最近の部活に居る美少女は毒舌すぎる


知ってる?夜更かし型の人は頭がいいんだって。あと、モテるらしい。つまり夜更かしばっかしてる俺は頭が良くてモテる。人生勝ち組だな。


さて、現実逃避はやめてこちらに侮辱の目で見つめてくるこちらの平等院さんをなんとかしよう。


本を閉じ、彼女は言った。


「私は入部を認めません」


そして本をまた開き読んで黙ってしまう。


なんで俺こんな嫌われてんの?性格良しってどこからきたんだよ。


取り敢えずあの教師は一度決めたら殆ど自分の意見を変えない頑固野郎なので、俺の入部は決まりだろう。


ということですぐそばにあった学校のあの椅子をテーブルに、黒板に背を向けて座った。


その際、ドブを見るような目で見られたがそんなの気にしない気にしない。


俺は鞄からラノベを出して読む。

題名は"最強賢者の転生スローライフ"だ。


「はっ」


平等院が隠す気の無い大きさで鼻で笑った。


「……んだよ」

「いえ、なにも」


試しに聞いてみたが、なにも答えなかった。


そこからはずっと静寂した空間が時を占め、いつしか時刻は五時になっていた。

今の季節は春。部活は六時三十分までに終わらせなければいけないのでまだまだ時間はたっぷりある。


ふとあることに気になって平等院に聞いてみた。


「……そういや、この部活ってなんの部活なんだ?」


平等院が本を読んでいたので、俺も本を読んでいたが、一体なんの部活なのか聞いていなかった。


「…………はぁ、まぁいいです。教えてあげましょう」


こちらをちらりと見た後、大きくため息をつき、心底面倒くさそうにそう言った。


「私が、所属するこの部活の名前は"読書感想部"。部活内容は一ヶ月に一回読書感想文を書いてそれを昼休みの際放送で発表することです」


こいつ、わざわざ"私が"の部分を強調しやがった。


それにしてもなんだこの部活。たしかに静かで忙しくない部活だけど、放送だろ?全校生徒に聞かれるってことだろ?千人以上だろ?


うわーちょっとマジであのセンコーぶん殴っておこうかな?頭の中で。


平等院はもう話しかけるなオーラを出しながら本を読む。

だがしかし!俺は話しかける。


「質問。その読書感想文を書く本はラノベでもいいの?」


すると平等院がこっちを睨んできた。また本を閉じ目を瞑って一泊置いてから話し始める。


「…………却下。ラノベなんていう底辺が読む本は許しません」


底辺って言ったよこの人。


「なんで?」

「貴方も読んでるから分かっているでしょう。変わらない展開。同じ例え。ぐたぐたで進まない物語。なんの魅力もないヒロイン。顔で選ぶ主人公。………パッと出しただけでもこれだけあります。コミュニケーションもろくに取れない社会不適合者たちが書いた本を同じ社会不適合者たちが読んで、自分たちの都合の良い話で自分はカッコいい、モテる、俺が悪いんじゃない周りが悪い、そうやって現実逃避する」


ここで平等院はまた鼻で笑った。


「そんな薄汚い本を可愛らしいじょーーーゔゔん。学校に広めるわけにはいかないんです」


そしてまた平等院は本を開く。


俺の好きなラノベがこんな言われ方じゃあ黙ってらんないな。


「いいや、ラノベにもいいところや、優れているところはキチンとあるぞ」


そう俺が言うと平等院は口を歪めた。


「へぇ?…………どうぞ、言ってみてください」


聞いて驚け、俺の思い。


「まず、ラノベって言うのは漫画を小説にしたようなものなんだ。中高生に向けての本でその中に難しい言葉が入っていたらわからないだろう?だから同じような例えをするし、高校生くらいになってくると女性に対して性の気持ちが芽生え始めてくるんだ。ヒロインはみんな美形にして主人公のことを好きにさせ、思春期の読者の願望を本の中に詰め込むんだ。そうやって読者の心を掴んで売ってくんだよ。な?下手な小説よりよっぽど考えられていて、優れてるだろ?」


平等院は俺の話を黙って聞いた。俺が話し終わるとまた鼻で笑った。


何ですか。最近は鼻で笑うのが流行ってるんですか?


「変わってないじゃないですか。つまり言いたいことは自分が出来ない、若しくはやろうとしないことを二次元の中で、妄想の中で"出来たことに"しようとしてるんですよね?そんなものはただの現実逃避です。私の主張と何ら変わりはないです。言い方を変えただけですよ」


反論されちまったよ。これはもう無理かな?いや、まだだ。まだいける。


「それはブーメランじゃないか?お前の読んでいる小説だって探偵ものだろ?それはお前が出来ないことじゃないか。それを読んで現実逃避してるだけなんじゃないのか?」

「これは違います。小説は素晴らしい書物です。一言一言に意味が込められています。そんな小説もどきとは違います」

「俺は意味が込められているかいないかの話はしてないぞ。俺は、ラノベと一緒で出来ないことを出来たことにして現実逃避してるんじゃないかって言う話だ。お前が言ったんだぞ」


うっ、と小さく声を漏らす。平等院も話をすり替えていることをわかっていたのだろう。


どうやら俺の勝ちだったみたいだな。どや。


俺のどや顔がムカついたのか、またもや平等院は反論してきた。


「しゃ、社会不適合者の小説家が書いた本などたかが知れてます」

「それもブーメランだろ。そもそも小説家ってお前が読んでる作者も小説家だぞ?」

「訂正します。ライトノベルしか書けない小説家の本は読むに値しません」

「そんなこと言ったら小説家全員が書いた本がそうなっちゃうだろ。その道一本の本しか書けないんだから」


平等院はうぐっ、と息を詰まらせた。そしてこれ以上失言をするのを恐れたのか好きにしてください、と小声で言って本を読み始めた。


フッフッフ、口で勝とうなんざ百年早ぇんだよ。


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