34.狩り2・魔力糸

「さて、今日は殲滅系魔術を試しに行こう」と朝から元気のいい史郎。


 ミトカの作るおいしい朝食を食べた後、ダーク・フォレスト・ウルフの群れがいると思われる場所まで行くことにした。


「史郎、殲滅系を試すのはいいですが、まずは討伐してしまわずに当てるだけにしましょう。手加減ができることを確認した後で討伐するようにすれば、訓練にもなります」


「ああ、なるほど、それはいいアイデアだ」

 と、史郎は答えた。そして、続けた。


「それだと、そうだな……。まずは電気ショック系で行くか? ホーミング・ライトニング・ショックだな。威力は弱めで」


 史郎は探査魔術でダーク・フォレスト・ウルフを見つけると、その場所まで気力纏と魔術纏で強化し走っていく。


 ダーク・フォレスト・ウルフは一体あたりレベル30ある。個体の強さがそれなりで、さらに30体ほどの群れでいるのだ。


 史郎はある程度まで近づくと、隠密と透明化で姿を隠す。そして、少し前に習得した【障壁】を大地を起点に足元に展開し、それを足場に空中に上っていく。


 大地を起点で発動すると、障壁は大地に相対的に固定される。ちなみに通常の障壁は自身が起点で、その場合は障壁を自由に動かすことができる。盾のように使えるのだ。


 足元に正確に展開し、使った後は即効で魔術発動を停止することにより、効率的に空中に階段を作る感覚で空中に昇っていくことができるのだ。


 ちなみにそれが可能なのも、手順を登録してすぐに発動できるからだが。


 史郎は空中に停止すると、殲滅魔術を発動する。


「ターゲット目視、【ロックオン】。自動発動停止付き攻撃オプション。【マルチ・ホーミング・ライトニング・ショック】」


 史郎がそう叫んだとたん、魔術が発動された。


 地上にいる30体の魔獣に向かっていっせいに光の矢が飛んで行き、光の矢はウルフを追っかける。そして、ヒットするとすべてのウルフは痺れでその場に倒れ伏した。


「おー、よし! うまくいったな!」

 と史郎が声を上げると、


「史郎、イメージどおりですね。さすがです。ターゲットは麻痺で動けなくなっていますね」

 と、ミトカが褒めてくれた。


「あ、いいこと思いついた!」

 と、史郎が突然大声を上げた。


「何ですか、突然?」

 と、ミトカがいぶかし気に聞いてきた。


「いや、魔力の糸を付けた銛をイメージでターゲットに何かを撃ち込み、その魔力の糸を辿って自動的にインベントリに格納ってどう?」


 今までは対象に触れないといけなかったのが不便だったのが、もしかして魔力の糸経由で触れる代わりになるのではと、ホーミングの魔術を使ってみて史郎は思いついたのだった。


「……たしかに可能ですね。魔力の糸の操作がうまくいけばという前提なのですが、史郎の魔力操作のレベルを鑑みれば可能かと」

 と、ミトカは結論付けた。


「よし、その方法で試してみよう」


 史郎はそういうと、

「ターゲット目視、【ロックオン】。自動発動停止付き攻撃オプション。魔力糸付きオプション。【マルチ・ライトニング・ニードル】」

 と言いながら、魔力の糸がくっついたライトニング・ニードルを、散らばっている麻痺したダーク・フォレスト・ウルフに対して放ち、対象が死んだところでそのままインベントリに収納するのであった。


「おー、意外とうまくいったな」

 と、史郎はどや顔でミトカに笑みを向けた。


「……さすが史郎。予想外の方法でしたが、お見事です」

 と、ミトカは感心するのであった。




 その後、史郎はほかの魔獣でも試した。


 ブラッディ・ファング・バット、レベル15。個々の個体は強くない。しかし、100匹単位で襲ってくることに加え、飛び方がランダムで素早い。なので、通常相手にするのにはキツイものがある。


 この魔獣に対しても、史郎は「ターゲット目視、【ロックオン】。自動発動停止付き攻撃オプション。【マルチ・ライトニング・ニードル】」で数十匹単位で、あっという間にすべてを討伐できたのであった。

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