#23 歌舞伎町編

歌舞伎町へ来てから初の同伴。

〇寿司の前で待ち合わせ。


「寿…山さ〜ん」

「優ちゃ〜ん」

感動の再会。もとい、感動の寿司。


だがしかし、山さんの唯一の難点は同伴時間が早い。まだ17時。

お店のOPENまで3時間もある。

さらに同伴の場合は21時までに入ればいいというルールがあり、当然山さんも知っているから最悪の場合4時間だ。

これはちょっと面倒だった。そんなに話ある?

キャバ嬢とは費用対効果を考える生き物なのだ。


山さんについては前回指名の時にある程度の情報は収集していた。

「山さん、来週のお寿司は何時頃に待ち合わせしましょう?」

「そうだね、16時はどうだい?」


えっ、早すぎるでしょ。さすがに無理。


「16時だと私の支度が間に合わないです〜すみません」

「そうかー。俺は優ちゃんと早く会いたいからせめて17時には来て欲しいなぁ」

「分かりました。ところで山さんお仕事は大丈夫なんですか?」

「俺は大丈夫だよ」

「山さんって何をされてる方なんですか?知りたいなぁ」

「俺は詳しくは言えないけど講演会の講師みたいな仕事だね。だから、予定がなければいつでも優ちゃんに会えるんだ」

「講師なんて凄いじゃないですか〜カッコイイ!」


いつでも会えるか…。

それはそれで困るんだよなぁ。


「そうだ、連絡していい時間帯を教えて頂けますか?お電話やメールをしたい時に何時頃ならいいかしら?」

「朝から夕方くらいは仕事の事が多いけどそれ以外ならいつでも連絡していい。優ちゃんからなら大歓迎だ」

「それは嬉しいです」


なるほど。独身なんだ。

50代で独身、離婚でもしてるのかな。

仕事はある程度地位があるようだし、お金の心配は無さそうだけれど…

ある程度は長い目で見て、出せるだけ出させてみるか。

つまり暇を持て余したオジサンなのだ。寂しさを埋める為にキャバクラへ来ているタイプだと分析した。



さて冒頭に戻り。

〇寿司に入った。

とにかく今は寿司を楽しみたい。

が、私…回らない寿司とか初めてじゃない?

緊張する。

ここにきて女子高生である事を実感する。

水槽に泳ぐ魚達を見ながら何となく居心地の悪さを感じていた。


何か山さんは板前さんとめっちゃ喋ってる。

とりあえず出された物を食べよう。もぐもぐ。

ダメだ。緊張で味が分からん…。

念願の寿司がー!


すると板前さんが話を振ってくれた。

「お姉さんはうち初めて?」

「は、はい!山さんに連れてきて頂いたんです。とても美味しいと聞いて…美味しいです!」

「彼女は優ちゃんっていうんだ。これから彼女と来るから覚えてくれよ!彼は俺の馴染みの板前さん」

「優です!よろしくお願いします」

「山さんはいい人だからね〜良かったね、お姉さん。山さんと何かあったら僕に相談していいよ」

「こらこら、俺が優ちゃんに何かする訳ないだろーねぇー」

「ふふっ困ったら相談しに来ますね。私こんな本格的なお寿司初めてだから緊張してしまって…」

「じゃあ暖かい物でも飲んだらいい。優ちゃんにお吸物だしてあげて」


はまぐりのお吸物、すごく美味しい!

こんな美味しいお吸物があるんだ…。知らなかった。

おかわりしよう。

お品書きをチラッと見たら…えっ、これ二千円もすんの?

やべー。高級寿司やべー。震える。

「あの…山さん、私お吸物また頂きたいです!山さんおすすめだからとても美味しくて」

「あはは!おかわりだって~頼むよ〜」


この〇寿司は歌舞伎町のど真ん中にあり、同伴御用達のお店のようで、周囲を見ると同伴と思われる人が3組くらい。

幸い板前さんが同伴慣れしている事もあって、会話も弾んでそのままお店へと向かった。




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