第183話 深い霧の中で……

 人影もなく物音もしない真っ白な濃霧の中、眼前で座り込んでいたエクスに俺は地面へ押し倒されると、そこから激しいキスをされていた。

 

「……んぅ、んちゅ」


 本来なら、責めは俺の特権だ。

 それなのにここ最近、どうにもうちのエクスたんはやたらと責めにまわってくる。


 別にこういう感じでもいいんだけどさ? それにしたって、なんかものすんごく激しすぎやしませんかね?

 まあとにかく、エクスのキスがいつにも増して大胆だし激しいわけですよ。

 別にそれが嫌なわけじゃないんですよ?

 ただなんかこう、男としての威厳が薄れてないかなぁ〜、なんてちょっと危惧してみちゃったりしてるんですよ最近はね。


「ちょ、エク……んくぅっ!?」


 口内でねっとりと絡み合う互いの舌が、くちゅくちゅと卑猥な水音を奏でる。

 もしこれがYouTubeの配信上なら確実に俺のチャンネルはBANされてしまうだろう。

 いやでも、ニコ生ならいけるかもしれない。

 いやいや、今の俺たち二人の行為はどちらかといえばP◯rnHub系統だからやはり無理だろう……って、なにを言っているんだ俺は?


「んふぅ……んんっ、んぅ」

 

 艶のあるエクスの声と吐息で俺の脳内が完全に卑猥なプログラムで書き換えられ始めていた。

 しかも、エクスが俺の体に自身の細身でも肉感ある肢体を重ねており、これでもかと言わんばかりの濃厚接触をしてくるから堪らない。

 密を避けてくださいなんて言われても、こんなエッチな女の子に責められたら健全な男子高校生なんて誰も耐えられないだろうし、耐えたくないだろう。

 よって、これはではなく、あくまでという事にしておこうと思う。

 それにしても……。


「あ、あの、エクス? なんか今日すごくない?」


 俺の上唇だったり下唇を吸い取るような勢いでエクスがキスをしてくるものだからちょっと戸惑っていたりする。

 でも、当の本人は至って普通な様子であり、少しだけトロンとした目をしていた。


「だって、ツルギくんと仲直りしたくてそれを考えていたらなんだかいっぱいスキンシップをしたくなっちゃって抑えきれなくなっちゃったんだもん」


「そ、そうなのか?」


「……ダメ?」


「ううん、ちっともダメじゃないぞ!」


 艶かしく潤んだ青い瞳が朧げに揺れて、俺の顔を愛おしそうにジッと見つめてくる。

 こんなに大胆でエッチな事をしてくるエクスを『拒む』なんて文字が俺の辞書に存在するはずがない。

 つーか、仲直りをするのにいっぱいスキンシップをしたくなっちゃったとか、それって俺が欲しくて堪らなかったってわけでしょ? なにそれ最高じゃん!

 俺も遂に生きる人間媚薬と成り果てたというわけかガハハッ、勝ったな! 風呂入ってくる……なんつって。


 ともかく、こんなに密着されて傷口は痛くないのかと思われるかもしれないが、レーヴァテインにバッサリと斬られた腹部の傷はあっという間に塞がれ、先程までの激痛は既に消えていた。

 それでも、エクスからの熱い抱擁とキッスに終わりは見えてこない。

 それなら、いっそこのままエクスの中にある聖剣を召喚するための儀式へと移行しても問題はないだろう。

 いや、俺たち二人の間に元々問題なんて存在すらしていない。

 だから、エッチなことをめっちゃしたろと思った。


「なぁ、エクス?」


「うん? なに?」


「もう、いいよな?」


「あ、うん……。い、いいよ」


 俺の言葉の意図を理解したのか、エクスが頬を染めて小さく頷く。

 まあね、いつまでも男の俺が女子に責められ続けるワケにもいかないですし、ここらでマウントを取り返して行きましょうというノリですよ。

 と、いうことで……。


「それじゃまずは上半身から……」


 俺はエクスの体を抱いて優しく地面に寝かせると、プリーツスカートから伸びた長くしなやかな両脚の間に片膝を立て上から覆い被さるようになり、彼女の胸元に片手を伸ばした。

