最近の部活動は強制的すぎる


「あーちなみに部活動についてだがーー」


部活動、隠キャにとってそれはリア充が集まる"死の三角地帯"。


自分を挟んで話されるその孤独感。

途中で退部する時の顧問の顔。

中途半端に覚えられ「そういえばあいつ一ヶ月で部活やめたよな」と笑い者にされる時の虚しさ。


部活には入らない。決して。


俺、部活に入らずに家に帰ってラノベ読むんだ。


「パンフレットにも書いてあった通り、強制だからなー。一週間までに決めとけよー」


…………フラグでしたね。


なにぃいいいい!!強制だったのか!!


知らんかったよ……。



ーーーー一週間後。


燃え尽きたぜ……真っ白にな……。


部活には入りたくない。だけど入らなければいけない。ならば運動部ではなく、文化部でなおかつそんなに忙しくなく、人が少ない部活がいい。

しかしそんな部活はなく、一週間の時が過ぎる。


今はホームルーム。六時間目が終わり、これからみんなが部活と言う名の戦場に行く前の準備期間だ。


「はい号令ー。あ、御手洗は後でこっちに来い」


はい、十中八九部活のことですね。出してないの俺だけだから。


今の俺の心境はまさしく処刑台へと歩く死刑囚のよう。希望なんて初めからなかったんだ……。


「お前、入部届け出してないよな?」

「はい。出してないっす」


いちいち確認を取ってくるな。わかってるだろ。


「早く出せよー。今決めちゃえ。何か入りたい部活でもあんの?」

「いや、ないです」


ないから出してないんだよ。

思春期の教師に対する不満を心の中で発散する俺。


「じゃあ何。どう言う部活に入りたいの?」

「文化部で忙しくなくて、部員が少なくて、うるさくないゆったりできる部活がいいです」

「注文が多いな……」


少し呆れたように苦笑いする先生が髭の生えた顎に手を乗せて唸っている。

そして何か思いついたかのように俺に話しかけてきた。


「あー一つだけ当てはまる部活があるぞ」

「マジっすか」


大きな声は出さなかったけど、かなり驚いている。見た限りだとそんな部活なかったんだけどな。


ついてこい、と手招きしてクラスの外に出て行く教師こと"桃太郎"。

それを後ろからひょこひょことついていく俺こと"猿"。

惜しい。あと"雉"と"犬"がいればちょうどだったのに。


そんなジョーダンはさておき、ここは二階。俺らのクラスの真下、一階に職員室があるのだが、どうやら教師は三階に行くようだった。


俺が通う学校、"三場学園高等学校"は普通科と工業科とで別れている。

普通科に八百六十人、工業科に五百五十人、合わせて千三百十人という大人数。

そのため校舎が新館と本館とで別れていて、本館に工業科全クラス+普通科一年生、新館にその他の生徒とで、別れている。

本館は全部で5階、新館は4階である。

本館と新館は外から通路で繋がっている。


教師が3階から4階に上がり、新館へとつながる通路へと出て行った。それに俺もついて行く。


新館の端っこ。そこは空き部屋で誰も使われていなかった部屋であったはずだったが、そこの名前のプレートにはでかでかとある文字が書かれていた。


「どくしょかんそーぶ?」


つい棒読みで読んでしまうほどそれはインパクトが強かった。


「そう。"読書感想部"だ」


何、読書感想部って。読書感想文じゃないの?


そんな俺の疑問を知ってか知らずか、多分後者だとは思うけど、教師はドアをノックする。


「どうぞ」


扉の奥から聞こえてきたその声は透き通った声で、凛とした声だった。


女子なのか?


「平等院。入部希望者だ」


"平等院"、その名字だけで中にいる女子生徒がわかった。


平等院鏡花びょうどういんきょうか。彼女は容姿端麗、成績優秀、性格良し、運動神経抜群という聞いただけで自分が負け組であることを自覚させられる人だ。


まぁ、聞いただけなのでどんな容姿かは分かってはない。


入っていった教師に続いて俺も教室の中に入って行く。


まず目に付いたのは大量の本だった。

コの字型にある本棚。窓はカーテンで閉じられ、さらに本棚があることで陽の光が少しも入らない。見えている壁は黒板のみだった。

黒板は綺麗に磨かれていて、本来の色の紺色を取り戻していた。

上から降り注ぐ蛍光灯の光を反射する会議室でよく使われる白く、縦長い机。それが二つ、黒板の方へと向いていた。


その机から少し上に目をやると、そこには美しい黒い髪の毛を着飾る美少女がいた。


長く、肩にかかる程度まで伸ばされたその髪は見る人によってはいくらでも金を払ってでも買いたいと言うものがいるだろう。

白く、だが健康的なその肌は幻想的だった。

手には本を持ち、椅子に腰掛けていた。


少しつり目で、尖ったその目は確実に俺の心を射抜いていた。いや、別に惚れたとかじゃなくて、殺意が飛んできたってこと。


「入部希望者?……入部を拒否します」


拒否されちゃったよ。え?なに?俺なんかやりましたか?


「そんなこと言うな。もう入部届けは出てる」


え?俺出したっけ?


「先生……いくら顧問といえど無理矢理入部させるのは良くないと思います」

「無理矢理じゃない。ちゃんと本人の確認もとってある。な?」

「え?あ、はい」


つい頷いてしまった。

だって目が笑ってなかったんだもん。


てゆーか先生って顧問だったんですね……。


「それに、部活は二人以上じゃなきゃダメだろ。ほらこれで間に合っただろ。あー、先生はそろそろ職員会議があるからもう行くわ。じゃ」

「え、ちょ!」


俺を一人にしないで下さいよ。

絶対面倒臭いから俺に押し付けたろ。あのヤロー後で頭の中でぶん殴ってやる。


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