最近の美少女の友達はゆりゆりすぎる


カシュッ、と乾いた音がした。


その音の発生地を見るとそこには"ボス"と書かれた缶コーヒーを飲む平等院の姿があった。


「……………なにか?」

「いや、なんも」


こんなやり取りをさっきもしたなぁ、と思いながら本を読む。


普通美少女は紅茶を飲むものなんじゃないんですか?


喉が渇いてきたので、鞄からペットボトルを取り出す。それは"午前の紅茶"と書かれた紅茶で、略して"ゴセティー"と呼ばれているものだ。


普通逆じゃね?と考えたのは仕方のないことだと思う。


時刻は六時十五分。そろそろ部活動が終わる頃だ。外はもう暗く、ギリギリらが見えるかどうかと言ったところだった。


パタン、と本を閉じる音がすると、平等院は鞄の中に本をしまっていた。


「………あと十五分残ってるぞ?」


平等院はこちらを睨み、そして一つ舌打ちした。


「………片付けです。箒を持ってください。ゴミやチリを捨てます」


舌打ちとかコエェ。


目がさ、完全に人殺す目なんだよ。そんな目で舌打ちときたらもう。ね?


「はいはい」


はいは一回だけだぞ、と目で言ってる。


はいはい分かってますよー。


俺はドアの横にある用具入れから木製の箒を持つ。


あれだよね。小学生の頃はさ、小さなプラスチックみたいな箒だから先生が持つあの大きな箒に憧れたよね。


そんな変なことを頭の中で考えていたら急に俺の足にゴミが飛んできた。

飛んできた方向を見るとそこには箒を持った平等院がいた。


「おい、俺にゴミがかかったんだけど」


だが平等院は無言で、大きく手を動かしながらこちらにゴミを送ってくる。


「おい」


少し強めに言うとやっと気づいたようでーーーって違うなこれ。わざとだあいつ。


「こっちに送ってくんな」


平等院はコテン、と首を傾げた。


何がわからないんですか。首をかしげるその姿も可愛いからなんかうざい。


「………ああ、そういうことですか。すみません。少し勘違いしていました」


あ、わかった。こいつ俺をゴミだと思ってやがったんだ。


その後俺らは掃除を続け、全ての場所を掃除し終わったら、すでに時刻は六時三十分になっていた。


「では、これで読書感想部の活動は終わりです。ありがとうございました」

「あざっした」


適当に言ったらまた睨まれた。わぁー怖い怖い。


俺は鞄を持ち、さっさとこの地獄の教室から抜け出そうとする。


「きゃっ!」

「ぉぼっふ」

「チッ」


が、それは叶わずドアを開けた先にいた誰かにぶつかった。どうやらぶつかった相手は俺と同じタイミングで部屋に入ろうとしたらしく、勢いがありすぎてこっちに気付く前にぶつかったようだった。


でことでこがぶつかり、俺は尻餅をつきぶつかった相手は「いたたた」と額を押さえていた。ちなみに平等院は舌打ちをした。なぜに?


「ごめんなさい。大丈夫で……す…………か……?」


ぶつかった相手から発せられた声は高い声で、聞き覚えのある声でもあった。


瞑っていた目を開けてみると、そこには赤い髪の毛と茶髪が混じったボーイッシュな感じの美少女がいた。


「……あ。うわって言った人」

「その覚え方はやめて!!」


本屋であったあの美少女だ。間近で見ると可愛さがよくわかる。少なくとも平等院よりは総合的に良い。多分。


「紅さん。そんな男からは離れたほうがいいですよ。手を差し伸べる価値もありません」

「鏡花ちゃんは相変わらずだねー」


苦笑いしながら答える紅。


紅って言うのかこの人。


「ごめんね。前を見てなくて……。私の名前は紅銀杏くれないいちょうっていうの。よろしくね」


そう言いながら俺に手を伸ばしてくる。俺はそれをありがたく受け取り立ち上がる。美少女に触れてラッキーとか思ってない。ないったらない。


あ、また平等院に睨まれた。


「紅さん。そんな奴に手を差し伸べるのは良くありません。これは貴方のためです。理解してください」

「あははは……。鏡花ちゃんは男嫌いだねぇ」

「当たり前です」


あ、納得した。なるほどなるほど。性格良しは女子だけのことだったのか。


「では二人で帰りましょうか。紅さん」

「そっか。じゃあ一緒に帰ろ。えーーと………クマがひどい人」

「………はい?」

「よし!許可も取れたし三人で帰ろっか」


いや、今の「はい」は意味がわからないの「はい」であって決して一緒に帰る意味の「はい」ではないですよ?


そもそもこの人話を聞いてたのか?平等院は男嫌いなんだろ?なぜ俺と一緒に帰ろうとする。そして何故初対面の人と一緒に帰ろうとする。さらに何故初対面の人をディスる。意味がわからない。もしやこれがリア充の原因か?


「紅さん。ちょっと待ってください。この男と一緒に帰るのは私が許可できません」


平等院がかなり真面目な顔で紅に言った。


そんなに俺と帰るのが嫌ですか。俺も嫌だけど。


「え〜別にいいじゃん。それに鏡花ちゃんの男嫌いが治るかもよ。ほら鏡花ちゃん治したいって前に言ってたじゃん」

「いや、それはそうですけど……」

「大丈夫だって。ね?」


ちょっと待て紅。それは男子にとって破壊力がありすぎる。


平等院の手を繋ぎ、自分の胸に寄せることで圧迫された胸がむにゅん、と形を変える。

「ね?」の言葉で首をかしげるとぼいん、と揺れ、どうしても目がそっちに言ってしまう。

平等院もなくはないけど紅に比べたら見劣りする。


これはヤバイ。鼻血が出そうだ。女子と女子の密着っていいですね。


「……すごい…………仕方ないですね。わかりました紅さん。柔らかーーーではなくて、眼福ーーーでもなくて、一緒に帰りましょう。モブその一と共に」


平等院が顔を少し紅潮させながら話す。

鼻息が荒く、手もなんだかいやらしい感じだ。


なんだこいつ。


「うん!じゃあ行こっか!鏡花ちゃんにクマちゃん!!」


あだ名を付けられてしまったよ。クマちゃんって。確かにクマはひどいけど。


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