第6話


彼が私を監視できたのは人ならざる力を保有していたこと。これに尽き説明できる。

そして貴方が一連の犯人ではないことは自身が証拠であり証拠にならない力と身分であることを明かしてくれた。

この世界の人口は大部分が人が占めそしてピラミッド型の従属関係性社会構造であることを明かした。

彼の階級は特殊で道化ピエロという役回りである。自身の容姿・力・特殊な生い立ち全てが積まれ道化である。

彼は悲劇のヒロインになり得る存在を笑いに来たが恋しそして掻っ攫われ最後には死ぬがこの貴族社会の劇ドラマに望まれた自身の人生ストーリーを脚本シナリオに予定が組み込まれている。

哀れなヒロインは誰なの。という問いに君の事だろうと彼は素っ気なく返す。

これは告白だろうか。頬が蒸気したが先ほどのアレを思い出し背筋を寒くさせ両肩を抱いた。

礼を述べる自身の不自然さに照れてるのと疑問を返されぎこちなく音で返事する。

自身の立場を分かり切ったつもりと慌てて照れ隠しで色々と言い訳を付け足す。

言わなくて良いことでも言い始める。

それを言葉で遮られる。そこまで紳士で誠実でチョロかったら他の人にもしそうで怖いですねと冷ややかに返される。

やはり醜いかと内心傷ついた言葉を漏らす。

彼は自分を棚に上げることは得意ですねと嫌味な言葉の刃を耳に突きつけるが私自身彼の事を思っての事だ。と

他人のデレ程キツイものはない。互いに認識し肩を寄せ合わさず互いに寝ながら言葉だけ交わし始める。

今は夜かな。音が一回。今は昼ですね。音が二回。

分かるの。音が一回。このやりとりが彼と私の最後の逢瀬である。

そういう脚本シナリオなんだ。と彼は淡々とこなしたい。という意思を発言する。どうせ激動の中心下には意味がない話の休めで摘まみでしかないから。

義務的で役割はちゃんとこなそうする。恋愛を義務でこなそうという姿勢は今まで知らなかったが考えてみれば大人は冷めたらそうなる者だ。結婚の概念もそれに近い。

楽しんだって悲しくなるだけ、虚しくなるのならフリだけで良い。君に与えられるものは何もない。

私は牢での逢瀬を胸に心に残るよう閉ざしが入っている。何れ君は牢から出られる。行かない。行くよ。そのやり取りが続いたが彼の予想通り私は復帰を望む声が上がっていることを刑務官と共に来た貴族もとい私の上司が訪問して来た。

彼の気配が感じられない。彼を呼ぼうとしたがやり取りを思い出しもう二度と会えないのだろうか私は少しだけ悲しみその表情を上司が見ていた。

毒が入っているもの予め伝えられる。それを食べるか食べないかは自由であることも伝えられる。

幾つかの疑問を尋ねて良いかと言うが食べるのならと言われここで食べなければ駄目だと緊張で匙を握るその握るまで身体が身震いを起こしていたがちゃんと匙を取り口へと食を運ぶ。

咀嚼し飲み込むか迷った。吐いたら不敬罪。小さく切り取られて口の奥、歯の隙間に隠すことは容易だった。

毒の説明が入る。その毒は幻覚症状が強く直前の事が思い出せず幻覚を見る。

幻覚について尋ねようとした時ワイングラスに入った水を煽るよう勧められる。

そしてそれはちゃんと飲み下した。

この水は苦い味がして顔を顰めたこれは何ですかと尋ねると胎堕薬だと聞き顔を上司に向け聞き返した。

胎堕薬だと二度はっきり告げられる。抗議の声が自身に怒りで沸いた。

あの牢に本来存在しない筈の者がいた気配がしたからだと情報で入り除菌クリーンの為だと君は一応貴族なのだからと。

強い怒りが身に込み上げ毒の入った食べ物の皿を両腕でテーブルから除ける。

私は怒りで口を注ぐことを忘れ用意された寝床で眠りにつくフリの筈だったが本当に眠りについていた。

寝床が変わっていた。

天蓋に垂らされた透明で透ける布と自身と同一の布な布だと気づくのに時間が掛かり驚いて仰け反る。

驚きの声。そして自身だけが驚きの声を上げているのではない。

男の人。知らない人。何か口を開き懸命に訴えかけている。

誰だよ貴方は。微かに何処かで嗅いだ覚えのある匂いに全身が包まれ、自身の身を委ねさせようとする相手に私はもがいた。

抗った。思い出していた。彼以外の誰かに君は掻っ攫われる。嫌だと思った。否定したかった。涙ぐむ私を男は懸命に抱き込もうとする。

何も聞こえない。ただ視界に映る男の顔を涙で滲んでいる視界に焼き付け憎悪を抱かせるには十分だった。

彼の表情から苦悶が見えているのに感情を見ようとせず認識すらしなかった。

それはリアルな淫らな夢だと知るや否や身体を確認し衣服の乱れがないが呼吸音が荒いことに思春期であることを明確にさせ男性嫌悪を抱くのに十分である。

覚えてない夢の事は忘れ、強烈な夢は気分が悪いことに幾度も男の人が近づくたびにフラッシュバックした。

もう意識を暗闇の牢に向けようかと思ったが思えば彼にも連鎖的に繋がる想起であり両方に嫌悪を抱いた。

侍女が入ってくる。自身の朝食を牢への帰還(期間)がなかったかのように。

身体拭きたいですかという質問に肯定する。彼女の側は安心と安堵で私にとってのセーフティだった。



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