 それなりに緊張をしているのか、エクスの色白な頬がリンゴのように紅潮し始め、はだけた胸元を両手で隠そうとする。

 その焦らし行為があまりにも官能的であり、本来ならそのままエロい事をめちゃくちゃするんだけど、そこは我慢。

 俺は荒くなる鼻息を深呼吸で誤魔化すと、昂る気持ちを抑えるようにエクスの額へチュッとキスをした。


「エクス、お前は本当に可愛いな」


「な、なにをそんな急に……んもぅ、バカ」


「あ痛っ!」


 世辞ではなく本心を口にしたのだが、額にデコピンをされてしまった。

 なんだよ照れ隠しなんてしちゃって可愛いなぁもう!

 これから俺がたぁ〜っぷりと可愛いがってあげるから覚悟しろよ〜ん!

 な〜んてやましい意気込みはさて置いて、そろそろおっ始めようと思う。


 緊張した面持ちを浮かべるエクスの背中に俺が片手を回してブラのホックに指先を引っ掛けると、気を利かせてくれたエクスが背中を少しだけ上げて、ホックを外しやすくなるように空間を作ってくれた。

 こういう空気読みができるあたり、流石は俺のパートナーである。


「どうツルギくん? 外せそう?」


「お前のブラを外す事に長けた俺にそれは愚問だな。ブラはもう、外している」


「なんかどこかの世紀末救世主みたいなセリフだけど、やってる事は低俗だよね……」


「まあそう言うな。それじゃあ、始めようか」


「え? あ、ちょっとま……きゃあ!」


 ちょっと呆れ気味だったエクスを他所に、俺はホックが外されて緩みきっていたブラを少しだけ上にずらすと、その下から現れた見事な二つの双丘を見て生唾を飲んだ。

 うん、やはりエクスのおっぱいはスゴイ。


「……じーっ」


「あ、あのさぁ。そんなにじーっと見つめられてると、ものすごく恥ずかしいんだけど」


「あぁ、すまない。お前のパイオツがあまりにも素晴らし過ぎてつい見惚れちまったんだ」


「そ、それはどう……ひゃん!?」


 薄いパープルカラーに薔薇の刺繍が施されていたエクスのブラをなにも言わずに取り除くと、その下に聳えていた色白で美しい形の双丘に俺はすぐさま顔を埋めた。

 重力の影響を受けながらも綺麗なお椀型を描いているエクスの両胸を左右から両手で支えつつ、内側に寄せてパフパフしてみる。

 うん、やはり素晴らしい。

 この時の頬や耳に触れるスベスベとした肌触りと、プニプニとした肉感が最高であり、これこそまさに至高の宝だ。

 しかしながら、その宝はまだ本当の輝きを放っているわけではない。

 そう、この素晴らしい宝をなによりも彩るためには、ここからが重要なのだ。


「……綺麗だよエクス」


「ちょ、そういうの恥ずかしいからやめてよぉ〜」


「いまさら恥ずかしいことなんてないだろ? だって、今までに俺たちはこんなエッチな事をありとあらゆる場所でだな」


「うん、それはわかってるよ。じゃあ、はい……触って」


「お、おふぅ!」


 ……いかん、いかん。

 俺としたことが、エクスからの予想外なおねだりパイタッチに危うく暴走するところだったぜ。

 地味に焦らされているのが耐えられないのか、エクスが手ぶらをしていた両手を除けてコチラに伸ばし、俺の顔を見つめて待っている。

 こんなにも欲しがり屋な彼女をこれ以上待たせるのは、男としてあってはならない事だ。

 故に、俺は恥じらいながらも両手を広げて待っていたエクスにそっと抱きつくと、その下に聳え立つ高き丘の上で色づいていた桜色の隆起するソレを唇で優しく愛撫した。

 その瞬間、エクスの体が小さく跳ね上がる。


「んうっ!? ちょ……いきなりそれはダメだよぉ〜」


 ……いいですねぇ〜。

 いきなりはダメっていうこの言葉の響きがものすんごく俺の性癖に刺さるわけですよ〜。


 真っ白な霧のせいで周囲が視えないとはいえ、俺たちの周りには敵であるレーヴァテインたちもいるし、頼もしい仲間である村雨先生たちもいる。

 そんな状況の中でこんなエッチな行為をある意味堂々と楽しめるのだから、これはもうMM号の中で致す行為みたいなものなのだろう。

 なにそれめっちゃ興奮するじゃん!


