さくさくクッキー

買い物をしている途中にクッキーを見つけた

缶に入った、如何にもプレゼント用に見える

そのクッキーはファンシーで

星、三日月、太陽、ウサギ、そして花

五枚の花弁がまあるく切り取られ

真ん中にはジャムを押し込まれた

お菓子の缶詰

そんなに厚みのない、お手軽値段の小さな缶詰

小さい子は、じいっと見ながら手に取って

保護者に差し出して買ってもらえそうな

そう思える、幸せそうな箱だ

悪く言えば安っぽい缶、味はおそらくぱさぱさ美味しくもない

小さい頃は美味しそうに見えていたと思う

宝石箱のように扱い、一枚一枚大事に食べて

缶は宝物入れにして

大きくなったら、そのまま捨ててしまう

積み重ねと経験が走馬灯する

最後まで大事にできた子は幸せだ

大事にできなかった私も幸せだ

ほんのちょっと分かれ道が違っただけの

分岐点にある錆び付いた缶詰

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る