127.マギスティア王国2

 史郎達は、この街、マギウェストにある大図書館に来ている。定期的な瘴気の大発生と、ウイルス開発の記録を探すためだ。


「シロウ、この資料見て」とシェスティアが一冊の本を持ってきた。


「なになに、微生物への魔法陣の記述について? え?」


「先輩、こんなのを見つけましたよ」と琴音も二冊の本を持ってきた。


「……マイクロ魔法陣の可能性? こっちは、ウイルス学? ……君たち、資料を探すのがうまいね。もう、君たちだけで探せばいいような気がしてきたよ」と史郎は言った。史郎もずっと本を探しているのだが、なかなか見つからないのだ。


「わたし、本を探すの得意。だてにコア数、高くない」とシェスティアは得意げだ。

 シェスティアは、ぱっと本棚を見て、書籍名を一挙に認識し、内容を推察できるのだ。


「わたしも、本が好きだから、探すのが得意ですよー」と琴音。


 琴音もコア数が高い。なので、シェスティアと同じようにできる。実はそのやり方はシェスティアから教えてもらったのだが。


「……ああ、君たちはすごいよ……」

 と、少し嫉妬する史郎であった。



「二人が見つけた資料によると、大事故以前に、微生物、いや、ウイルスと魔術の融合の研究がなされていたようだな。当時はまだ実験段階だったみたいだが、結局どうなったかは記されていない。だが、恐らくある程度はうまくいったんだろう。それが、大爆発で失われた。そして、ウイルス自体は、恐らく消失せずに、爆発で拡散、徐々に増え続けたんだろう」

 と、史郎は考えを言った。


「じゃあ、それは昔の魔人族が作り出した技術?」とシェスティアが聞く。


「いや、それなんだが、この資料に実験版の魔法陣が載っているんだが、どうも、一部が勇者召喚の魔法陣に似ているんだよな。こういうのは記述した人物の癖が出るからな」


「勇者召喚? 全然関係ないですよね? それに、この本は何百年も前の物だし」と琴音。


「ああ、だが、もし、これが勇者召喚の魔法陣を書いた人と同じ人物が書いた、もしくはベースが同じだとしたら……」


 史郎はそう言うと、少し嫌な予感がするのであった。



     ◇



「ゴーレムですか?」と史郎。

 史郎達は、国王フィリスに呼び出されて、執務室に集まった。


「ああ。この国の北には、高い山脈が連なっているのだが、その北部に、さらに高い山々が連なる地域がある。そこに、ゴーレム達が住んでいるのだ」


「ゴーレムと言うと……。あれ? 今まで一度も見ていないな?」


「史郎、この世界には、いわゆるファンタジー物の小説によく出てくる石のゴーレムはいませんね」


「え、そうなの? なんでだ?」


「さあ。分かりません」


「……まあ、それが、その高山地域に集落があるんだ」とフィリス。そして、


「昔に何度か遭遇したことがあってな、以来、細々と交流がある。北部山脈は鉱脈が豊富で一大鉱山地帯になっているからな。彼らゴーレム達は、実は採掘での最大戦力なのだ。なにせ力が強くてな」


「なるほど。この街の近代化工業の源の一部はそこですか」と史郎。


「まあ、そうだな。でだ、最近そのゴーレム達から助けを求められているのだ」


「助け?」


「ああ、なんでも、彼らのエネルギー源が枯渇しかけているらしい。ちなみに、それは『でんき』と言うらしい」


「電気? え、ゴーレムって、ロボット?」と史郎は驚く。


「『ろぼっと』というのが何かは知らないが、我が国の技術ではとても対応できないのだ。なので、シロウ殿に一度見に行ってもらえないかと思ってな」


「はあ、わかりました。俺もそのゴーレムと電気の関係には興味があります。一度訪れてみましょう」


 史郎はその依頼を受け入れるのであった。

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