「何度も見て触ってきたけれど、やっぱりエクスの胸は最高なんだよぁ……」


「そ、そうなの?」 


「あぁ、そうだとも」


「そ、それならその……」


「ん? なんだ?」


 ――ツルギくんの好きなようにしていい、よ?


「なん、だと!?」


 エクスの口から放たれたその言葉が、俺の性的ボルテージを一気に爆上げさせるトリガーとなった。

 俺の好きなようにしていい、だとぉ!? 

 そんな事を言われたらもう我慢できない!


「え、エクスぅ!」


「ふぇっ? ひゃ、ひゃあ!?」


 そこから先はずっと俺のターンだった。

 エクスの豊かなお胸に顔を擦り付けながら両手で揉みしだき、更には一番敏感な二つの突起を交互に舌で愛でてみる。

 そして、そこから俺は舌先を使ってみぞおちからヘソの方へゆっくりと下り、下腹部にある聖域の手前で止まった。


「なぁ、エクス。そろそろ、こっちも責めていいのかな?」


「ハァ、ハァ……ふぇ? そ、そっちはまだちょっと……」


「まだダメか?」


「そ、そっちはここじゃ嫌というか……流石に部屋の中がいい、かな?」


 ……うん、そういうセリフ大好き!


 口元を袖口で隠しながら、真っ赤になった顔を逸らすエクスが最高に可愛い。

 やれやれ。どうやらこっちの聖域は、お部屋の中までお預けらしい。

 ま、俺は一向にかまわんが!


「フフッ、仕方ないな。なら、こっちは家に帰って二人きりの時に、な?」


「う、うん。でも、その為にはまずこのピンチをなんとかしないとだけどね?」


「任セロリ。お前のために俺は勝つ!」


 全てはエクスとのえちちな行為のために。

 この戦いを終わらせてやる!


 俺は強く意気込んでエクスに視線を落とすと、その頬にチュッとキスをしてから細い首筋に舌を這わせた。


「ひにゃんっ!? あ、あのさツルギくん? そろそろ……」


「なんだもう根を上げちまうのか? お楽しみはこれからだってのに」


「それはそうなんだけど、みんなが戦ってくれているのに私たち二人がゆっくり楽しんでいるのはどうかなぁ〜って」


 ……うん、それはそう。

 すっかりエクスに夢中になっていて失念していたけれど、俺たちは戦闘の真っ最中だった。

 これ以上の延長は皆に申し訳ないし、エクスの状態もそろそろ良い塩梅だろうからここでキメようと思う。


 俺はエクスを抱き起こしてその胸元を撫でると、真っ赤になった彼女の耳元に唇を近づけた。


「なぁ、エクス」


「ハァ、ハァ……な、なに?」


「今日は本当にゴメンな。お前に嫌な思いをさせちまって」


「ううん、その事ならもういいよ。だから、いつもみたいに、ね?」


「あぁ、わかった」


 これ以上、俺たち二人に言葉はいらない。

 それを互いにわかっているからこそエクスは俺の首に両手を回してきてキスをしてきた。

 そして、それに応えるように俺もキスを贈ると、そっと耳元で囁くように言う。


「エクス……」


「うん? なに?」


 ――霧で隠されていても周囲には人がいるのにエッチな事をされて感じちゃうお前が大好きだよ。


「なぁっ!? そ、そんなこと……」


 と、エクスが俺に反論を唱えようとするもその体は既に最高潮であり、頭のアホ毛はピンと直立していた。


「……なくもないけど、そんな風に言われたらもう……ラメエエエエエエエエエッ!」


 そのセリフを皮切りにエクスが絶頂した瞬間、眩く蒼い光が放たれ重圧な鞘に納められた聖剣がその胸元から現れた。

 俺はその柄部分を握りしめると一気に引っ張り出し、地面に突き立て刀身だけを引き抜いた。

 

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