第2話

 とある飛行船に忍び込む。外は嵐で、この飛行船に設けられている部屋以外は全て屋外の為、雨が四方八方から当たって鬱陶しい。

 よくまあこんな風の入る構造で空を飛んでるもんだと、物陰に隠れながら思った。

 あたりは暗く、雨で視界も悪い。

唯一の頼りは雷が光った一瞬の時、その一瞬で辺りを把握しなければならない。

確認できたのは、大きい鉄製の支柱がちらほらとある事、船の乗組員が複数人警護している事のみだ。

 乗組員は皆、防護服、防護マスクを付けている。勿論自分は防護服もマスクも付けていないから、見つかれば即座に他所者だと気づかれる。言い逃れは出来ない。

 とすれば、誰かひとり捕まえて防護服を奪った方が動きやすいだろうな。

 と、頭の中でこの先の流れを組み立てていた時、あたりがざわつき始め、警報が鳴った。

 スピーカーから流れる警報の内容は音が割れすぎて全く聞き取れなかったが、「侵入者」というニュアンスの言葉は聞き取れた。その言葉が指す人物は自分しかいないだろう。

 先程までのんびりと歩いていた乗組員達は、バタバタとあちらこちらに走り回っている。どうやらこちらものんびりはしていられないらしい。

 雲の切れ間が見える。あと少しで嵐を抜ける。

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良い夢を、 @fukaumi

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