あらすじ

あらすじ-1

 ポケットの携帯で時間を確認。待ち合わせ時間の二十分前。なんだか落ち着かなくて駅前に向かえば、すでに彼が待っている。近づいていくと気がついて、私に向かって手を振ってくれる。

「真弥」

「ごめんなさい、待った?」

「いや、落ち着かなくて早く来ちゃっただけだから。っていうか、まだまだ待ち合わせより早いし」

 歩き始めるとフワリと漂う香水。差し出された手を握れば、小さく口角が上がる。私もなんだか恥ずかしくなって、隠すように顔を伏せた。

「今日映画見に行かない?無料券もらったんだよね」

「いいね、なんの映画?」

「今話題のドキュメンタリー」

「知ってる、こないだテレビで特集してた」

「それでいい?」

「いいよ。その後どうする?」

 今日の予定を話し合って、楽しくて笑う。心地よい時間。ほっと、胸を撫で下ろす。

 大切にしたい。私に触れる、暖かい指。大切に扱ってくれる人。ギュッと、握る手に力を込める。

 きっと、今までのことは悪い夢だった。大切な人に裏切られて、裏切って。だけど今、私にはこの人がいる。

「私行ってみたいケーキ屋さんあるんだけど、行ってみてもいい?」

「いいよ、どこの駅?」

「一つ先の……」

「今日予約してるレストランの近くかも」

「どこ予約したの」

「秘密」

 意地悪、と頬を膨らませば、手が頭に乗っかって髪をかき混ぜる。壊れ物を扱うような、優しい、暖かい手つき。大切にされていると伝わってくる。恥ずかしくなって腕を掴んで引き離せば、

「フレンチだし、真弥もきっと気にいるよ」

 慰めるように言われて、胸の奥がぎゅうとなる。

 大切にしなくちゃいけない。今度こそ。何があっても。

 なんだか想いが溢れてしまいそうになって、彼の名を呼ぶ。振り返った彼に一言、

「ずっと一緒にいようね」

 優しい笑顔が、返ってきた。






The beginning or the end cut. あらすじ





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