第9話

私は、整形をしたくない。整形をする人を好まないという話ではなくて、私はそのままの私を可愛いと言ってくれる人にしか興味はない。もしくは、自分で化粧をして、オシャレをして、自分でヘアアレンジをして、そうした自分の努力で出来上がった姿を、綺麗だと言ってくれる人。

自分の顔や体のパーツで変えたいところは確かに無くはないけれど、多分それをしてしまうと余計に自信がなくなる。「可愛い」と言われても、(どうせ本当の私じゃない)と。ひねくれているとは思う。私は、オシャレをした努力の私もすっぴんの私も、どれもこれも好きではないから、私の代わりに好きだと言ってくれる人が欲しい。それゆえに、整形に対しての意欲は皆無なのだ。

しかし、人間は面白もので、私の友達は、整形をしたくて堪らないという。とても可愛くて綺麗でもある、申し分ない顔立ちなのに。「自分に自信を持つために」整形したいのだそうだ。そのままでいいよ、そのままが可愛いよ、と本気で伝えるけれど、本人はそう思えないと言い、そう言われても嬉しくないのだという。不思議だ。自分の顔を自分の理想に近づけることで、自分に自信がつくということ。でも、私は彼女に変わって欲しくないと思っているし、彼女を可愛い思う人はごまんといる。本当にそれくらい綺麗な人なのだ。しかし、彼女は誰に可愛いと言われたい訳ではなく、自分自身を納得させたいのだそう。

かっこいいなぁと思う。他者に依存しない、その考え方はかっこいい。彼女が実際整形をするかは別にして、この「変わりたい」と思い、悩んだり考えたりする姿が人間らしくて愛しいし、私のような人間もいれば、彼女のような人間もいる、その多様性が面白い。整形ひとつとっても、他に色々な考えを持つ人がいるのだとしたら。...生きれば生きるほど、数多くの考えに出会うことができるとしたら、やっぱり生きることは価値があることなんだろう。確かにそんな気がした。少し心が元気な平日の午後。

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