63.冒険者ギルド2
「ほー、こんなに白く光り輝くのを見るのは初めてだな。しかも、青白い?」とグレッグは驚きの声で話す。
「グレッグさん、お久しぶりです」珍しくアルバートが話し始める。
「おお、よう、アルバート。元気そうだな」
「はい。おかげさまで。で、その二人なんですが、内密にお願いしますが、女神フィルミア様の使徒なんです。ソフィア様も神殿長のエドワード様も確認しています」とアルバートが説明した。
「「使徒⁉」」とグレッグとカレンが驚いた。
「そうよ。だから、協力をお願いね? その二人は私たちより強いわ。だから、ギルドの試験はパスということでいいかしら?」
と、アリアが説明を引き継いだ。
「そうか……。ランクAのお前たちがそう言うのなら、まあいいか。じゃあ、ギルドマスター権限で、二人とも中堅ランクDスタートかな? 護衛の依頼をこなしたら、ランクCに上げてやろう」
と、グレッグが言うと、
「ああ、その事なんだけど、先日商人のナガトさんの護衛を終えたわ。街道で魔獣に襲われているところを助けて、そのまま護衛を引き受けて街まで戻ってきたのよ。依頼票、来てない?」とアリアが聞く。
「あー、昨日ナガトさんが来てましたね。書類を取ってきます」とカレンが言い、書類をとってくると、グレッグに渡した。
「……なるほど。ジャイアントボアの集団を殲滅。街まで護衛か。じゃあ、二人ともランクCで始めるといい。登録早々ランクCなんてかなり珍しいぞ?」
と、グレッグは頭をかきながら答えた。
「まだある」と今度はシェスティアが話し出した。
「ん? なんだ? シェスティア嬢」とグレッグが聞いた。
「史郎達は、魔獣の死骸を大量に持ってる。ギルドに卸したい。それで、貢献値が得られるはず」とシェスティア。
「は? 魔獣の死骸か? まあ、じゃあ、解体設備に行こう」
と、一同はギルド裏の解体小屋までいく。
「ここに出してみてくれ」とグレッグ。解体小屋にいた専門家の職員たちは、ギルドマスター自ら来ていることと、あの「漆黒の氷風」がいることをみて、何事かと集まってきた。
「わかった」と史郎がいうと、これまで狩ってきた魔獣の死骸をどんどんと出す。
「「な!」」
グレッグとカレン、職員たちは息をのんだ。
床に出された死骸は、明らかに通常の物ではない。
「これは、ジャイアント・ヘッジホッグか⁉ ジャイアント・ブラック・フォレスト・ボアまで? ダーク・フォレスト・ウルフ、ダーク・グレイ・ウルフがこんなに大量に⁉ それに、これはジャイアント・ブラウン・フォレスト・ベアか?」
職員たちは狂喜した。たとえこの街が魔の大樹海に近いといっても、こんな素材、めったに扱えないからだ。
「はあ、わかった。お前たちの実力は認めるよ。こんなものを見せられたら、認めないわけにはいかないな。ランクB……、いや、これだけの素材だ、貢献値は莫大だな……。アリアたちと同じ、ランクAと認めよう」
と、グレッグはあきれたような驚いたような顔をし、ため息をつきながら言った。そして、
「ソトハイムの冒険者ギルドへようこそ。せいぜい活躍してくれ。これからもよろしく頼むぞ」
と、グレッグは、史郎とミトカと握手をするのであった。
その後、カレンが手続きをして、無事ギルドに登録、ギルドカードを受け取るのであった。
「そのギルドカードに魔力を込めてください。そうすると自分専用のカードとして登録されます」とカレンが言い、史郎とミトカはそうする。
ちなみにミトカの魔力は史郎の魔力なので、どちらのカードも両者が使えるのだが、それは黙っておくことにする史郎達だった。
「で、ギルドの説明っているのかしら?」とカレンが聞いた。
「ああ、頼む」と史郎は答えた。
「じゃあ……」とカレンは説明を始めた。
冒険者ギルドにかかわらず、この世界では、ギルド共通ルールというものがある。
複数のギルド、冒険者、魔術士、商人、等々と言ったギルド全体の共通ルールだ。
