4.

「実は、犬が死んで怜ちゃんから電話があった後、元カノから電話があったんだ。」

「……?」

 元カノって例の元カノだよね。何でこのタイミングで連絡があったんだろう。

「妹が元カノに、犬のことを連絡したみたいで。」

「あ、あぁ、そうなんだ。」

 何て丁寧なことをしれくれたんだろうね、妹よ。

「 久しぶりだったんだ、元カノと話すの。でも、元カノ、泣いてくれて……。」

「……。」

「その時に、自分の気持ちがハッキリしたんだ。」

 何だか嫌な予感……。

「やっぱり、あいつだ、って。」


 えぇぇぇぇぇ~!!!


 そうだよ、私はただ慰めただけ!だって、会ったことない犬のために、泣ける!?何、この予想もしていなかった展開。大どんでん返しとは、このことだ。

 

 でもさ、元カノって気になる人と今付き合ってるんじゃなかったっけ。そっちとは別れたのかな。どういう考えでいるんだろう、あの女!

 そう、会ったこともない女に憎悪を感じた。絶対に友だちになれないタイプだ。きっと恋愛においても保険をかける女だ、間違いなく。


 私なんて、クリスマス会えなかったのに、何でもない日にモエシャンロゼ、渡したんだよ?だって事前に用意していたから。どうせクリスチャンじゃないし、クリスマス当日に会えなくったって、今会えているんだからいいじゃない、って自分をなだめたの。

 でもね、今は思うよ。日本人はイベント好きだって言われているけど、カップルで過ごす行事って、やっぱり大事なのよ、カップルにとって。その日にさほどの意味はなくとも、その日に大事な人と過ごすということに意味があるんだよ。

 恋人は一番近い存在なはずだから。ぞんざいな扱いをされていない、と自覚することで気持ちが満たされるの。


 その後は、何かしらちゃんと会話は出来ただろうけど、正直覚えていない。戦闘能力はゼロに等しかった。

 もうやめよ。

 そう思った。


 翌日、いつも集まる友人を巻き添えに、飲んだくれて、泣き散らかして、何とか自分の心に平穏さを取り戻せるように、全ての感情を解放した。

 友人は優しく荒れ狂う私を受け止めてくれ、フラれた直後の数日を何とか乗り越えた。

 それでも、CMで溝端淳平を見かけると、胸が痛くなったりもした。何となく似ているように私には見えていたんだけど、それもフィルターがかかって数倍も良く見えていたのかもしれない。

 あぁ、そう言えば、東野圭吾の『新参者』を貸してたけどもう、きっと返ってこないよね。何たって私という新参者より、どうなんだろう?っていうとんでもない女が良いんだもんね。

 それにしても、指一本触れられない女って……。私には魅力が皆無なんだろうか。悩みは一つ増えてしまった。


 女としての魅力は欠けているかもしれないけど。でも。自分で自分を褒めるつもりはないけど、私は尽くすタイプだと思う。尽くされるのが嫌な人にはオススメできないけど、決して悪いようにはしない、損はさせないよ!って夜中の通販番組で紹介される商品に並べてもいい。


 まだ誰かを好きになれていない。出会いっていう出会いも今のところは、思い当たることがない。

 それでも、いつか自然な流れで一生を共にする人と出会えたらいいな、って希望はまだ捨てていない。そうしたら、その時は全力でその人を愛するんだ。

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