○お題2―朝食/パパ/犯罪者―

 パパは無実だった。自殺でもなかった。

 八年前、あの男がパパを殺し、犯人に仕立てあげた。

 なにがなんでも、それを証明してやる。


 パパの汚名をそそぐために、おまえが犯罪者になってどうする――


 きっとパパはそういう。ママだってかなしむ。わかってる。わたしもそう思う。でも、ごめん。

 パパも知っているでしょう? 警察もマスコミも、みんな強いモノの味方。どれだけ証拠を積みあげたって、ある地点でゆがめられ、にぎりつぶされ、闇に葬られる。だからもう、最終手段にでるしかないの。

 それでだめなら、打つ手なし。そのときはわたしも、ママとパパのところにいく。できたらそのときは、お説教のまえになぐさめてね。


 墓前に手をあわせ、立ちあがる。


「わたしはしばらくこられないけど、頼りになる便利屋さんが時々掃除しにきてくれると思うから、かんべんしてね」


 便利屋の彼のもとには明日、いくつかの依頼が届くことになっている。八年前の事件の真相と、その証拠も。同時に、依頼料の入金もされるように手配した。


 ――怒るだろうな。


 驚いて、あきれて、そして、たぶんすごく怒る。


 それでも、彼は必ず動いてくれる。しかるべき人に、しかるべきタイミングで証拠を届けてくれるはずだ。


 さて、おいしいコーヒーを飲ませてくれるカフェで、ちょっと贅沢なモーニングでもたべよう。


 ことが順調に運べば、明日の朝食は留置場でとることになる。コーヒーともタバコとも、しばらくお別れだ。


 本当の動機は、裁判まで絶対にしゃべらない。

 裁判官が腐っていないことを祈ろう。


【完】

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