第5話



牢で幾つかの話とやり取りが行われ彼は何もない暗闇がある空間で良き話し相手暇つぶし相手お互いを良く知る為の機会を罰する形で与えられたことにお互いが災い転じて福となすと思考し笑い合っていた。笑い合えない状況下で笑い合い時に暗闇でも行える遊びに興じる。

音だ。音を使った使用したゲームでジェスチャーする。

何を思ったか思考したかはい・いいえを判断する遊びである。

私が貴方は男ですかと尋ねると音は一回。

貴方は女ですねと言う確信的な言い方に対し音は二回。

この場合音で分かることは男であり女ではない。

話し声と気配で分かるものだが全貌は掴めない。

彼の容姿に胸を高鳴らせているのが相手にも伝わったらしくあまり期待しないで欲しい自身は無いとか細げに聞こえ私は美醜だけが世の中ではありませんと語気を強める。

自身はない気配が漂い慰めるべきか叱咤すべきかで迷いこの話を切り上げた。

互いの呼吸音が響き渡る。

飯が置かれる。仕切りで離れた場所にいつの間に置かれたかは分からない気配で分かりそうなものなのに気づかないことに自身がどれだけこの場で落ち着いて気を緩めていたか理解出来た。

食事に気を張りつめる。自身がほんの少しの期間だったとは言え毒見役だった職業病に近い。

横から何かを差し出される。私は顔を上げ眉根を寄せるどうやら気配で察し毒見を頼むということらしい。

無言で皿を出す相手は毒見の言葉一つ出さない。自身はそれを受け取り匙で救い口へ運んだ。

毒が含まれてるかどうかはそれはすぐに飲み込まず舌で判断する。

咀嚼音の恥ずかしさで何も無いと分かった気配を相手が察し顎が引きずられる何か強制的で硬い何かに強引に暗闇へと暗闇でも光り続ける二つの光。

眼光を間近に感じ目を引ん剝いた。そのことをそれの行動の意味が理解出来ず悪ふざけには度が過ぎていると内心激高した。

高鳴り。眩暈。口内の今しがた咀嚼したものを奪い取ろうするぬめりのある湿った感触。

自身はもう白目を向いている。強烈な牢の匂いが鼻を突く。駄目だ意識が失う。息すらまともに出来ない。

数分間のように感じられた時間。だがもう食べたものは歯の隙間から奥歯の方まで入念に丹念に探しこむ彼に怒りが抜かれていく。

奇妙な脱力感を神経が全て口へと集中し始める時には耳に響く口同士から発せらる音に精神がシャベルで削られていく感覚を恥じ入っていた。

ああ、もう。はしたない。色気以前に白目向いて牢の上に視線を向けようが彼の視線と当然ぶつかり合う。

意識を逃げることすら許さない。精神の逃避が許されない。

ただ感じるのは強烈な顕示欲。

自身を見ろ。

被り振る頭にもう口内には何も入っていないと意志を伝える為だが頭を抑えつけられる。身を引こうとすればするほど食い込んでいく。

彼の歯の感触を不覚に味わいしまいに内心舌打ちする。

もうないんだ。勘弁してくれ。

彼の舌の型すら覚えてしまった。

蜥蜴を想起させる。ダッチタン。二又に先が割れている。

恐怖であるのはそこから先。息が出来なくなる。喉珍の方まで舌で触れどれだけの長さもう多分内臓にまで届くのではともう白目と恍惚。口の端から大量に零れる唾液で先ほどは恥じていたのにもう思考の片隅に追いやっている。

喉珍に数回触れられ離れようとしていた頭に力はもうない。彼の片手に支えられもう片手で身体を拘束されいる。

拘束内で自由な片手を使用し彼の肩を最初は強くずっと叩いていた手が弱弱しいものに変わっていくのを彼が知らないわけない。

彼の肩の裾を掴みグッと目を閉じた。自身は十代半ばでこのようなことは危険である。この先の恐怖を想定し身を震わせていたのが痙攣へとそして力が無くなるまで目の力が抜けるまでやっと解放された時にはすでに私は牢の床で突っ伏し牢の中での虚空に光る眼を見つめ続けていた。

やっと呼吸ができる。やっと微弱な呼吸ができる。よだれを口先を見られないよう身体を反転させた。

謝罪の気配を感じ取るがそれをしたら二度としないと弱弱しい力で床に拳を叩きつける意志を見せる。床に響く音は思ったより大きかった。

苛つくことが出来たのは単に初心で初めてなのを利用されたことが悔しかったから。

手慣れた様子かどうかは過去に経験していなければ分からないことで、私は彼が手慣れた人だと勝手に断定し初心の者の心を強く踏みにじった者だと決めつけた。

心とプライドはすでにズタズタである。

初めてだったのか。疑問と驚きそして謝罪の言葉を伝えようとする気配。

だが私の拳が断続的に叩きつける音で遮る姿勢に何かを思い大人しく私の機嫌が良くなるまで待ちの姿勢に彼は入った。

食べ物はまだ残っているが恐怖で手を付けられない。

そして頬が蒸気していることに気づいた。

相手も堪えているようだが息を微かに漏らしている。

これはキツイなと思い神経を使い彼とは離れた反対隅の方へと腰を下ろし寝に入っていた。

一つ君に言いたいことがあるけれどそれを伝えることは君が許してくれそうになさそうだ。

言い訳と返す私の声は冷たいことで背に視線を感じる。僕も初めてだ君が王としているのだと、だからちょっとした嫌がらせだと。それだけと私は投げやりに冷たく返す。・・・・・やきもち焼いたんだよ。それだけと冷たく返す。自身も許されると思ったんだよ。黒塗りの暗闇の中交わる言葉のテンションの落差。

それだけと返す私。言い訳を積み重ねその分素直になっていく彼。ミステリアスな雰囲気はもうない吹き飛んでいる。

言い訳をしてまた素直に彼は自爆していく。私はそれだけとしか言っていない。

勝手にボロを出していく彼に背を向け監視していたことも白状していく。

曰く彼の認識では聖女は神聖故に隠れて手を出している者がいるに違いないと。

聖女の認識を誤っていたことを謝罪していく。私は隅にさらに縮こまれる。化け物のような腫物みたいな扱い止めろよ子供っぽい抗議の声に最初は猫を被っていたことが分かる。

冷静になる時間を与えようと暫し沈黙した。彼はそれに耐え続け私の機嫌が直るのを辛抱強く待つ。

私は言葉を吐いた。まるで人のフリした何かだなと愚痴に近い言葉に彼の悲痛な呻き声。

私は次に猫を被っていたのは別に人だけではないことを、羞恥で思い知らせた彼に身体を向きなおす。




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