これって浮気ですよね?

けしごム

聞いてしまった会話




「あ、田中くんじゃん」


「おう、桃山」


大学の図書館で本を探していたら、俺の彼女を見つけた。

彼女の名前は、桃山はるか。

しかし、俺が彼女に話しかける前に田中とかいう男と話し出してしまった。

いや、盗み聞きするわけではない、断じて盗み聞きではないのだが……、少し離れたところから俺はふたりの会話を聞くことにしてしまった。

盗み聞きではない! 断じて! 好奇心が少し邪魔してしまっているだけだ!



「桃山、そう言えばおまえがこの前、俺んちに持ってきてくれたお菓子めっちゃうまかったわ」



……は!?

俺んち!?

なにその、いきなりの爆弾発言!

は!?

田中とかいうやつの家に行ったわけ?

俺の家にさえ、はるかは来たことないのに!

何かの勘違いだと言ってくれ!

頼む!


「あ、ほんと?

良かった~!

あのお店、お気に入りなの!」


……あっさりと俺の望みが絶たれた。

マジなのかよ!


「へー、俺の母さんも、旨いって言ってたわ」


「え、良かった!

気に入って頂けて!」


は!?

田中ってやつのお母さんにも会ったことあるわけ!?

俺の母さんにさえ会ったことないのに!


「相変わらず、お前のこと俺の母さん気に入っててよ、頭も良くて信頼できてうんたらかんたらってうっせーんだよなあ」


「え、なにそれ嬉しい」



ちょ、ちょ、ちょっと、ハルカサン!?

俺の彼女ですよね、君は!

俺がおかしいのか!?



「俺の妹とはどうだ?」


「うん、だんだん仲良くなれてていい感じだよ!」


「おう、良かったな」



う そ だ ろ!?


浮気だよな!?

これ、浮気だよな!?


今まで俺に見せてた笑顔とかなんだったんだ?

俺に、好きって言ってくれてたのはなんだったんだ!?


「あ、お前、今日、うちに来る日だっけ」



「うん、そうだね。今日、火曜日だもんね」


はあああああ!?

今日はバイトだって言ってたじゃねーか!

つーか、火曜日はバイトだって言ってたじゃねーか!

火曜日は密会だったってことか!?

そうだよな、そうだよな!?



「まあ、妹もお前に懐いてきてるっぽいし、よろしくな。」


あれか、妹と仲良くしてやれってことだよな!?

おい、はあ?

浮気とか、浮気とか!

まじでなんなんだよ!!


「うん、頑張るよ。

彼女も頑張ってるしね。」



「ま、そうだな。良かったわ」


全然良くねーよ!

ぜんっぜん、良くねーよ!


「うん、にしてもさ、中学でクラス同じだった田中くんの妹さんの家庭教師を私がやってるなんてさー、なんか面白いよね。

人生何があるかわかんないって感じ」



「たしかになあ、俺の妹の家庭教師がお前になったって知ったときびっくりしたわ」



「うん、私もだった。

にしてもさ、家に行くとかそういう会話、何にも知らない人が聞けばカップルみたいだよね~、


ね、ゆうきくん?」



にこっと、脱力してる俺の方をはるかが振り返った。

同時に、田中ってやつも俺の方を見た。




「ばればれだよー、盗み聞きしてたの。

嫉妬してた?」



あはははは、と笑う彼女を見て、己の敗北を悟った。


ぬ、盗み聞きじゃねーし!!!

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