良い夢を、

@fukaumi

第1話

 今、外は恐らく嵐の夜だろう。雨粒が強く当たる音、風でガタガタと鳴る古い鉄製の壁、部屋に電気は無く、たったひとつある長方形の窓からは闇だけが映っていた。

わたしはいつからここに居るのか、どれほどの間ここで過ごしていたかは分からない。唯一知っている事と言えば、わたしのいるこの部屋は飛行船の一室だという事。わたしは閉じ込められ両手を縛られているという事。今、外は嵐だという事のみだ。

 いつからこんな日々が続いているのかは分からないが、退屈を味わうほどここに居るというのは分かる。

 人を監禁するには丁度いい狭さの部屋で、勿論娯楽は無いし、あったところで両手を縛られているのでは楽しみようもない。出入りする扉はひとつ。段差一段登って出れるようになっている。

 うら悲しい気持ちも、寂しさも、帰りたいところも、ましてや色んな手を使って脱出しようとする試みも、わたしにはもう無かった。

 ただ、退屈だった。

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