「ギルド」というものは、国家から独立した組織で、ギルドメンバーになると国家をまたいで、ギルドがある程度サポートと保護をしてくれるという利点がある。ただし、ギルドが、加入者の最低限の条件、知識や能力を持っているかの確認がなされる。なければ当然加入できない。
滞在する国家の法律は守る必要があるし、ギルドのルール、つまり、行動規範を守らなくてはならない。この「ギルドの行動規範を守る」というのが重要だ。なお、共通ルールに加えて、ギルド特有ルールがあり、それはギルドごとに異なる。冒険者ギルドには、冒険者ギルドのルールがあるのだ。
ギルドのメンバーになるということは。ギルドのルールに従うという誓約をしたとみなされる。
― ギルドメンバー同士での争いはしない。互助の精神を大事にすること。
― ギルド内での迷惑行為は禁止。
― 冒険活動中に気づいたことなどの報告義務。
― 依頼受け付け・達成の義務。
― ランクはGが仮登録、F~A、そして最高ランクがS。受注できる依頼はランクやクラスの条件がある。C以上は指名依頼もある。
― ランク上げは、依頼ごとに定められたギルド貢献値、および討伐魔獣のランク、納品した素材の価値の累計で複合的に決まり、ポイントが計算される。ポイントに応じて、ランク上げのテストの資格が得られる。
― 依頼は同じランクか、上下一つのランクのみ。
― 依頼の途中キャンセルは違約金が発生する。
― 達成期限に気をつけること。
― パーティーでの依頼受け付けは、パーティー内での最高ランクのメンバーに合わせたランクの依頼の受付が可能。
― 依頼受け付けの種類は、常時依頼、通常依頼、指名依頼。
― 指名依頼はランクC以上で、断ることは可能。
― 強制依頼は、緊急事態などでの強制招集で、ランクC以上は断ることはできない。
― 依頼失敗や指名依頼、強制依頼に従わない、違約金を払わずに逃亡した場合は減点。減点が続くとランクダウンや追放、指名手配になる。
などなど、
「まあ、そのほか、細かいことや詳しいことはアリアたちに聞いてください」とカレンは締めくくった。
その後、史郎とミトカが、シェスティア、アリア、そして、アルバートのパーティーである「漆黒の氷風」に加入する手続きを終え、ギルドでの必要な手続きはすべて終えたのであった。
ちなみに、「漆黒の氷風」のパーティーリーダーは、アリアだ。対人折衝、交渉、コミュニケーション、戦闘の実力的に、彼女はすべてをこなし、リーダーとしていちばん適しているのだ。
史郎はギルドカードを確認した。
ギルド証明書
名前: シロウ・カミカワ
パーティー: 漆黒の氷風
冒険者ギルドランク: A
賞罰: なし
「あのー、それで、魔獣の素材の買い取り分の支払いは、評価が終わり次第渡すことでいいかしら?」とカレンが聞いてきたので、史郎は
「ああ、それでいい。次回にもらうよ」
と、史郎は答えるのであった。
◇
「ところで、最近魔獣が増えているって聞いたけど?」とアリアが聞く。
「ああ、そうだな。増えているというか、激増って感じだな。特に魔の大樹海から増えている。まだ対処できる範囲だが、何が起こっているか調査中だ」とグレッグが答えた。
「あと、街道近くでのジャイアント・ボアの集団が目撃が増えているわ。ナガトさんたちの商隊が襲われたのもジャイアント・ボアの集団だし、もしかしたらジャイアント・ボアの集落ができているかもとギルドとして考えているところよ」とカレンが説明する。
「そうだな、お前たちも帰ってきたことだし、調査と、できれば討伐の依頼を受けてもらえると助かるんだが?」とグレッグが史郎達に聞いた。
「そうね……とりあえず、依頼票を作ってよ。それからみんなで相談して決めるわ」とアリアは返すのであった。
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