異世界・ウエスト・ストーリー(仮)

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一章 ウィリアム・パーカー

第1話 俺の知らない世界。

「ふう、今日も一日終わったかぁ」

俺はスーツを脱ぎながらため息をつく。

俺は5歳の時日本に来て以来、日本で育ったが、生粋のアメリカ人だ。両親は2年前アメリカに帰ったが、俺は日本で就職をした為、一人で日本に残っている。

毎日、仕事に行き 家に帰る。多くの日本人と同じ生活スタイルをしていた。

彼女は居ない。心から愛せる人が見つからなかったからだ。


スーツをハンガーに掛け、お気に入りの音楽を掛けながらソファーにもたれかかる。

そのまま、ソファー横にある小さい本棚から読みかけの小説を取り、読む事にした。

お気に入りの音楽が空間を占める、 聞こえるのは音楽とページをめくる音。

俺はひたすら文字を目で追い、それを頭の中でイメージする。

(異世界転生って必ず、女の子は優しいよなぁ。全く)

そんな事を考えながら。


ふと、時計を見ると日にちは変わっていた。

明日の仕事は休みだが、あまり夜更かしをするのは良くないと思い、ベッドに入る。

明日のアラームをセットし、目を瞑る。

明日のなにをしようか考えながら。




夢の中で、一頭の鹿がこっちを見ている。

逃げることも、何をするわけでもなく、俺を見ている。

いつからか、鹿のそばに狼が居た。

その狼も俺のことをじっと見つめている。




俺は眠りから覚め、目を開けると、草むらに寝転がっていた。

(まだ、夢の続きか)

俺は目を閉じ、夢が覚めるのを待った。



しかし、鼻孔をくすぐる青臭い匂いは夢にしてはリアルすぎた。

目を開け、そこらへんの雑草を掴み、握り潰した。

握りつぶした感覚は現実そのものだった。

俺は飛び上がり、辺りを見回した。

真っ暗だが、月明かりでよく見えた。

だだっ広い草原に俺は一人でいた。

「まさかな... 」

ポツリと呟いた言葉は、誰に言ったわけでもない。

俺は草を握りつぶした手に顔を近づけて、匂いを嗅ぐ。

渋い青臭いにおいが ツンとくる。


後ろを振り返ると、小さな小屋と大きな家が遠くに見える。かなり離れているが、歩いていけない距離でもなさそうだ。4kmってところか。

とりあえずそこへ向かおうと足を進めた。

広い草原を裸足で歩き続ける。 足の裏に感じる痛みは 確かなもので これは現実だと知らされる。

冷や汗が顔を伝う。なぜこんなとこにいるのか、ここはどこなのか。 自問自答が繰り返される。

その自問自答に確かな答えは出てこない。


いつのまにか半分ぐらいまで来ていた。

気づくと、左のほうから馬に乗った5人組と幌で覆われた馬車が一台こっちに向かってきていた。

「おーい、ちょっと!」

手を大きく振りながら俺は向かった。

ある程度近くに行くと、5人組がみんな男で、カウボーイのような格好をしてる事がわかった。

10mほど近づくと、3人の男が馬から降りて、こちらになにかを構えている。

それが銃だと分かるのに、大して時間はかからなかった。

(嘘だろ!)

俺はとっさに手を上にあげ、降参ポーズをとった。

「待ってくれ、落ち着け。俺は不審者じゃない、ここはどこなのか聞きたいだけなんだ!」

すると、ひとりの男が口を開いた。

「あんた、一体何を言ってるんだ?ここはどこかだって? 馬にでも蹴られたのか?」

男がそう言うと ほかの男たちが下卑た笑いを浮かべる。

5人をよく見ると、今話しかけてきた男は小綺麗なスーツに身を包み、整えられた口ひげを蓄えている。

他の四人は小汚く、よく映画で出てくる無法者って感じだ。

「なぁ、あんた。信じられないだろうが、俺は気が付いたら草原で寝そべってた。本当は家に居たはずなんだ。 だから教えてくれ、ここはどこなんだ?なんかの映画撮影の現場か? あと銃も下げてくれ、俺は映画には関係ないんだ。」


男は整えられた長い髭を撫でながら。俺をじっくり見てくる。まるで見定めているかのように。

しばらくするとその男は呆れるような口調で話しかけてきた。

「アンタの言っている意味がよく分からんが... まぁいい、聞くだけ無駄だ」

そう言い終わると同時に 馬車から人影が飛び出した。

長い髪をした金髪の少女だ。ボロ切れのような服と手足に鎖を身につけ、全力で走った。

口髭の男は帽子を被り直すと、一言つぶやいた。

「連れ戻せ。」

すると他の男たちが馬を蹴り、その少女を追いかけた。その様子を俺は目で追った。

一人の男がロープを取り出し。まるで、牛を捕まえる様に少女に縄をかけた。

そのまま、馬に引き摺られながら少女と男たちは戻ってきた。

「おい、なにやってんだ!あんたら!」

俺は咄嗟に声を荒げた。

「商品が逃げたら追いかけるのは当たり前だろう。 もっとも、こいつは今ので傷まみれになって売り物にならんがね。」

そう言うと腰につけた拳銃を取り出し、少女を引きずっている男を撃った。

破裂音が空へこだまする。

「チクショウ!」

俺は腰を抜かした。目の前で人が撃たれたのだから。

撃たれた男は力なく、馬から落ちた。 傷まみれの少女は声を殺して泣きながら震えている。

「商品を傷まみれにするなとあれほど言っただろう。この馬鹿どもが。」

口髭の男は唾を吐き捨て、拳銃を俺に向ける。

そして、気がついたら俺は倒れていた。

腹のあたりがとても熱く感じる。手で自分の腹を触ると、手が血に染まっていた。


俺はそのまま意識を手放した。





数時間経ったのだろう、辺りは明るくなっている。

朦朧とした意識の中、なんとか立ち上がる。

そばを見ると、片目のない少女が横たわっていた。全裸で横たわる少女の股から赤い液体と白い液体が混ざり合って、固まっている。乱暴された後、頭を撃たれたのだろう。右目に穴が空いている。右目からウジが湧いて出てきていた。


俺は何も考えず、そこに見える小屋に向かった。


撃たれた所を抱えながら、足を前に前にと出す。

「ちくしょう、一体。なんだ!?くそ!?」

半ば錯乱状態になりながらも足を進めた。


しばらく進むと、柵の前に着いた。

どうやらここは農場のようだ。

小屋からは馬の声などが聞こえる。

柵の中には羊らしき生き物も居た。

とりあえず、助けを求めようと、大きな家へ歩いた。

大きな家に近づくと、扉が開いた。

「それ以上近づいたら撃つよ!」

扉の影から少女が顔を出し、銃を構えながらそう言った。

俺はやめてくれ、そう言おうとしたが声が出なかった。

手を少女に向けての伸ばすが、力が急に入らなくなり、そのまま膝をついた。

気がつくと、俺は倒れている。

耳鳴りがし始め、意識がぼやけてくる。

そして、俺は意識を失った。

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