26.武器作成
ひととおり採掘を終えると、簡単に昼食を食べていったん小屋まで戻ることにした。
小屋まで戻ってきた史郎は、さっそく武器を作ることにした。作るのは剣と槍と棒だ。
「うーん、どの方法で作ろうかな~」と史郎は悩む。
「そうですね、安易な方法は実体化で……いえ、その場合は採掘した意味ないですね……。
地球での方法に似たやり方だと、金属を分離して融解、それを固めた後鍛造ですね。
すべて魔術で簡単にというなら、分離した金属から合金を生成後、モデリングデータに基づき形成ですね。
ただ、形成したものと鍛造した場合の物で強度どのような差が出るのかは試してみる必要があります」
「そうだな、とりあえず合金を作って形成してみるか」
まずは、作業場となる結界を作ろうと史郎は考え、目の前に直径1メートルほどの球状に魔力を操作した。イメージとしては、内部の属性を操作できる結界。指定する属性としては無重力と真空。外部へは可視光のみ透過だ。
――『【結界球】レベル1 を取得しました』
「聞きなれないスキル名だな?」と史郎はうれしそうにつぶやいた。
そして、インベントリからその結界球内に素材を取り出した。
インベントリの物質分解を使って、元素ごとに、鉄8キロ、炭素0.1キロ、ニッケル0.8キロ、クロム1.8キロを計り取る。インベントリから素材を取り出すときは質量で指定できるので、こういう時は便利なのだ。
結界球内に素材が入ったところで、結界球内の温度を操作した。これは、分子運動操作で2000度以上へ。意外と集中が必要だなと思いつつ史郎は作業に集中した。
ちなみに、分子運動操作は物質の原子や分子そのものを熱振動させるイメージだ。間違ってもマイクロウェーブ照射ではない!
結界球が赤黄色に輝いてまるで太陽のようになった。ちなみに可視光のみ透過なので熱は感じられない。
さらに、結界内部を魔力を使って攪拌をイメージしたところで、
――『【サイコキネシス】レベル1 を取得しました』
のアナウンスが流れた。
「え⁉ ここで超能力?」
「史郎、魔力による直接的な物理への接触は無属性の特殊な魔術になります。ほんとうは無属性念動スキルだと思うんですが、なぜカタカナ版なのかは謎ですね……」
「そうなのか? だよね、命名がファンタジーっぽくないよね……」
「よし、そろそろ結界を解いて錬成と形成で形作りだな」
と、史郎が考えたところで、
「史郎、結界を解くと同時にサイコキネシスで支える準備、または重力制御が必要ですね。でないと地面に落ちますよ」とミトカが警告した。
「そうなのか? 危ないとこだった。結界球は自動的に空中に維持できるけど、それがないと物理法則に従うわけか?」
「そうですね」
「あれ? 重力制御は使えるんだっけ?」
「結界内の重力フラグと違って神術が必要です。史郎では今はまだ使えないですね」
「そうだよな。失敗したな。神術をまず練習しとくべきだったな。とりあえず今はサイコキネシスで支えるか」
史郎は結界を解いて、ステンレス球を支えようとした。
「うぉっと、重い! 念じるだけで触っていないのに重く感じるこの感覚が不思議だな。スキルレベルが足りないのかな?」
史郎はその感覚を楽しみながら、次のステップを思い出した
史郎は急いで【錬成】と【形成】を発動した。作るのは、まずは直径3センチ、長さ180センチほどの管で、それを2本。それらは槍と棒術用だ。先端はある程度鋭利な円錐で閉じる。
もう一つは刃渡り80センチ、刃の幅7センチ、ガード17センチ、持ち手20センチほどで、先端が三角形でとがっているシンプルな剣だ。
基本魔獣相手だから、対人用の槍や剣のように切れることは期待しない。魔力を
残った材料はインゴットとして保存しておこうと思い、すべてが冷えたのを確認してからゆっくりと地面に置いた。
「あー、しまった! ミスリルで作ればよかった!」と史郎はひととおり作り終わったところで叫んだ。
「こう、つい地球の常識で行動してしまうのが辛いな。まあいいや、今度はミスリルにトライだな」と史郎は同じ作業をミスリルで行い、ミスリルの棒と剣を作るのであった。
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