《シミュラクラ》

-シミュラクラ


2脚歩行型自律支援兵器。人や物を表現または模写した物、似姿を意味するシミュラクムの複数形。意味合い的には「(人に)似通ったものたち」。

通常、脳神経直結方式あるいは機材で遠隔操作を行い運用される。

基本的に低コストで生産する為に武装、装備、部品に至るまでが完全に互換性を持つようになっており、すべての勢力において普及している。


特に火山地帯と森林地帯、山岳地帯においては有視界戦闘では有用とされている。

局地戦において優位位置につく機動性を持つシミュラクラは投入コストと展開性において、同程度の装甲車などとくらべてかなりコストパフォーマンスに優れる。


シミュラクラは局地戦においての消耗を前提として余剰出力を多くとっており、機体各部への不可の増大と引き換えに多種多様な装備を追加した機体が複数確認されている。

こうした例は非正規部隊のみならず、正規軍においても見られ、シミュラクラの互換性の高さを表している。

また、ニルドリッヒ共和国などおいては主に有人機として運用されており、これは無人機よりも高い戦闘能力を持つことが実証されている。





=脳神経直結方式


二種類が存在している。非接触型と接触型である。


非接触型はナノマシンを解して生態電流などを増幅しシミュラクラの制御システムに働きかけるものであり、戦時体制における爆発的な技術進歩によってその地位を確立した。

これにより外科手術の必要がなくなり、シミュラクラ・ドライバーとして徴用可能な兵士の数が格段に増加した。

軍用に始めて実用化したのはマリアネス連合であり、ナノマシンへの拒絶反応テストなども選定し、ドライバーの選別に活用している。


接触型は地球連邦が旧く用いていた直接的なマン・マシンインターフェース形式の操縦方法である。

これは一般的ではなく、歴史的遺物であると考えられているが、発電ユニットがシミュラクラ・ドライバーとして完全に適正のある個体であるということはニルドリッヒ共和国がいち早く発見した。

共和国は地球連邦より人体発電所の実験協力を求められ、これに応じていたためだが、それでも接触型は主流とはなりえなかった。


外科手術によって齎される弊害は、個人の人権を大いに損ねることになるからである。

また人間の神経系の脆弱さを補うためには完全な安全性を追求する必要性があり、これは大きな壁として捉えられていた。

それは共和国国民である軍人に行えるものではなく、共和国はその技術の実用化、ならびに研究開発を諦め、非接触型を開発した。


対してシュリーフェン帝国軍は身体に人工物を取り入れるという行為に民族的嫌悪を感じており、専用のデバイスを介する方法を発展させ、完全無人遠隔操作による戦場の支配を確立したのである。

これはいずれも神経系とのリンクなどはなく、即応性に劣るが、人命を保護することができるという点で優れている。

とはいえ、これはつまりシミュラクラを使い潰すこと前提ということでもあり、使い潰すシミュラクラを調達できない貴族などは自ら乗り込むこともある。

こうした場合は作業用時代の操縦桿やペダル、コンソールを用いた旧来の操縦方式に拘る者と、ナノマシンを入れることを受け入れる者とに分かれる。





《ニルドリッヒ共和国軍シミュラクラ》



- SIMX-7

 《アクセスコード制限》



- SIM-8

 共和国軍第二線級主力機体。試作機であるSIMX-7のダウングレード品。

 生産性と整備性を第一に、使いやすく兵站に負荷をかけないようにと配慮して作った結果、中途半端なものが産まれた。

 とはいえ、安価で扱い易い機体であることには変わりなく、練習機や対歩兵戦用などでいくつかの部隊で現役である。

 基本的には装甲車の代わりのように扱われており、それに順じた追加装甲を施していることが多い。




- SIM-9

 共和国軍正式採用機体。ダウングレードの結果、汎用性は高いものの評価の低かったSIM-8の発展型。

 SIMX-7の設計を近代化し、SIM-8とのパーツ互換性を六〇パーセントほど持ち、整備性にも性能も実用に耐えられるほどになった。

 SIM-8との置き換えはほとんど終了しており、後方部隊や二線級部隊の除いてSIM-9を使用している状況である。


 特殊作戦仕様では高性能AIとのマッチングが可能となっており、これにより機体性能の適応化が行われる。

 総じて高い性能でまとまっている上に、ドライバーの生存を優先した設計であるため、射出座席などが標準装備。

 機体各部にはサバイバル用の武装や装備、機材が分散配置され、簡易整備用の工具も揃っている。




=SIM-9T 機体番号45-0114

 首都脱出作戦において喪失。

 信頼性に富み、高い汎用性を誇るSIM-9シリーズの練習機型。

 ジーン・ワッツは安定性の良さから既存機体よりも練習機を改修することを選んだ。

 ただしワッツの改造によって増加装甲がほどこされている上に、バッテリーなどは上位グレードのものを使用。出力もチューンナップされ、電子部品を入れ替え電子戦性能をあげてある。


