第3話 友情? 否、それはただの身代わりである

「お久しぶりでーす」

 また1か月の空白期間を経て、アルセーヌは公園に姿を見せた。


「やぁ、アルセーヌ。彼女はできたかい?」

 率直にユーリーは尋ねた。


「できましたけどー、の女性怖いでーす」


 何があったのか、アルセーヌはブランコを激しく漕ぎ始める。


「どうしたんだい?」

 気にも留めず、ユーリーは訊く。


「……」 

 が、隣の大和は若干怖くて怯えていた。


「実を言いますと、以前言っていたようにはできなかったでーす」


「あぁ、レイプから始まる恋?」

 そんなパワーワードをユーリーは平然と使う。


「ウィ。先客がいました。だからワタシ、ムカついてそいつを殴ったんです」

 

 それもまた王道であると、大和は内心で呟く。


「そしたら、襲われてた女性と仲良くなって、その日のウチにシュポインシュポインできました」

「それが怖いって言っていた彼女かい?」

「そうでーす。そのまま、彼女の家で暮らすようになったのですがー」


 なんだかんだ言って、アルセーヌは目的は果たしているようだった。


「少し前に結婚しよう言われました。怖いでーす。まだ付き合って1ヶ月も経っていないのに結婚? あり得ないでーす」

の女性怖ーい、とアルセーヌは頭を抱える。

「なんで、すぐ結婚しよう言いますか? わからないです。もっとお互いを知ってからじゃないと、ぜったい駄目になります。生まれてくるベベの為にも、ぜったいぜったい時間をかけないといけません」


 言っていることは正しいが、おまえが言うな感は半端なかった。


「現にワタシは3人の女性と付き合って、ちゃんと選ぼうと努力していました。なのに、みんなすぐに結婚しよう言います。の女性、怖いでーす」


「……それは浮気じゃ?」

 大和はツッコむも、


「彼女なら問題ないさ。結婚してたら、ダメだけどね」

 ユーリーが謎のフォローをする。


「そうか……」

 これが価値観の違いかと、大和は口を噤む。


「しかも、警察よりしつこく追いかけてきます。もうワタシ、駄目かもしれません」

 

 大和には縁のないことなので、何も言えなかった。


「アルセーヌ。一度、国に戻ったらどうだい? それか別の国へ行くのもいい」

 一方、ユーリーは助言をする。


 簡単に他国へ行けと言えるのもそうだが、


「そうですね。それも悪くないですね」

 

 検討するほうもまた凄いと大和は思う。

 県を移動することさえ億劫な自分には、とうてい無理な話だと。


「ユーリー、ヤマト。よかったら一緒に旅でませんか?」


「アルセーヌ。気持ちは嬉しいけど」

 それはできないと、ユーリーは断る。


「……ごめん」

 誰かに誘われるなんて初めてで嬉しかったけど、大和も首を振った。

「それにこの3人が一緒だと、目立ってしまう」


「ヤマトは今日も冴えてるね」

 ユーリーに褒められ、大和は小さく頭を下げる。


「そうですね。じゃぁお別れですね。この公園ともふたりとも」

 悲しそうにアルセーヌは漏らした。

「ふたりとのお喋り、とってもとっても楽しかったです」


「ボクもだよ、アルセーヌ」

「……おれも」


 出会ってから半年も経っていなかったけど、誰もが名残惜しく思っていた。


「ちょっと、お話よろしいですか?」


 そんなお別れに水を差したのは2人組の警察官。

 別にやましいことをしていたわけではないのに、大和はヤバいと目を伏せる。

 

 そして、アルセーヌとユーリーはにっこりと笑みを浮かべて――

「メルドっ!」

「ブリャーっ!」

 躊躇いなく、警察官を殴り飛ばした。


「ヤマト、あとはお願いします」

「ヤマト、あとは頼んだ」


「えっ?」


 そう言い捨てるなり、2人の外国人は公園から去って行った。

 残されたのは意識を朦朧とさせた警察官2人。


「キャ―――っ!」


 更には目撃者が悲鳴をあげ、大和は大勢の視線に晒される。


「……えっ?」


 違うんだぁっ! と叫んで逃げたい気分であったが、それができていれば虐められて引きこもりになんてなっていない。


「ははっ……」


 大和はかわいた笑みを浮かべ、自分の人生がまたしても終わったことを受け入れるのだった。

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