62.冒険者ギルド1
とりあえずは今後の事を考えて身分証がいるということで、史郎とミトカは冒険者登録することにした。
シェスティア達に連れられて、冒険者ギルドに行く。
冒険者ギルドの建物は街の北の門に近い場所にある。ほとんどの冒険者は魔の大樹海に近いあたりの森で依頼をこなすので、そこに向いている門に程近い場所に、ギルドが建てられているのだ。
冒険者ギルドは3階建ての石の立派な建物で、いざという時に立て籠もれるのではというくらいしっかりした造りになっている。
ギルドの扉を開けて中に入る。
中は正面右側に受付カウンターがあり、さらに右の壁面には掲示板。正面に階段があり、上階へ行けるようだ。左は酒場と食事処になっており、冒険者たちが食事をしている。
――これはまた、本でよく読む、典型的な冒険者ギルドの風景だな
と史郎は感じた。
「アリア! 戻ってきたのね!」
受付の方へ向かうと、その中の一人の受付嬢がこちらに向かって声をかけてきた。
「ああ、カレン、ええ、昨日戻ってきたわ。久しぶりね」とアリア。
二人は久しぶりの再会で、ひとしきり話をした後、カレンが聞いてくる。
「で、そちらの見慣れない方々は?」
「ああ、シロウとミトカよ。今日は登録に来たわ」とアリア。
「シロウです。よろしくお願いします」
「ミトカです。よろしくお願いします」
なお、ミトカはメイド服ではなく、戦闘服だ。余計な騒動を起こしたくないので、史郎がミトカにお願いした。
「えぇ、よろしく……」と、カレンは二人から丁寧なあいさつをされ、少し戸惑って、返事をした。ほとんどの冒険者は、そんな丁寧に話さないのだ。
「シロウとミトカは、私たちのパーティーに入るから、手続きよろしく」
と、シェスティアが言うと、カレンも、周りで様子をうかがっていた冒険者たちも息をのむ。
「あの、漆黒の氷風に新しいメンバーだと⁉」
アリア、アルバート、シェスティアはランクAパーティー「漆黒の氷風」の冒険者で有名だ。
彼らの師匠は、あの賢者ソフィア。そして彼らは強い。もうすぐランクSになるのではとうわさされているくらいだ。今までずっと三人で活動してきたのだ。ここへきてメンバーの追加に驚いたのだ。
なお、「漆黒の氷風」の名前は、彼らの基本の服装が黒く、そして、シェスティアの氷、アリアの風、の同時殲滅攻撃が有名だからだ。
「えっと、分かったわ。お二人はこの申請書に記入お願いね」と言って、カレンは史郎とミトカに紙を渡す。
「魔術と武術のテストがあるんだけど、今から受ける?」とカレンが聞く。
「はい、お願いします」と史郎とミトカが答えた。
「あー、カレン、悪いけどこの後の手続きは別室でお願い」とアリアが言った。
「え、別室? まぁ、あなたがそう言うのならいいけど……」カレンはいぶかしながらも、了承し、全員で会議室のような場所へ移動した。
ではまず魔力量の測定をお願いしますと、カレンは言い、直径20センチメートルほどの水晶を持ってきた。
『史郎、あれは最大魔力量の概算を計る魔導具ですね……』とミトカが念話で史郎に話しかけた。
(何か都合が悪いか?)と史郎は答えた。ミトカの表情が冴えない。
『いえ、ただ、最大魔力量に応じて光る強さが変わるので、シロウと私の場合、光が強すぎる可能性があるので、警告したほうがいいかと』
(なるほど。ちなみにミトカの場合はどうなるんだ?)
『史郎の値が反映されますね』とミトカ。
史郎はミトカのアドバイスを受け、
「ひとこと言っておくが、それ、かなり強く光る可能性があるから、みんなちょっと直接見ないように気をつけてくれ」と言った。
「え? この魔導具はそんなに光るもんじゃないんだけど……」とカレン。
史郎は、ほほ笑みながら、「あー、まあ、とにかく、みんなくれぐれも直接見ないで」と言いながら、手を水晶に触れて魔力を流す。
そのとたん、水晶は光り輝き、部屋が白い光であふれ出した。
「え⁉」
一応史郎の警告で、みんなは目をそらしていたのだが、それでもあまりの眩しさに、思わず目を瞑る。
史郎は、慌てて手を引っ込める。すると、光は収まった。
「えっと、これでいいのかな?」
「……」カレンもアリアたちも、あまりにもの事に無言だ。
「カレンさん?」と史郎。
「はっ! あ、えぇ、それでいいです……。いえ、ちょっとギルドマスターを呼んできます! 待っててください!」といって、カレンは急いで部屋を出ていった。
しばらくすると、カレンが屈強な男を連れて戻ってきた。
「やあ、何があったんだ?」と入ってくるなり質問した。
「彼は、ここのギルドマスターで、グレッグよ。元ランクS冒険者ね」とアリアが史郎に小声で教えた。
カレンは、起こったことを説明した。すると、もう一度水晶に触ってくれというので、史郎は同じことを繰り返した。さらに、今回はミトカも同じことをする。
ついでにと、武術の潜在能力の判定に使われる水晶も同じように触る。そして、同じように光り輝くのであった。
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