=SIM-9E 機体番号51-1818

 ニュー・ワルシャワ攻防戦にて使用。





《シュリーフェン帝国》



-貴族軍閥


 帝国貴族による私兵集団。名称が統一されていることはなく、各々が好き勝手に名乗っている状態である。

 最大派閥は首都に居を置くマクシミリアン・フォン・ブランデンブルク率いる『ヴォーダン帯剣騎士団』であり、1個師団相当の戦力を持つ。

 編成においてもそれぞれの趣向がよく現れており、ギヨーム・フォン・ナッサウ公などは戦闘よりも野戦築城や兵站に凝るなど、人となりがよく表れている。

 中でも有名なのはベルゼリア家の『白色虐殺隊』と恐れられている私兵集団で、パイロットが女性のみで構成されている点でも特異である。




-《レギオン》

 帝国通常戦列機。

 シミュラクラ統一規格を採用した、帝国軍共通フレームを元に、汎用型として設計された機体。

 陸軍に通常納入されるものは《Auf.G》というタイプであり、貴族などが購入するものはそれぞれがパーソナルなコードネームを持つ。

 シミュラクラ統一規格に加えてその汎用性を最大限に生かせるよう、フレーム自体は八方美人気味で、装備の換装によって最大限の性能を発揮する。

 そのため、改造の仕方によってはほとんど別機体ともいえるような能力の差異が現れ、外見すらまったく別物になることも珍しくはない。


 帝国軍の実質的な主力機体ではあるものの、シミュラクラ統一規格の限界を見据えた帝国軍は、完全なる軍事利用を目的とした新規格を開発していくことになる。



=オレルス


シュリーフェン帝国の没落貴族、ジークルーン・フォン・ロストックの愛機。

領地特産の銅にならって、錆びた銅色と呼ばれる赤金色に塗られている。


貴族だが予算の少ないロストック家のシミュラクラは本来であれば後方任務で使用されるような旧式の《Auf.B》で、そこから装甲配置を変更している。

内部は新型に置き換えられているが、外見は旧式であることに変わりはなく、式典などではそれを誤魔化すためにマントを常時羽織っている。


背部に搭載された狙撃砲『ユーダリル』は折りたたみ式の長砲身ライフル砲で、これを用いての狙撃がロストック家の十八番である。

華やかさはなく、地味で堅実な戦い方故、平時はないがしろにされ、武名を尊ぶ帝国内での没落の原因ともなった。


機体性能は低く、安定性も装甲配置の変更によって損なわれている。

が、それらは搭乗者の機転と能力によって補われており、共和国首都攻防戦では敵新鋭機を少なくとも7機撃破している。



=グリムゲルデ


巨大剣を主武装とする白銀のパーソナルカラーを持つシミュラクラ。

リィンハイト・フォン・ベルゼリア専用機である。

大抵はオイルや血によって赤黒く塗装された状態で帰ってくる。

そのため口の悪い味方や敵からは《穢れた銀》という名で通っている。


通常戦列機にスラスターと推進剤を備えたブースターパックを装着し、さらには両肩に盾を追加装備している。

大重量のものを振り回すという特性上、本来外部追加装備である『外骨格出力増加装備』を固定装備した。

射撃兵装はハンドガンしかないが長銃身化されているので威力自体は底上げされている。

パーシュミリア戦役後に固定装備としてスリーブガンを追加装備し、白兵戦時に咄嗟射撃が可能となった。


ブースターによる機動性はかなり高いが反面、推進剤を使いきって仕舞えばただのデッドウェイトとなってしまう。

専用装備を振り回すために出力も底上げされている他、機体各部の消耗も軒並み高くなっており、継戦時間も短い。




-《ヴェアヴォルフ》

 新規格戦列機。

 シミュラクラ統一規格を発展させ、純粋な軍用総合整備計画である《プロイェクト・ヴェアヴォルフ》によって生み出された機体郡。

 ヒトガタ作業機械であったシミュラクラとは根本的に思想が異なり、操縦方法も脳神経直結方式が採用できず、完全に通常の操縦形式へとシフトしている。

 一部には特殊な方法でリンク形式を確立させたものもあるが、未だに少数生産に留まっていると思われる。


 ほとんどの機体がシミュラクラの装甲・火力を上回っており、戦車の拡張版のような兵器体系を有している。

 一方で大型化により機動性や展開力は低下しており、汎用性に置いてはシミュラクラを置き換える事はできないとされる。

 共和国軍の実験機である《プレデター》は、この計画データの一つを元に製造された。





-シミュラクラの兵装と共和国及び帝国での運用


 シミュラクラの兵装は対人機関銃を除けば、基本的に20mm以上の口径を持つ火砲で構成されている。


 共和国においては通常の装甲車や戦車、または海軍の艦載兵器といった従来の規格からの転用が多く見られる。

 そのため弾種については物理的に装甲を貫通させるAP系統と、メタルジェットによって装甲を貫通させるHEAT系統がある。

 基本的に弾種については既存の兵器体系と同等の組み合わせを用いており、有り体にいえば使い回しが多い傾向にある。


 一方、帝国においてシミュラクラは貴族軍閥の影響もあり独自色の強いものとなっている。

 武装に関しては基本的に粘着榴弾(HESH)が用いられ、対戦車戦闘などでは対戦車ミサイルを追加装備することが多い。

 国防軍は補給面での都合を考え規格化された弾薬を使用する武器が揃えられているが、貴族軍閥に関しては例外である。


 貴族軍閥においては、領主が企業や施設を抱え込んでいることもあるため、さまざまな兵器が採用されている。

 一方で、こうした流れに追従できない貴族たちは国防軍や他の貴族軍閥からのルートを使って兵器を購入している。

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