同じ竈のパン
私が馬の背に乗って、気づいた時には目の前に立派なお屋敷があったわ。
彼は私の乗っていた馬を繋ぎに行くから、先にお屋敷に入るよう言って来たの。
お屋敷の中には、たくさんの綺麗な人たちがいたわ。
たぶん、みんな
本当に立派なお屋敷だったわ。
ええ、月並みの言葉じゃ言い表せないほどよ。
お屋敷を入ってすぐの床の上に、棺が置かれていたわ。
棺の中には、これまたハンサムな金髪の男の人が寝かされていたわ。
本当に亡くなってすぐだったのでしょうね。
まるで生きているみたいでびっくりしたわよ。
もちろん、その人のために祈ったわ。
それから、彼が戻ってくるまで、人をよけて壁際に立っていたのだけれど、その時に一人の女性が、私にこうささやいたの。
「帰りたいなら、何を口にしてもダメよ。絶対に食べないで。あの人たちのものになってしまうわ」
ってね。
そうよ、
彼女はきっと、彼と同じようにかどわかされた人だったのね。
そして、彼とは少し違って、私を助けたいと思ってくれたのね。
その後、彼がやってきて、それから、みんなお腹も空いたでしょうって、夕食になったのだけど。
ええ、もちろん、彼女の助言に従って乗り切ったわ。
むこうも、どうにかこうにか食べさせようとしてきたけど、食欲がない一点張りで勝ったわ。
「彼らがあなたを本当に必要とするのは、葬式の間だけよ。こうした葬式みたいなちゃんとしたことをするには、なんにしても、ちゃんと生きた人間が一人は必要だからでしかないの」
とも彼女は言っていたわ。
つまりは、私を戻れなくするのは、結局のところオマケってことよ。
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