25.採掘
「よし、今日はトレーニングを兼ねて周辺の探索をしよう! それに、できれば鉱物も見つけて鍛冶・錬金も試してみたいからな。武器がいるし!」
朝からテンションが高い史郎。昨日と同じくミトカが用意してくれた朝食を食べ終わった後、今日の予定をミトカに伝えた。
「この聖域の北東部に鉱山があるはずです。一部は聖域の外側になりますが」とミトカが説明した。
「わかった。よし、気術も得られたことだし、今日は身体強化を使って走っていこう」と史郎は意気込むのであった。
この聖域の北東方面は高台になっており、川はその上から流れてきているので、滝がある。その滝の北側が巨大な岩山になっており、そこが鉱山だ。
神殿からは、いったん北に向かい、川を超え、森を抜けてから東に向かうと崖に面することになる。
「じゃあ、探査を使ってここから鉱脈を探そうか」
【探査】のスキルは、範囲を絞ると精度が上がるので、それを試すことにした。
「史郎、女神様からもらっている情報によると、この鉱山はかなりいろいろ寄せ集めてあるようですね」
「寄せ集め? 鉱山をか?」
「はい、まあ、探査してみればわかると思いますが」
史郎は【探査】スキルを発動した。岩山方面に絞り、金属鉱物でフィルターすると、探知された鉱石は、赤鉄鉱、磁鉄鉱、自然銀、自然金、黄銅鉱、ニッケル鉱、軟マンガン鉱、タングステン鉱、閃亜鉛鉱、
「…………」
「…………」
二人ともあまりにも都合よく見つかる鉱脈にあきれて声が詰まった。
「えっと、なんだ? この節操のない鉱脈は⁉」と史郎は驚いた。
「これは、予想以上の寄せ集めですね……。世界中から鉱脈をここに持ってきた(?)のでしょうか?」とミトカが推察した。
「そうとしか考えられない豊富さ、いや、異常さ、だな……。まあ、有り難いといえば、有り難いが……世界に干渉できないはずじゃなかったっけ?」
「そうですね。いえ、世界の構造には干渉できると聞いてます。自然の地形や鉱脈は干渉できる範囲なんでしょう……」とミトカはあきれた声を出すのであった。
「あれ? そういえばファンタジーと言えば定番のミスリルとかがない?」と史郎が気が付いて、聞いた。
「史郎、ミスリルはいわゆる魔鉱と呼ばれるものですね。魔鉱は銀や金などが濃いマナにさらされて、エンティティ化したものです。もっと地下深くを探索しないといけないですね」とミトカが説明する。
「この聖域は龍脈の出口でもあります。なので、マナ流の位置から推察するに、この鉱脈の下300メートル程下がれば見つかりそうですね」とミトカが説明した。
史郎は下に向けて探査スキルを使う。魔鉱でフィルターすると……
ミスリル、エクリル、ヒヒイロカネ、アダマンタイト、オリハルコン、クリスタル、ダマスカス鋼……
と、同じく無節操に存在が確認された。
「……まあ、あるなら頑張って採掘しよう」と史郎。
「……そうですね。もっとも、量的にはそれほど多くないみたいなので、やはり用意してくれていたといっても過言ではないかもしれません」とミトカは言った。
まあ、とにかく、そこにあるのだから有り難くいただこうと、史郎は採掘を開始することにした。
「採掘って、スキルあるんだっけ?」
「ありますが、まずは坑道を掘らないとだめですね」
「ああ、そうか。じゃあ、地魔術で穴を掘って、それで……、いや、待てよ。こんなに豊富なんだったら、いっそのこと、錬成で切り出してはインベントリに入れて、分解すればいいんじゃないか?」
「……そうですね。可能です」
史郎はまず探知で見つけた鉱脈がある方面の崖の面まで移動した。まずは1メートル立方程の立体を切り出すイメージで、【錬成】を発動して、その立体を周りから切断する。
そして、そのまま、その立体をインベントリに入れる。単なる「鉱石」と認識されているようだ。
そして、インベントリ内で、その鉱石を元素に応じて分離すると……。
――『【インベントリ::物質分解】レベル1 を取得しました』
「おー、できるじゃないか!」
インベントリを確認すると、きちんと、ケイ素、鉄、酸素、窒素、アルミニウム、硫黄、亜鉛、錫、炭素……と元素に分解されて保存されていることが分かった。
「こりゃ便利だな! こんなことができるなんて、地球の化学者は皆狂喜、いや、発狂しそうだな……。量子物理はどこに行ったんだとか。あれ? ところで、これ、酸素なんてどうやってインベントリ内で保存するんだったっけ……?」
「ふふ。史郎の設計では抜けていますね。この世界の実装では、任意の圧縮、または、液体状態でエンティティ化されています」
「ほう。ということは、空気なんかを切り出してインベントリに入れて物質分解すれば、液体窒素が得られると?」
「……そういうことになります」
「それは使えるな」
と、使い道が何かわからないがうれしそうにする史郎であった。
その後、史郎は探知を使って岩山を掘っていった。1メートル立方単位で、横1メートル、高さ2メートルほどの坑道を切り出すように進めていき、崩れないように壁を固定しながらどんどん採掘(?)する。壁は錬成で圧縮して硬化するイメージで固定していった。
これは、昔流行った某ゲームみたいだなぁー、などと考えながら、史郎は直線距離で200メートル程途行き、横に数メートルずれて戻ってきて、さらに、数メートルスロープ状にカットし下降、を繰り返し、地下400メートルまで採掘。
時折探査スキルで鉱物や魔鉱の位置を確認し、それなりの量を採掘したところで、開始時点に戻ってきた。始めは物質分解しながら進んでいたのだが、途中からはインベントリに入れるだけにすることにした。
――鑑定で成分が分かるので、あとで分離すればいい。それに、別の方法も試したいし。と、史郎は考えを巡らせながらどんどん鉱脈を切り出すのであった。
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