128.ゴーレム大山脈

 それは、魔力電子機械文明と言っていいだろう。創世期時代に、魔人国とドワーフの共同研究の成果である旧ゴーレム達が、魔の大暴走事故以降、高山地域に取り残され、そこで独自に生き延びて進化したものだ。


 その大本となる機構は、実はイサナミア神が持ち込んだ、とある惑星でのシリコンベースの機械文明体なのだ。そして、元の機構の脳に相当する場所が電気を使う。地球の電子機器、コンピューターに近い。



「初めまして。ゴレム族で機械化人科学者のギルバート・プラーエと申します」


 彼の見た目は、淡いブルーだ。体全体の皮膚が青い。そして、つるつるしたプラスティックの様にも見える。なんとなく、ロボットっぽくともいえる。彼らは自分たちの事をゴレム族と呼ぶ。


 姿形は人族と変わりない。それでいて、表情はなく、仮面を被っているような感じで少し不気味な感じだ。ただ、話し言葉はきちんとイントネーションがあるのが救いだ。


 ちなみに、身長は3メートル近くあり、体格も大きい。


 服装は人族と変わらない。恐らくマギウェストとの交流の結果であろうと思われる服飾デザインだ。もちろんサイズは巨大だが。


「どうも。シロウといいます。それで、問題のエネルギー源というのは?」


「ああ、ご案内しましょう」


 史郎達は、山の中腹にある洞穴のようなものの中を進み、大きな部屋のような場所に着いた。


 部屋の中央には、以前史郎が修理した、王都にあるマナ魔力変換の装置のようなものが置かれている。ただし、大きさが倍以上ある。そして、何やら別の装置がそこに接続されており、その横には、睡眠ポッドのようなものがずらりと並んでいる。


「これは、魔力電気相互変換装置といって、マナから魔力、さらに、電気へ変換する装置です。そして、われわれは、このポッドの中で充電するのです」


「充電……。あなた方は、電気で動いているんですか?」と史郎。


「脳に相当する部分はそうですね。体は魔力で動きます」とギルバート。


「我が種族は、遥か昔にこの地に降りた、シリコンベース機械文明の末裔とも言うべき存在です。この星の有機生物での脳に相当する部分が、シリコンでできていて、電気で動きます。通常は、このポッドで充電すると、約三ヵ月は大丈夫なのですが……」


 ギルバートは少し悲壮そうな表情をした、と史郎は感じた。

 実際に表情が動いたかどうかは、史郎には分からなかったが、史郎にはなぜかそう感じたのであった。


「少し前に、この装置が故障したのか、電気が発生しなくなったのです。そして、この装置はアーティファクト。古代から延々と引き継がれてきたものなのです。およそ2000年近くは経っています。なので、残念ながら我々にはこの装置を修理する技術を持ち合わせていません。そして、ここに表示されているとおり、残りの容量も後わずかです」


「2000年も前ですか? それは、すごいですね」と史郎は驚愕した。


 そして、装置を調べた。


「ああ、なるほど。この中にある、この部分、これは単純に魔力電気変換素子ですね。長年の変換で摩耗? と、言っていいのかわからないですが、その素子が消費されてしまって、消滅したようですね」

 と、史郎は言った。


「では、その素子はどうやって手に入れれば?」とギルバート。


「えっと、ちょっと待ってください」

「史郎、これは、【神魔力物理変換】による【素粒子制御】ですね」

「ああ、これって……なんで素子が消滅したんだ?」


「わかりません。ですが、この装置は確かにかなり古いですね。そして、安全装置が組み込まれていません。おそらくですが、最近のマナの不安定で、想定以上のマナの流入、そして、魔力発生で過負荷がかかったのではないかと」


「ああ、なるほど。それはありうるな。おそらく勇者召喚のせいだな。しかし、この分だと、ほかの場所の似たような装置にも影響を与えている可能性があるな……」と史郎は思案した。


「じゃあ、作り直すか」と史郎は言い、まず、手持ちの魔結晶を取り出した。

 そして、いつもの結界球を発生させて、ミスリルの円盤を作り出す。そこへエクリルで魔力電気変換の魔法陣を書き込んだ。

 それを魔結晶に接続し、さらにマナ魔力変換装置と接続。

 付加魔術で精霊をインストールし、もともとの、素子のあった部分を、この新しい装置で置き換えた。


「これでよし。起動しましょう」と史郎が言うと、マナ魔力変換装置、蓄電池との間のスイッチを入れる。


 すると、魔力電気変換装置が淡く光、蓄電池に充電が始まった。


「おー、素晴らしい。これで、われわれは救われました」とギルバートが喜んだ。無表情だが。


「治ってよかったです。今までの素子の代わりに、魔術による電気発生に置き替えました。なので、今後素子の消耗による故障は起きないと思います。素材も金属なので、半永久に動きますよ。もし、今後、何かあったら知らせてください。というか、連邦へ参加はどうですか?」


 と、史郎はまるでサークルへ勧誘するような軽いノリで言った。


「シロウ、詳細は私が説明しておこう」とソフィアが苦笑しながら言うのであった。


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