第35話
そもそも。
脳科学記憶定着組織ワーキンググループにとって、瑞浪あずさはどういう立ち位置に経っているのだろうか? 指導者? 責任者? それともただの人間?
後者は有り得ないだろう。ミルクパズル・プログラムを主導しているのが彼女であるとするならば、彼女はそれ相応の地位に立っていると言うことは間違い無いだろう。
では。
瑞浪あずさはやはり一人でそれを作り上げているのだろうか?
或いは、何人かの人間によって作られているのだろうか?
答えははっきりと見えてこない。見えてこないからこそ、見えてこないから故に、謎が深まっていく。彼女はいったい何をしたいのか。彼女はいったい何がしたくて、それを実行しようとしているのか。
単純に、人間の意識を消失させたい為?
それともそれ以外の『何か』が理由として存在しているのか?
「瑞浪あずさを確保することは私も考えている事象であります。そして、瑞浪あずさがやろうとしていることも認めざるを得ない。それを絶対にしでかしてはならないのです。……きっと、あなたもそれには気づいていると思うのでしょうが」
「……今、あなた、BMIに接続していますか?」
「いえ? 接続した方が宜しいですか?」
「その方がホログラムが表示されるので、便利かと思います」
拝下堂マリアに言われたとおりに、私はBMI―Lightningケーブルを接続する。
拝下堂マリアのホログラムが、脳内に表示される。
「あなたは理解していない。やるべきことを考えていない。それを理解しているかどうかはまた別として」
「……何を考えているのですか? 拝下堂マリア議長。わざわざBMIを接続させてまでするべき話の内容だったのですか?」
「これは今、秘匿回線で接続しています。その言葉の意味が分かりますね?」
「……私とあなた以外で話してはいけないことを、これから話すと?」
「その通り。そしてこれは、知られてはならない事実です」
拝下堂マリアは立ち上がると、私の前に立った(ちなみに私も椅子に腰掛けており、立ち上がろうとしたが、拝下堂マリアに制された)。
「脳科学記憶定着組織ワーキンググループ、それはかつて私が所属していた組織であり、瑞浪あずさの『計画』も知っていました。つまり、私は最初からあの大量殺戮を知っていたのです」
「……! そんなこと、信じられるはずが」
「無い、と言いたいのでしょう? ですが、残念なことに、間違い無いことに、これは事実です。脳科学記憶定着組織ワーキンググループとして所属していたということは、消えることのない事実です。隠し通していたことですが、もうこれ以上は隠し通しようがありません。いつかあなたにはバレてしまうことなのだということは、分かっていたのですから。ですから、あなたには、あなたには伝えておかなければならないと思っていたのです」
「……でも、そうすると、瑞浪あずさの計画には敢えて承認していた、ということになりますよ! 瑞浪あずさの、ミルクパズル・プログラムを認めていたということですか!」
「あの頃には、脳科学記憶定着組織ワーキンググループは瑞浪あずさの手足と化していました。瑞浪あずさの考えたプログラムを、我々が構成していく。それが今までの流れと化していたのです。ですが、それはおかしいことだと気づいていました。何人かは、メンバーから脱退しました。私もその一人です」
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