【お兄ちゃん日誌⑧】 次男・伏見朋

『直のやつが婚約したから若菜ちゃんのトコと両家顔合わせの食事会をする。潤も来るからお前も来い』


 上の兄からそんなメッセージが届いたのは1週間ほど前のことだ。


 まぁ正直、可愛くもなんともない弟のことはどうでも良い。その嫁さんである若菜ちゃんはあいつにはもったいないくらいの素敵な女性だが。そんな素敵な女性を良くもまぁ何年も待たせたものだ。若菜ちゃんも、あんな優柔不断野郎さっさと切ってしまえば良いものを。


 しかし、若菜ちゃんが良いというんだから、あいつにもまぁ多少の良いところはあるんだろう。仕方がないから若菜ちゃんのために祝儀ははずんでやる。


 さて、それはそうと、それよりも潤だ。

 ここ数週間会えていないから、さぞかし寂しがっていることだろう。潤の誕生日も近いしな、よしよし、お兄ちゃんが何でも買ってやる。潤も今年30だし。宝石のひとつでも欲しいところだろう。ダイヤでもプラチナでもどんとこいだ。


 有休も多めにとったことだし、久しぶりに潤とゆっくりドライブも良いなぁ。


 いやぁ、楽しみだ。


 あまりに楽しみすぎて浮かれまくり、スマホをトイレに落としてしまったが、何てことはない。潤とのやり取りはこまめにバックアップをとっているし、番号もアドレスも覚えている。


 ただ、昨日の夜に聞きそびれた潤からの留守電だけが心残りだ。

 俺としたことが酔いつぶれて寝てしまうなんて。


 おそらく到着時間とかその辺りだろう。とりあえず新しいのを買って、後で直接聞けば良いか。

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