソフィアは銃を家の壁にかけると、腰の拳銃を取り出した。

「この拳銃はピースメーカーって呼ばれてるの。弾の込め方はね、こうやって、撃鉄を半分まで引いて、右のカバーをズラすの。そして、弾を込める。後はこの撃鉄を最後まで引いて、引き金を引けば弾が出るわ」

彼女は片手で銃を持ちながら、裏手の木に向かって引き金を引いた。

木は10mほど離れている。

ダァン!と音が響く。

木を見ると、穴が開いており、粉が舞っている。

「じゃあ、パーカー。やってみて」

俺も壁にライフルを置き、拳銃を取り出す。

本物の銃を見たのは、祖父母の家に行った以来だった。

ごくりと唾を飲み込み、深呼吸する。

そして、撃鉄を半分まで引き、シリンダーのカバーを横にずらして、弾を込められる状態にした。

ソフィアから二発弾丸を受け取り、弾を込める。

そして、カバーを戻し、撃鉄を最後まで引いた。

「後は引き金を引くだけよ」

木に照準を向けて、引き金を引いた。

腕に軽く衝撃が走ると、銃口から煙が出ていた。

木を見ると、木のど真ん中に穴が開いている。

「なかなかのものね、初めてでしょ?撃ったの」

「そりゃ…そうさ」

「もう一発撃ってみたら?そのまま撃鉄を引いたら撃てるわよ」

もう一度、銃を木に向け、撃鉄を最後まで引いた。

そして、引き金を引く。

乾いた音がこだまする。

先程の穴から10cmほど離れたところに穴が増えていた。

「まぐれじゃないようね、結構腕いいじゃない」

ソフィアは俺の肩に腕を乗せて、ケタケタと笑う。

ソフィアは拳銃から薬莢を取り出し、ガンベルトに直した。

俺も撃鉄を半分まで引いて、カバーを開き、薬莢を捨てる。

そして、腰に入れた。

「じゃあ次はライフルね、これはウィンチェスターライフルって言うの、この横の穴に弾を込めて、後はレバーを引くと弾が装填されるの。後は引き金を引くだけ」

ソフィアはレバーを勢いよく、下ろして、元に戻す。

そして銃を構えて30mほど遠くにある木に吊り下げられている金属のバケツに銃口を向ける。

ソフィアが引き金を引くと、乾いた音と金属が弾ける音が聞こえた。

そして、もう一度レバーを下ろし、引き金を引く。

また、乾いた音と金属音が聞こえた。

ソフィアは振り向き、少しニヤッと笑う。

「どう?」

「すごいな、あの先のバケツに当てたのか」

俺も壁に掛けたライフルを持ち、ソフィアから弾薬を受け取る。

ライフルの横の穴に弾を五発込めると、レバーを引いた。

そして、照準をバケツに向け、引き金を引く。

乾いた音だけが聞こえた。


もう一度、レバーを引き、続けて発砲する。

すると、バケツのかかった木から粉がふいた。

続けて、三発撃つが一度も金属音は聞こえてこなかった。

「やはりダメか、難しいな」

「慣れれば当てれるようになるよ」


そう言うと、ソフィアは銃を持ったまま家の表側に歩き出した。


俺もライフルに着いているベルトを肩にかけて、ソフィアについて行く。

そして、先程の部屋に入り、ライフルだけを置いた。

「じゃあ、馬小屋と柵の中と鶏舎の掃除をお願いね」

「分かったよ、ミス・バージニア」

彼女に向かってそう言うと、俺は鶏舎に向かって歩き出した。

ソフィアは馬に跨り、柵から牛たちを外に連れ出していた。

鶏舎内にある鍬を使い、鳥のフンなどを掻き出す。

そして、近くにあるエサを餌入れに蒔き、フンを小さい荷車に乗せて、馬小屋に向かった。

牛舎でも同じように、フンを一箇所にまとめて、エサを入れた。フンを荷車に入れ、少し離れた肥溜めに持っていき、中に入れた。

そして、柵の前に荷車を持っていき、入り口を開けて柵の中に入り、柵の中のフンを取り出した。

そして、同じように肥溜めに入れる。

気がつくと、日はかなり傾いていた。

辺りはオレンジ色の光に照らされ、夕暮れを告げていた。


すると、牛たちが農場に戻って来た。

牛たちの後方にソフィアも居るようだ。

俺は牛たちが全て入るのを確認すると、柵の入り口を閉めた。

「ソフィアお嬢様、おかえりなさいませ」

俺はソフィアに頭を下げ、冗談っぽくそう言う。

「もう、パーカー、やめてよ。そんな喋り方くすぐったいじゃない」

ソフィアはくすくすと笑いながら、ハットを取り、馬から降りた。

「冗談だ、ソフィア。こっちは一通りは終わっているよ」

「あら、結構手慣れてるのね。思ったより、早く馴染みそうじゃない」

「あと、俺のことはウィルでいいよ、雇い主なんだから気軽に呼んでくれ」

「じゃあ、ウィル。馬を小屋に戻したら、今日の仕事は終わりにしましょうか。じゃあレニー、お疲れ様。」

