87.精霊魔術
王城に帰ってきた史郎は、至急緊急の会議の開催を要請した。
会議に集まった面々に、史郎は淡々と報告した。
― 魔獣が集まっている主な場所は、王都の北東領域。魔獣は全域に広がっている。
― いまは、各所に分散しているが、なぜか、だんだんまとまって王都方面に向かっている。
― 見つかった主な魔獣は以下のとおり。
― ワイバーン:5体
― ジャイアント・マンモス:3体
― ジャイアント・ボア・メイジ:約30体
― マッドボア:約300体
― フォレストボア:約300体
― プレーリーウルフ:約1000体
― フォレストウルフ:約1000体
― ジャイアント・ヘッジホッグ:約100体
― ライトニング・キャット:約100体
― ギガント・タートル:1体
「なんだと! ギガント・タートル?」
「ワイバーンに、ジャイアント・マンモスまで」
報告を聞いた皆は、全員顔面蒼白という状態だ。普通では都市が壊滅するような内容なのだ。
史郎は、王都北東方面の領域の全面封鎖、関連する街道封鎖、そして、迷宮の封鎖を要請した。
そして、騎士団300名の機動、魔術師団50名、冒険者ギルドによる、ランクC以上の冒険者の強制依頼発動が、満場一致で決まった。
「時間的には、あと三日は大丈夫でしょう。なので、落ち着いて行動してください。しかし、油断もできません。冷静に急いで準備しましょう」
史郎は皆に冷静に対処するように促した。
決戦の場は、王都北東方面、わずか2カルメテル当たりの平原になった。魔獣の動きの方向で、ある程度の大きさの平原がそこしかなかったからである。
◇
「史郎、そういえば、外部実行型上級精霊ですが、作ることができました」
決戦の準備をしている最中、ミトカは突然史郎に告げた。
「え⁉ 突然? 今?」と史郎は驚いた。
「いえ、前からある程度できていたのですが、今回の戦闘に役立つように何とか間に合わせました」
「それは助かる。じゃあ、追加の魔術の同時発動が頼めるということか?」
「はい、そうですね。さらに、魔力は独自でマナから変換して充填します。なので、史郎の魔力を消費しないので、戦闘時間への影響も少ないかと」
「え、それはすごいな。というか、精霊魔術ってそうなの?」
「いえいえ、普通の上級精霊はそんなことできません。これは特殊体ですね。私と史郎の魂を削って作りました」
「え⁉ そんな方法? いや、そんなことができるのか……? まあ、いいか、ミトカに任せたんだから、それでいいよ、信頼してるし」
ミトカはなぜか少し顔を赤くして言う。
「いえ、冗談です。まあ、比喩です。私と史郎のコア数の一部を上級精霊の管理用に回しています。さらに、史郎の魂のリンクを限定的ながら使うことによって、上級精霊の能力が上がったため、普通の上級精霊以上の事が可能なんです」とミトカは説明した。
精霊魔術は、プログラムを精霊に渡すことによる、分散同時実行だ。
上級精霊は12体の中級精霊を使役できる。中級精霊は12体の下級精霊を使役できる。なので、単純計算で理論上12×12で144の同時発動が可能だ。
「さらに、3体作りました。なので、合計432同時発動です。ちなみに、外部上級精霊なので、ホーミングで使わない時はいわゆる式神としても使えます」
「それは面白そうだな」と史郎は答えた。
「そして、私は精霊王として12体の上級精霊を使役可能です。なので、1728の同時発動が可能です。二人併せて合計2160同時発動ですね」とミトカがニヤリとほほ笑みながら言った。
ほほ笑みは可愛いけれど、言っている内容は怖いなと内心思う史郎だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます