第4話
はっ
俺は目をこすった。
どうやら目が覚めてしまったらしい。いつものようにきりがいいところではなく、中途半端なタイミングで目が覚めてしまった。これはさっきの予想外な事態が原因だろうか。
——さておき、覚めてしまったものはしょうがない。
俺はベットの上で横に転がり、目をこすると、視界の真ん中に「《母の一番大切な》本」が、さらに奥には、勉強机に置いてある朝ごはんが目に入ってきた。たぶん後者は父が作って持ってきてくれたのだろう。作ってくれなくても朝食ぐらいコンビニから買ってきて食べるのに……。
——しかし捨てるのはもったいない。
そう思って勉強机に向かう。
朝食を食べ終わると、食器と一緒に、いつもと同じくメモが置いてあることに気が付く。
朝食きちんと食べとけよ
食べないと健康に良くないから
あと、たまには外に出てみたら
ちっ、余計なお世話なんだよ。
俺だってもう小学生とかじゃないんだし。思わず口からこぼれる。それにそんなんで良い父にでもなれるとか、許されるとかどうせ思っているんだろう。ふざけるんじゃない。どれだけ謝ったりしたとしても、父のことなんて俺は一生許すわけがない、そう決めたのだから。そうやって思うほど父への憤りが増すばかりである。
俺は何か別のことを考えようとあたりを見渡す。
するとちょうどいいものがあった。
俺はそれを取ると表紙を広げ、懐かしいにおいを感じながら読み始めた。
久しぶりに読んでみるとこんな本だっけ、と思うことが多々ある。
だが、この本はそうではなかった。三分の二ぐらいまで読んだが、一言一句俺が知っている物語だった。しかし、そこに描かれている彼女と、夢の中での彼女をリンクさせることができない。
決定的な何かが違う。
でも、それが何なのか分からない。
それにさっきの彼女は、今までには見たことのないまるで別人になったかのようだった。
でも、それはどうしてなのか分からない。考えれば考えるほど時間だけが過ぎていった。気づけば昼も過ぎ、空は赤くなりつつある。
しかし答えはふと思いつくものである。特に何も考えていない時、まるで空から落ちてきたかのごとくひらめく。
今もそうだ。俺は「決定的な何か」が分かったわけではない。
だが、もしそうだと考えると納得がいく、そんな仮定がひらめいた。そして、俺はそれを確かめるべくベッドに横たわった。
——————
震えが落ち着いたとき、私は彼女の部屋で横たわっていた。すぐ横には彼が座っている。というか固まっている。まるでメデューサを見たかのように。そして彼の顔は目と口が開いたままであり、その表情はどこか慌てふためているように見える。
そういえばさっきの震えは、結局しびれが原因だった。
私はこっちの世界でもしびれるんだ。悠長にそんなことも思った。
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