最近の高校生は友達を作るのが早すぎる
人生はクソゲーだ。
たったひとつの間違いでこれまでの努力が水になり、泡になる。
また、隣の家が火事になって自分の家に飛び火するように、他者が自分に悪影響を及ぼすこともある。
それなのに、他者とは関わり合っていけと教壇に立つモブその一が言う。
こっちだけそう思っていたということも多々ある。裏切られることもある。
だがそれでも他者との関係を築けと言う。
そんなものを築いて何になるのか。
自分が傷つくだけだ。
もしもその関係とやらが一つに集まり一人の人間を攻撃することを指すのならば、先生の教えはあっていたことになる。
軍として群をなし、孤立した者を追い出す。
その考えは軍としてはあっているのかもしれない。国としてはあっているのかもしれない。クラスとしてはあっているのかもしれない。
人生という長い物語を進んでいくには俺らは残機があまりにも少なすぎる。
なにせ残機はこの心臓のたったひとつ。
何度も何度も死んで、攻略法を見つける死にゲーをたった一回で攻略しろと言っているようなものだ。
一回しかできないのならば、過去に戻れたりできないのか。
過去の過ちを修正したり、チャンスをモノにしたり、そういったことができればいいのに、と何ど思ったことか。
そんなことを言っても過去には戻れないわけで。
すでに俺はクリアするルートとは外れた道を俺は歩んでいて、どう足掻こうと針の山に落ちるのは見えている。地獄行きのエレベーターに俺は乗ってしまったのだ。
◆
春、それは別れの季節でもあり、出会いの季節でもある。
中学を卒業して、高校へ入学。
古き友と別れ、新しい出会いがある高校生活。
汗がきらめく部活動。
みんなで一致団結文化祭。
高校には魅力的な日常、行事がある。
友人と仲良く過ごし、笑い合い、青春一ページを彩るのだろう。
ただし、それは友達作りというものに成功したら、の話である。
俺こと、
入学から二日目。陽キャのやつはすでにボチボチと笑い声が聞こえ、楽しくやっている。
俺は一人寂しーーー他者とは関わらず、机の下で本を読んでいる。椅子に掛かり、腕を伸ばしながら読んでいる。
読んでいる本は"始まりの錬金術師〜転生したら最強でした〜"。〜、を使うやつ多いよね。
物語としては、昔の錬金術師が現代に転生して無双するというありきたりな話だ。
学校に入学した主人公が隣の席のヒロインをナデポさせたり、ぼっちのお嬢様をニコポさせたりして、迫り来る異世界からの侵略者が主人公を殺しにくる、というところまで読んだ。
はい、この後の展開は読めた。
なんだかんだ敵を倒して、敵を全員殺そうとした時、主人公が「そんな酷いことはするな!」とか言って、敵の首領が可愛いからハーレム要員にして、仲良くしましょうね、で終わる。
どう?合ってるっぽくね?
俺はその展開があってるか確かめるために最後のページまで飛ぶ。
……………合ってた。
本を閉じ、次の授業の準備をする。と言いたいところだが、なにせまだ入学二日目。まだまだ配るものはたくさんあるだろうし、学校の案内も終わってない。
ちなみにだが、俺には小中高と友達がいたことがない。その理由は後でわかる。
…寝るか。
俺は机に突っ伏し寝ることにした。
「あれ?トイレ寝た?」
「ほんとだ」
「みたらい、じゃなくておてあらい、だろ」
「ぷっ、ふっふふ、笑わせないでっ。ぷぷっ!」
うるさくて眠れない。
これだ。俺に親友がいない理由の一つがこれだ。名前。
といれ、という便器の名前に、御手洗、という、おてあらいに見えるその漢字が俺のぼっちの一貫を担っている。
他にも容姿や、俺の厨二チックな性格もあるだろう。
まぁ、そう頻繁に言ってくるわけでもないし、衝撃があったのは自己紹介の時のみだろう。
こういうのは時間が解決してくれる。
ということで、俺は寝ます。
てゆーか、他人の悪口を言えるくらいに仲良くなったんですね。羨ましーです。
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