第4話



私は彼女に物について尋ねることにした。

狩りなどに使用される物の用ですが用途と名が分からなかったとだから換金せず近くにいた人と交換したのだと。

それは可笑しい。

なら貴族はどうやってそれを手元に戻し王の前であのようなことが出来たのか。

城下町に行くのは抵抗があり私は城から出ずとも指示一つで行える。

城の中で仕事を行う貴族は神経質かつ情報が集中する場所である。

それを纏め上げる為城の外から一歩も出ない。

城から一歩も出ず仕事を終える。

檻ケージの中から安全セーフティで除菌クリーンされた世界で生まれて生きている。

その城の中で殺人が起きたことは重大では。

そう考え改めて尋問した彼らの手慣れた態度に違和感を覚える。

初めてではない? 疑問が過る。

侍女から手渡されたそれを見て内心叫ぶ口を両手で抑える。

疑問に思いそれについて尋ねた。

護身用です何かあったら迷わず退いて下さい。

脅しには有効だなと思いそれを身に着けた。

侍女の有難い忠告を聞き頭の片隅の中にぼんやりと残す。

毒見が終わり上への報告を行うが相談を持ち掛けられる。

それは恋の相談であったが自身は溜息を吐いたハニトラだと思いますと余計な口が後々悪い方へ進む。

嫌がらせの手紙と周囲で起こる事故。

花瓶が窓から落とされたりなどで気には留めないにしろ彼女の後ろ背は何度も目撃した。

彼女の嫌がらせを止めさせるか悩み結果注意を流した。

それからはピタリと止んで効果があったと思った数日後、彼女は川で浮いていた死体となって。

氾濫する川の中から彼女のものらしきドレスの切れ端と行方が不明になっていたことそれからその数週間誰と会っていたか調べられ私へと自ずとまた行き当たったと尋問の担当者の厳つい目つきと厳しい台詞に裾を掴み動揺を耐えた。

一連の事件の関連性に「聖女」を結びつける者は時間の問題である。

その時聖女の背後で雷鳴が鳴り響いた。

窓からの強烈な光が部屋を一瞬で渡り尋問者たちは顔を覆う。

また薄い暗がりへと戻る。

奇妙な静けさ。

間違いないと尋問官が確信した判断。また他者へと自身の人生が決まった瞬間である。

違う違う。私ではない。

聖女は再び牢へと繋がれる。

牢は薄暗いから更に深い濃い闇の所へと前とは違う待遇の悪さに顰めもはや何も望まないことを心に誓った。

誰か声がする。だがその声を無視しようとするが輪郭のない暗がりで自身を呼び込む声の方へ身体を視線を顔を向け始める。

その声は聞いたことがあるのに思い出せずだが不思議と会ったことがあると認識できた。

隣国へ行きたいですかという問いを前にも聞いたことがある。

貴方の処遇には不満がありますとやつれた声音。

私は満足していることを伝える。幾度となく伝える声は私に縋ってるようには思えないからだ。

何故そこまで隣国へ行きたいか尋ねる。

外の世界が怖くはないのかとも尋ねる。

檻の中はどこも一緒だけれど檻の選択を自ら選ぶのはまた自由。

自身は彼の冷たい覚悟に触れ火傷を負いたくはないと背を向ける。

奇妙な沈黙が暗がりで流れ姿が互いに見えず良かったですねと言い合う。

身体が重心がその声の方へと引きやられる。叫び声を上げ抵抗を試み暴れる自身を抑えつけるそれは牢の中に何日いたのかと思えるほど一体と化した迫力と自身を包み込む牢へのぼんやりと顔を上げる。

強いとても強い力。軋む両腕の悲鳴を訴えようやく解放される。

大きな息をどちらが吐いたかは分からない。

彼に両肩を鷲掴みにされ暗がりで何も見えないのに顔と顔を擦り付け合う。

お互い顔を見ようとして暗がりで視力も悪くそれは硬い頭と頭をぶつけ合いようやく至近距離で視線が交わされる。

額と額を押し付け合いながら目線だけ強く合わされる。強制的合わされ自身も額を負けじと押し返す。

月が笑うようにその瞳も弧を描く。反射的に身を引こうとするも鷲掴みされた両肩に固定される。

問尋ねた。悪いふざけが過ぎますよと。

沈黙で返されるが辛抱強く耐える。

やがて手は離され自身を包み込んだこの牢の瞳はスッと消え去る。

貴方を知って驚いたことが二つある。

その声音は芯があり良く牢へと響いた。

それは何いえ答えなくて良いと自身は相手の口を制止させ自身が応えを尋ねる。

幾つかの問いに彼は驚いたもののちゃんと応えてくれている。


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