#17 歌舞伎町編

「桃ちゃん、久しぶり!ここに居たんだね」

「そう、凛を呼んだのは私だよ」

「私は凛ちゃんから紹介してもらって」

「うん、聞いてるよ!池袋よりこっちのが楽しいよ」

「そうなんだぁ」

桃ちゃんは池袋には半月も居なかったのですっかり忘れていた。


この店には紹介システムがある。

紹介した女の子が入店するといくらか貰えるのだ。

そんな訳で桃ちゃんと時期をずらして凛ちゃんが入店し、紹介者として私を選んだようだ。


2人は同い歳で普段も仲良しらしい。

「私達は2人で客取ってるからさ、優ちゃんも上手くやりなね」

「2人でお客を取るの?凄いね、ダブル指名って事?」

「まぁ色々だよね〜」


コンビネーションプレイ!?

そんな物が夜の世界で通用するのか私は疑問だった。

どちらかが裏切れば成立しないし、相当な太客(沢山お金を使う客)じゃないと無理だ。


しかし実際この2人のコンビは凄かった。

1人の客にダブル指名でシャンパンにフルーツ盛りVIPルームでやり放題していた。

その連携プレーをヘルプでまざまざと見たので正直賢いというか…やり口がエグいというか…。

これは闇深い感じがしたので私は距離を置く事にした。


初日。

思ったのはやはり客層の違い。

皆ジェントルである。変な輩があまりいない。

それは店の価格の違いが大きい。

ワンタイム40分 池袋だと四千円、新宿八千円と倍である事。

あとお店で規則があり、泥酔した客や黒い組織の人などは基本的に立ち入り禁止。


私は「今日初めてなんです」をまた起動させてやっていた。

とはいえ、全く初めてではないのでちゃんと営業もした。

カラ名刺(お店の情報のみ書いてある名刺)に手書きで名前を書いて連絡先とメッセージを書き込む。


私はすぐに名刺を注文した。

カラ名刺だと素人感が凄い。ちゃんとした名刺にしたかった。

ちなみにこの名刺は自費で作る。

流行りは写真名刺だったが、専門のスタジオで撮影し、別人かと思うくらいの加工を施し名刺にする。 こちらは値段がバカ高いのでナンバー(NO.1〜5くらい)のキャストか、本業で余程やる気のある子しか作っていなかった。


私は薄紫色の黒い蝶のデザインが気に入ってそれにする事にした。

値段も100枚2000円ちょいというコストパフォーマンスもまた魅力的だ。


暫くするとお店は満席になっていて、私はヘルプに駆り出された。

すると、暗転してショータイムが始まった!

そうか、ナンバーの人達はショーに出演するからその間はヘルプに入らないといけないのか。

そんなこんな思いつつステージを見た。

す、凄い!本格的なダンス!

ここはエイベックスかな?と思うクオリティ。

めちゃくちゃ上手い!

すっかり魅了されてしまった。

横を見るとお客も見てるわ、いいか。

おおーラテン調からサンバみたいなのに〜からのバラード!美しい!

本格的なショーを稼ぎながら見られるとか最高〜!


すごいなぁ、こんな世界があるなんて知らなかった。

歌舞伎町めちゃくちゃ楽しい!




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