第10話

‪正論しか言えない大人には成りたくなかったんだけど、成れていないとも思うのだけど、でも、正論は、正論なんだと分かるようにはなってしまった。‬

思春期を引きづっている同級生を見ては、いつまでもそうしてたら、そうなってしまうよ、なんて面白くないことを思ってしまう。

みんな、「今を生きること」に苦しんでる。自分のせいにするのは嫌だから。本当はもう自分にしか自分を生かすことはできないと分かっているはずなのに、分からないふりをして、人のせいにする。確かに確かに、はいはい。さぞ、苦しかったでしょう。けれど、それは、多くの人が皆そうなのでは。分かるよ、苦しいよね、しんどいよね、辛いよね、死にたいよね。

わかるけど、さ。もう、誰かのせいにして不幸がれる年齢は過ぎたよ。

あなたはいいよね、あの子はいいよね、なんて不幸比べしてたって、誰も幸せになれないよ。

あの子もあなたも私も、みんなよく頑張っているよねって、それでいいんじゃない。

このままだったら、一寸先も見えない暗闇の中で、1歩も踏み出せずに、壊れてしまうよ。潰れてしまう。

あぁ、そうか。その方が楽だもんね。苦しいけど辛いけど悲しいけど頑張るよりも。苦しいから辛いから悲しいから、私は不幸なんです誰か助けてくださいみんな嫌いですって言っていた方が、楽だもんね。

楽だけど、それは、幸せではなかったなぁ。

明日、朝起きたら急に自身の存在が消えていることなんてないし、朝起きたら急に幸せになっているなんてこともないよ。

あなたが、誰かを潰す勢いで、依存する相手をみつけようとしてるその時間を、自身の足で立って歩ける方法を、探さなくちゃ。それは、友達に話を聞いてもらうんでも、美味しいものを食べるでも、本を読むでも、何でもいい。あなたが、頑張れる理由は、あなたが探さなくちゃ。誰も、探せない。助けたくても、この手は届かない。あなたの代わりにあなたの人生を生きてくれる人も、あなたの全ての悲しみを拭ってくれる人も、いないよ。

いるのは、あなたの幸せを願って、あなたの悲しみに寄り添おうとしてくれる人だけ。一緒に苦しむのではなくて、一緒に幸せをみつけようとしてくれる人だけ。

でも、今のあなたにとって、そういう人はきっと、透明人間なんだよね。

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