閑話休題3

「先輩、最近ストーカー被害の通報ってありますか?」

 思わず口にふくんでいた緑茶を吹きだす。同僚の太刀川春子から発せられた、あまりにもトレンドな話題に驚いたのだ。

「俺は聞いていないが、なんで急にそんなことを?」

 隼人は平常を装いつつ口元を拭うが、内心は心穏やかではない。つい先日親友がストーカーまがいの行為をしようとした話を聞いたばかりだからだ。まさか本当に通報されて捕まったか、いや自分の知る限りそんなはずはない。

 突然茶を吹きだした隼人に首を傾げながら、春子は言葉を続ける。

「友人が被害に遭ってるんですよ。私としては、好きの一方通行だと思うんですけど、今の彼女なら通報してもおかしくないかなと思って」

「へ、へぇ~そう……まぁ警官としては、犯人捕まってほしいと思うな」

 親友としては捕まってほしくない。というか、あいつはあれからどうしたのだろう。元々頻繁に姿を現す奴ではなかったが、あれほど浮かれていたにも関わらず、その後一切の報告はなかった。

 諦めたのだろうか。いや、あの面倒くさい性格のトキトが諦めるとは思えない。きっとなにかあるはずだ。そうは思うものの逮捕されるのは止めてほしい。本気で。

「ストーカーが恋の一方通行なら、警察なんていらないさ」

「それもそうですね」

 彼女は頷いた。

 面倒ごとは止めてほしい。ただ、隼人はこれが嵐の前の静けさのような気がしてならなかった。

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