ソフィアは馬に話しかけ、顔を撫でる。

そして、馬を連れて小屋に戻った。

俺も家の方へと歩き、馬を小屋に戻した。


小屋の中でソフィアはレニーと呼んでいた馬の毛並みを整えていた。

「ソフィア、そういえばコイツの名前はなんだ?」

ソフィアに俺が引き連れている茶色の馬の名前を訪ねる。

「その子はルーカスっていうの。結構気性が荒いけど、あなたには懐いているようだから、あなたが可愛がってあげて」

「そうか、ルーカス。今日は一日家の前に置いてて悪かったな、明日からまた頼むぞ」

ルーカスの顔を撫でると、嬉しそうに首を振った。

そして、毛並みを整えて、馬小屋を後にした。


ソフィアと並びながら、家へと向かう。

「そういえば、君って何歳なんだ?16歳くらいか?」

俺はふとソフィアの年齢が気になった。

「えーっと今年で20かな、あなたは?」

「今年で26歳だ。にしても驚いたな、20歳だったとは」

「ふふふ、16歳に見えたってこと? それはお世辞かしら?」

「いや、かなり若く見える。恋人とかは居ないのか?」

「いいえ、ずっと居ないわ」

「へぇ、それも意外だな。かなりモテそうだけどな」

「私はエルフと人間のハーフだもの… 街に出ると危ないから基本的に行かないのよ」

俺は彼女がエルフの血を引いてると知り、耳の長さに納得した。

「エルフというと、あれか?弓を使って魔法を唱えるような」

「このアーリアは元々エルフ族の土地だったんだけど、人間族が急にやってきて、戦争を仕掛けてきたの。そして、沢山のエルフ達は奴隷にされたり、殺されたりした。それも数十年前の話だけどね」

「今は、共存という形で暮らしてるけど、やっぱりエルフ族は人間族から下に見られてるの。大昔の名残かもね」

彼女を見るが、かなり整った顔をしていると思う。だからこそ、エルフ族というだけで彼女に危険が及び易いんだろう。

彼女はこの農場で人と会わずに生活していたのか…

「あなたの世界にはエルフとか居たの?」

「いいや、俺の世界は大昔から人間だけだ。エルフはファンタジーの世界だけだよ。実際君を見て最初は驚いた」

「そうなんだ」

気がつくと、家の前に着いていた。

エントランスを抜け、炊事場に入ると、ソフィアが調理を始めた。

俺もソフィアに聞きながら手伝いをする。

食事を済ませると、ソフィアが風呂に案内してくれた。

この世界では一週間に一度とかのペースで普通は入るらしいが、彼女は毎日風呂に入らないと気が済まないらしく、毎日入っているようだ。

それはある意味ありがたかった。俺も毎日入らないと気が済まないタイプだったからだ。

俺は暖炉で水を温め、風呂に運ぶという動作を繰り返す。

そして、風呂のある部屋から離れるとソフィアが入っていった。

しばらくすると、風呂場から鼻歌が聞こえてきた。

美しい歌声だった。

俺は二階に上がって部屋へと戻り、椅子に腰掛けた。

目をつぶり、ソフィアの歌を聴く。

しばらくすると、ドアの音が開いた音がした。

そして、階段を上がる音がすると、今いる部屋の向かいの部屋に入っていったようだ。

そして、向かいの部屋からソフィアの声が聞こえてきた。

「ウィル、あなたも入ってきなよ」

「いや、そうしたいのは山々だが、傷に入ると染みるからな、濡れたタオルで拭くだけにするよ」

「あ、そっか、じゃあおやすみ」

「あぁ、おやすみ」

俺は近くのタオルらしき布と、タンスから下着をとり、階下の風呂部屋に入った。

彼女曰く、部屋の中のものは自由に使っていいそうだ。

シャツとズボンを脱ぎ、風呂にタオルを沈めて体を清めた。

全身を清め終わると、風呂桶の下の蓋を外し、お湯を流した。

お湯は下に見える溝を通っていく。おそらくこの家のそばにある川に流れるのだろう。

俺は下着を変え、ズボンを履き直した。

上半身は裸のまま、包帯を替えようと探していた。

そして、近くに包帯の入ったタンスを見つけ、巻き直した。

Tシャツがあるような世界ではないため、取り敢えず上半身は裸で寝る事にした。

そのまま部屋へと戻り、ベッドに倒れこんだ。


ふと思い出し、ベッドから立ち上がって、ガンベルトに挿した拳銃を抜いた。

そして、部屋の空へと向ける。

そして、ガンベルトに直す。

また抜き、素早く撃鉄を引く。


この世界では銃が無いと自分を守れないと言うことを思い出し、少しでも早く抜けるように練習を1時間ほどした。


しばらく、銃の練習をして、ガンベルトと拳銃を、をサイドテーブルに置き眠る事にした。









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