第四関門 タイトル
基本的に、私は完成間近にならなければタイトルを決められない。出来立てのジャムの瓶にラベルを貼るように、最後の大仕事と思って取り組んでいる。
タイトルはオリジナル性を重視するため、量産型ではないものを捻り出すようにしている。もちろん、全く重複しないタイトルを生み出すことは不可能に近い。『武蔵野』は国木田独歩の代表作だが、山田美妙の作品も同じタイトルだ。
それでも、ありきたりな言葉に自分らしさを加えて一つだけのタイトルを作りたいところだ。
近年は「タイトルの決め方」と検索すればいくらでも参考例が出てくる。そのおかげで、いくつかの法則に従えばタイトルらしいものがすぐに出来上がるようになっていた。
私が使う法則は、主人公の名前や作品の核になるものを選ぶものだ。
「硝子にくるまれて」
こだわりは、変換する言葉の組み合わせを四つ書き出して選んだことだ。
硝子に包まれて
硝子にくるまれて
ガラスに包まれて
ガラスにくるまれて
硬いイメージとやわらかなイメージを対比させるため、漢字とひらがなを含む案を採用した。
または、オチに関係するキーワードを挙げている。
「色彩のトランク」は世界観のいいところを取った。
候補となる言葉を何回か口にしてみる。決め手は自分の好みではなく、作品の情景が浮かび上がることだ。
タイトルが作品に溶け込むように、馴染む言葉を探す。しっくりくる言葉と出会うまでに費やす時間はまちまちだ。あまりに悩みすぎて布団を被ったことは、一度や二度ではない。
そうした試行錯誤の果てに小説ができるのだから、かなり根気のいる作業である。言葉に恋しなければ情熱は続かないだろう。
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